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おとぎ話の造形屋  作者: 蜂須賀漆


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(15)賢者の石⑳

筆記の対策はとにかく量をこなす一択だったが、実技の方はなかなか定まらなかった。

カレンはものづくり魔法しか行えないため、実技で示すのもそれだったが、試験官の前で何を作るのかは難問だった。

魔法使いは魔法を操れる能力の頂点に位置付けられていることから、その魔法は他の模範となるレベルに達している必要がある、とされている。

他の模範となるレベルの判断については、試験の都度、その時の試験官に委ねられているため、受験する者が準備できないという批判がずっと言われていたが、実際に魔法使いとなった者が実力不足という誹りはまず聞かれないことから、国内に留まっている魔法使いがどのくらいいるのか、という問題はあったが、結果的には実力者が選ばれていた。

先達に肩を並べるような優れた技術、ぱっと目を引く魔法を施して、インパクトのあるものを作ってみせなければならない。

だが、何を作るかという段階から進まないまま、カレンは日々悩み続けていた。

客の依頼に合わせてイメージを膨らますことは得意でも、最初の一歩となるアイディアは絞り出そうと思えば思うほど袋小路に入る。

しかも、魔法使いになる試験にふさわしいものという条件が圧し掛かり、自由な心でないと思い浮かばない性質のものであるところなのにもっと困難になっていた。

依頼内容をそのまま転用するわけにはいかないし、一番具体的に考えやすいのは日常生活に即したものだが、手近なもので果たして合格できるのかという懸念が拭えない。


そんな折、以前ガラスの靴の注文をくれた魔法使いから、また別の道具の依頼が届いた。

既に受けている仕事を考慮すると、件数として引き受けることは、勉強の時間を大幅に削らない限り難しかった。

こうやって友好的な顧客を失っていくのかと心苦しかったが仕方なく、カレンは断りと謝罪を書いて送った。

すると、程なくして彼女から返信があった。

もし、どうしても頼みたいという再依頼だったらと怖々と封を切り、便箋を開く。


『親愛なるミス・アスター


お手紙拝見しました。

お引き受けいただけないのは残念ですが、依頼が立て込んでいるのは貴方の腕が正当に評価されている証であり、非常に喜ばしく思います。

お国の職人事情は次第に厳しくなっていると聞いており、胸を痛めておりましたが、それをものともせずご活躍されている貴方は、そちらの地域での呼称と伺った"造形屋"の名にふさわしい方だと思われます。

とはいえ、今後はさらに自由が失われていくのではないかと懸念しています。

貴方の才能が十分に発揮できずに委縮しまうことはお国だけではなく、魔法界全体の損失であると思います。

とはいえ、お国では国外に出ることも容易ではないと、お国の魔法使いから伺いました。


貴方は今まで魔法使いを志したことはおありにならないでしょうか。

もし、杖を所持する資格を得ることができるなら、国外にて仕事を続けていく道が拓けるかと存じます。

試験については、貴方なら突破できる力が十分に備わっていると確信しています、貴方が作られたものを見ればそれが分かります。

実技の課題があると伺いましたが、もしお困りでしたら、先日お送りした品を手がけるのは如何でしょうか。

こちらの国では力のある魔女の持ち物とされ、非常に強力な魔法を有する品だという逸話が付いているものです。

もちろん、これは依頼ではありません。

お作りになったものは、当然合格に寄与した誇るべき品として貴方がお持ちになり、また使われればよろしいかと存じます。

私の依頼は、機会があればまた改めて致したいと思いますゆえ。


お国が、魔法使いへの門戸を閉ざす前に、もしその気がおありでしたらすぐにでも思い立たれますよう。

国外へ流出しがちな魔法使いを憂慮し、その特権を制限する方向に、今後傾いていくだろうというのが、お国出身の魔法使い達の見解であるようです。』


カレンは、彼女からの1通目を取り出して開いた。

依頼内容をもう一度読んでみると、実際の魔法使いが後押しするのも理解できる品だと思われた。

ただし非常に難易度が高く、作り上げる自信が持てない品でもあった。


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