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おとぎ話の造形屋  作者: 蜂須賀漆


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(5)真実を告げる鏡⑥

鍋から出した第一の鏡に、性能チェックのため試しに話しかけてみると、実に知的そうな女性が現れて、お呼びですか、と応答したため、自分が作ったものなのに驚いてもう少しで落とすところだった。

女性に、現在地などごく簡単な質問をし、回答が正確であることを確認してから、これから貴方を所有者へと送る旨を話すと、彼女は訝し気に


『貴方がご主人様ではないのですか』


と聞き返してきた。

カレンはただの作り手であること、これから所有者の求めに応じ、己の尺度に従って正しさを示して欲しいと伝え、これは想定以上に高性能になり過ぎたかなと頭を抱えながら、ずばっと言い過ぎる鏡にならないように、という祈りとともに、丁寧に箱の蓋を閉ざした。



鏡を送り出すため、厳重に包んだものを郵便の窓口へ持参すると、代わりに、他のは配達済みだがこれはたった今届いた、と第二の鏡についての返信を手渡された。

代案を提示し、カレンには珍しく勇気を出して、"これならばできるがどうだろうか"ではなく、"これ以外ならできない"とはっきり書いてやったのだが、あまりの嫌な予感に我慢できず路上で封を切った手紙には、代案通りでいいから作ってもらいたい、と記してあった。

引き千切るのは辛うじて真似だけで止め、見間違いではないかともう一読したが文言が変わるわけでもなく、カレンは再度、鏡の材料を注文するため、とぼとぼと素材屋へと向かった。

仲介人の署名には、今日は何も書き添えられていなかった。

文面上、先方は喜んでこちらの条件に従うといったニュアンスに書かれていたし、何もトラブルはなかったのかとほっとする一方で、断るべきだったのにと仲介人に見損なわれていたらどうしようか、と心配にもなった。

考えても仕方がない、事は成ってしまったのだ。

あとはいつものようにイメージを膨らませ、と言ってもほぼ終わっているが、『概念の型』を作って魔法をかけるだけだ。

やらなければならないことはいつもと変わらない、それが職人としてのカレンが生きる道であった。


素材屋の店主から、二度あることは、と散々に茶化されてぐったりしながら家に辿り着くと、ポストに1通の封書が挟まっていた。

カレンはその光景に既視感と、何故か強烈に嫌な予感を覚えて、封書を摘まみ、屋内へと持ち込んでから恐る恐る中を見た。


依頼主はまたしても初見の人物で、新しい依頼はさすがに、残念ながら鏡ではなかった。

なかったが。

便箋には優し気な筆跡で次のように書いてあった。


"一度履いたら脱げるまで踊り続ける上靴をお願いしたい"

"焼いて熱くした状態で履かせるので、鉄で作ってもらいたい"


「お断りだこんなの!!」


カレンは布事件以外で久しぶりに、正当に、堂々と、家の中で絶叫し、便箋と封筒を宙へと放り投げた。


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