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おとぎ話の造形屋  作者: 蜂須賀漆


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(13)聞き耳頭巾④

帰宅し、珍しく熱い湯に浸かって身体を温めたつもりだったが、滋養睡眠その他の労りは足りなかったらしい。

次の日から2、3日、ぼうっとして頭が冴えず、どうも本調子ではないとは感じていたが、4日目の朝に起床した時点で身体が重いことに気が付いた。

息が熱く、額に触ってみるといつもより体温が高い。

少し頭の痛みもある。

風邪を引いてしまった、とカレンは自分の対応不足を後悔した。

今はちょうど製作が混み始めており、寝込んでいる場合ではなく、昨日も夜遅くまで机に向かって唸っていたところだった。

今日は鍋で造形をして、発送後次のイメージ作りを始める予定だったのだが、集中力が特に必要な鍋の作業は失敗を招く。

かといって、頭の回転が命の『概念の型』も、朦朧とした意識でアイディアを捻り出すのもできそうにない。

少なくとも今日は寝ているしかないか、とカレンは一旦起き上がった。

一刻も早く治すなら、水分と栄養だ、とふらふらする身体を叱咤しながら台所に移動して、パンとミルク、それから塊のハムを厚めに切り出し、いつもは半分ずつ食べるりんごを丸かじりした。

それから、やかんに水を入れ、大きなグラスとともに寝室に持ち込み、再びベッドに潜り込む。

カレンは、納期までに仕事を仕上げるのも、自分の看病をするのも、そして医者に行くのも自力だった。

医者まで往復して体力が削がれるなら寝ていた方がましだというのが、独り暮らしでカレンが導き出した最善策だった。

普段から、具合悪くなってはいられないとそれなり気を張っているからなのか、いつも病状が極度に悪化するまでは行かず、寝ていれば何とか治った。

ただ、暮らしと仕事場とが同じ場所であり、あまり出かけることがない分、免疫力が低いのか、一旦体調を崩すと大体は長引いた。

仕事が詰まっているから、今回は早く良くならないと困るなあ、とカレンは重い瞼を閉じた。



祈りが通じ今回はすぐに寛解、ということには当然ならず、翌日もベッドの中でうつらうつらと過ごさざるを得なかった。

翌々日は、熱と頭痛はましになっていたが、だるさは引いておらず、頭を降ると目に映る世界がぐらぐらと揺れた。

しかし、3日も寝込んでいるにはいかないカレンは身体を起こした。

引き受けている仕事が4件、そのうち詳細を待っているものが2件、また受けられるかまだ返事をしていないものも1件あった。

詳細待ちはカレンが寝込んでいる間に返事が届いており、順次取りかからなければならない。

風邪を引く元々の原因になった、組合からの依頼も、イメージのメモを作ったところで作業が止まっている。

顔を洗い、少しさっぱりしたのに勢いを借りて、カレンは服を取り換え、パンとミルク、りんごを胃袋に入れた。

皿は洗えるが、体力を使う洗濯はできそうになく、籠に入れた汚れ物はバスルームの端に遠ざけた。

せめて温かいものをと茶を入れ、作業部屋に運び入れていざと机に向かう。

ゼロからアイディアを絞る作業はできそうにないが、メモをもとに言葉を整えるのなら何とか、とカレンは本を取り出して開いた。

メモには、大方オウムの露店で聞いたことが書き付けてあった。


人間と動物の家族は同じ

動物は人間が一方的に守る存在

人間は動物から無償の愛情を受け取る

人間は動物の命の全ての責任を持つ

大切な相手だから何を言っているのか知りたい


これを『概念の型』まで引き上げるのは厄介だな、とカレンは借りた本の内容を苦労して思い出しながら書き始めてみる。


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