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おとぎ話の造形屋  作者: 蜂須賀漆


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(15)賢者の石④

首都近郊を中心に、職人の連続誘拐事件が起こったことは、犯人グループが逮捕されてから報じられた。

家からいなくなる、出かけて帰って来ないという者が相次いだが、身代金の要求が一切なく、ゆえに手がかりも得られずに、性格に癖が強い者などは気まぐれに出奔しただけなのではないかと思い込まれて事件性の認識が遅れたようだった。

連れ去られたうちの1人が自力で脱出し、道行く人に助けを求めてようやく糸口が見つかり、被害者は全員命に別状なく救出されたが、非常に衝撃的な事件として職人達を動揺させた。


連れ去られた職人は、国内で名が知られている非合法団体の下部組織で、賢者の石の精製を研究させられていたという。

職人を脅してものを作らせるという事件は、これまでも何度か起こったことはあったが、複数の職人に対しての組織犯罪として行われたのは初めてだった。

しかも、誘拐の目的が賢者の石だったということは由々しい事態だった。

職人の間では製作不可能だと認識されているものを、犯罪組織がそれでも強制して作らせようとした。

組織にも魔法利用者はいるだろうに、賢者の石を作り錬金術を行うことがどれだけ困難かということは感覚的に理解できるはずで、敢えてできそうな職人を不法に掻き集めてまで挑戦しようとする向こう見ずに、職人達やその家族は怖気を振るった。

第2、第3の組織が現れるのではという懸念が高まった。

誘拐でなくとも、騙したり言い包めて作らせようとする知能犯が出て来る、また逆に職人が欺く側に立つという事件もちらほらと起こり始め、誰もがこの先どうなっていくのかという不安を抱えた。



事態を憂慮して開かれた、スタフィー州の職人組合は緊急集会は紛糾した。

次第は、先日の誘拐事件についてとその注意喚起、今後の対応について、会場のキャパシティ上、全員は収容できないので町で代表して数名でお越し願いたいと通知された。

バーミアの職人達を取り仕切るような職人の長などは特に設置されていなかったが、組合の集会にはいつも職人街の最年長と、誰にでも歯に衣着せぬ物言いができるベテラン、それに組合の話や集会で出された質疑や意見などをきちんと聞き取ってくるメモ係として、中堅のうち誰か着いていくのが定石になっていた。

定例集会の開催は年1回であるため、メモ係は慣れているという理由で数年間同じ者が務めることになっており、去年からカレンが引き継いでいた。

3人で州都まで往復するのだが、待ち合わせ場所と時間、馬車の予約、州都での会場へのナビゲートなどは全てメモ係の仕事であり、それなりに気遣いと手間はかかるのだが、今回はそれらは大した手間ではないと感じるほどに、集会そのものが非常に厳しいものになった。


会場となった、州都の職員組合の会館は満席で、若手職員が忙しなく追加する椅子もどんどんと埋まっていった。

定時に始まった集会において、前にずらりと座った組合の上層部の1人が短縮版の挨拶をして、説明が始まった。

先般の誘拐事件は皆さん既にご存知かと思われますが、と始まった組合の説明に含まれる事件の詳細は、報道の範囲を出なかった。

模倣犯が出ないとも限らないため、外出時はどんなに近くでも行く先を必ず家族に知らせること、人が少ない通りは歩かない、遅い時間に出歩かないなど、子供への注意かと言いたくなるような初歩的な防犯対策が丁寧に説明された。

依頼人からの呼び出しに懸念を感じる時は誰かに同行を頼むこと、という注意には、そういう事件がこれから起こらないとも限らないそうです、と付け加えがあった。


その時点で出席者達は若干うんざりしていたが、職員組合は続けて、対応の1点目として、現在国から賢者の石の精製について協力要請が来ていると言い、受け取った文書を読み上げ始める。

国では、自分の技術であれば成せると思われる人物を探しているゆえ、心当たりがあれば謙遜せず申し出てもらいたい、他薦でも歓迎すると通知し、2点目として、今回の事件は一歩間違えば貴重な人材を失う由々しき事態になっていたと述べた。

その上で、事件の再発防止には尽力するものの、残念ながら錬金術の完成について、国内で競争が起きている現実があることは受け止めなければならないともっともらしく前置きをして、今回の組織は、どういう魔法を使い何ができるかを細密に調べた上でターゲットを選んでいた、ついては皆様の警護を適切に行うため、皆様の魔法の内容をリスト化させていただきたい、ご理解とご協力を、と内容だった。


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