2話 召喚したものの 1 ~sideシード
召喚は成功するはずだった。
奴が巫女を召喚し、俺が依座を召喚する。
ただ、それだけの事。
150年ぶりの召喚で、前回の事を直接知る者はおらず、口伝と書物の知識での術式だが そんなこと、関係ない。
確かに召喚術は高度な術だし失敗する確率も高い。
だからこそ、出来うる準備は、万端整えた。
はずだった……
「ソレ」が魔方陣の中に現れるまでは!
先に術を発動させたのは、奴。
大神殿の地下にある召喚の間に 2つ並べて敷かれた魔方陣。
その片側が光を帯びる。
光が強くなり、光がはじける。
眩んだ目が元に戻り、魔方陣を確認すると
14・5歳の少女が、目を見開きながら
立っていた。
周りからは
「おおお……」とか
「素晴らしい!」とか
「書物の通りだ!」とか
感嘆の声が上がる。
忌々しいが
成功したようだ。
まっすぐな黒髪は腰まで豊かに流れ
艶やかに波打っている。
怯えたように見開かれた瞳は
漆黒の闇をたたえ
神秘の神の世界へ誘うよう
ふっくらとした 紅い唇は
濡れたように輝き
熟れた果実を連想させた
これが「巫女」か……
少女の姿に神官のジジイ共はご満悦だな。
奴は自分の仕事に満足気で、俺の方を見て親指立ててやがる。
エールでも送ってるつもりか……親友気取りのおうじ様。
さて。
俺も完璧に呼び出してみせる。
俺は出来る。
詠唱に入って
魔方陣が光る
光が収まって現れたのは……
?
赤と
白と
黒と……
ぼろぎれ?
いや、
違う。
「ソレ」は、かすかに動いている。
「なんですかな?これは?シーウェルド殿」
耳障りな声がした。
奴の取り巻きの大貴族の息子、(俺が心の中で〈取り巻きA〉と呼んでる)ロイスが、癇に障るほど丁寧に尋ねる。
そして魔方陣のソレを引きずり上げた。
!
子供だ!
召喚したのは女性なのだから、人間だと驚く方が間違いである。
しかし、その少女は
鼻や口からも血を流し
ぐったりと
まるで狩られた兎のように
男の手でぶら下げられていた。
「失敗ですな」
嘲りを口角に貼り付けて
男が言い、少女を投げ捨てた。
確かに、神の器としての依巫のイメージからは程遠い。
それにこの状態では、使い物にならないと言いたいのだろう。
しかし、それは 神の器として召喚されし乙女にする行為なのか?
涌いた怒りをかみ殺す。
その後も、最悪だった。
ジジイ共は薄ら笑いを浮かべながら
「まだ若かったから無理だった」とか
「高度な術だから、仕方がないさ」とか
「運が悪かったんだよ」とか
口々に慰めとも嘲笑ともとれる言葉を、俺に放った。
(貴様らも、同じ考えか……)
眼鏡に適った巫女を喚べた、奴を讃え
見目麗しい、巫女を讃え
大神殿にある 迎賓館へゾロゾロと上がって行った。