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おとぎ話の造形屋  作者: 蜂須賀漆


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(13)聞き耳頭巾②

借りた本で頭巾の挿絵を見てみると、頭巾とは袋状に縫った布を被るだけのあまりに簡素なもので、研究では帽子と呼ばれていたが、この国のものとはあまりにかけ離れていた。

これを帽子の定義に追加することはカレンには難しかった。

帽子だと認識できなければ、イメージ作りに支障が出る。

また、布製だと糸から拵える必要があり、かつ今回は縫製もしなければならない。

まだ試作段階でエマの手を煩わせる上に、それを仕立て屋に帽子風に縫ってもらうのは時期尚早で、かといって不器用に手縫いするのも抵抗があった。

今回の魔法はハードルが高いため、カレンは少し怠慢だが革製の既製品を見繕う計画を立てた。


問題は、動物の言葉が理解できる魔法だ。

相手が言っていることを理解するには、言語の知識と、聞いた言葉を知識と結びつける思考が必要になるが、それをどうやって実現するかは、理解したいという思いの深さを『概念の型』に書いて何とかするしかない。

しかし、カレンは動物は好きだが、その"好き"は一般的な好きであって、彼女自身は動物への特別な思い入れは持っていなかった。

小動物を飼ったことはないし、大動物には近寄ったこともない。

鳥も、徹夜明けにああ鳴き始めたな、と朦朧とした意識の中で親しむくらいで、たまに珍しい鳴き声が聞こえれば耳を澄ませることはある。

いずれにせよ、自らの手の届く位置にいる親しさを、動物に感じる機会がなかったカレンは、その言葉を聞きたいという欲求をいまいち理解できないでいた。

今回は、家畜の健康維持が収益に直結するという、農業経営上の不都合を解消したいということなので、そういうドライな目的ならまあ分からなくもなかったが、もしその動物が、人間にとって都合の悪いことを喋っていたら気まずくないのかとは、カレンが依頼を聞いて初めに思ったことだった。

例えば、売り出すために荷馬車に乗せた子牛が、お母さん僕どこに行くの、と鳴いていると分かってしまったら。

乳が出なくなりまもなく廃用にされる牛が、仲間に別れを告げているのを聞いてしまったら。

長い間その動物の近くにいる人達は、いたたまれなさも倍増するのではないかと心配をしてしまう。

職人がどうこう言う筋合いはないのだが、カレンの場合はそれがイメージ作りの成否に直接影響して、仕事の障害になる。

一度感じてしまったことを頭から消すのは難しい上に、動物への愛着が薄いとなると、カレンとしては困難な部類の依頼になる。


今回は使用者が特定の誰かではなく、ハープの時のように、使用者に魔力を流して使ってもらうことは難しいため、帽子そのものに翻訳の能力を持たせなければならない。

動物を身近に感じて愛着を持つところから始めないとダメそうだ、とカレンは一旦イメージ作りを保留した。

組合から話を受ける前に頼まれている仕事がいくつかあり、そちらが優先ということも理解してもらっており、猶予はまだ残されていた。

今回の依頼は牛なので、本当は牧場に牛を見に行くのが良いのだろうが、組合に頼んで畜産家を紹介してもらうのも躊躇われ、州内で畜産が盛んな地域への移動手段にも難がある。

首都の植物園に行くまではやりたくないので、まずは近所で飼われている犬猫鳥に会わせてもらうとか、そういうところからかな、と依頼文代わりに作ってもらったメモの折り目を伸ばし、額縁へと翳した。


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