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おとぎ話の造形屋  作者: 蜂須賀漆


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(5)真実を告げる鏡②

鏡は道具として誕生したころから魔術的な使われ方をしてきたこともあって、既存の鏡に魔法を付与するのは、布と違って不可能ではないが、少し難しい。

最初から鏡ごと作った方が成功率が高いため、カレンは材料を調達しようと家を出た。

本体の素材は白銅にするとして、額縁は何を使おうかと考えながら町中へと歩く。

金属、石、木。

レリーフ云々と言われたので、石が良いかな、と商人街まで行きそのうちの1店に、「こんにちは」と入る。

ドアの鐘に振り向いた、薄くなった髪に分厚い眼鏡の素材屋の店主は、カレンを認めて


「いらっしゃいアスターさん。今日はどんな注文が入ったんです」


と声をかけた。


「えーと、鏡なんです」

「鏡。あれ、鏡って去年以来?」

「はい。でも今回は違うやつです」

「去年は何でしたっけ、実際に着てないのに着てる姿を映せる鏡でしたっけ。ありゃあ良かったね、試着で商品が傷まなくて済んで、衣装屋はウハウハ。あの後の特需は凄かったですねえ。うちも儲かった儲かった」

「あれは、お客さんのアイディアが特別に良かったですから」

「またまた、アスターさんは謙遜ばっかり」


カレンが製作した品に感激した客が吹聴して回ったことで、スタフィー州中の衣装屋から来たのではないか、というくらいの問い合わせと注文が殺到し、しばらく他の仕事を請け負えない状態になった。

惜しむらくは、カレンが作れるのは大鍋から取り出せる大きさを上限としているため、姿見サイズには対応できないことだった。

反響は、鏡の噂を聞いた他の職人が、劣化は早いが同じ効果を発揮できる姿見の製作に成功したことで、そちらにシフトしていき、そこからはほとんど鏡の依頼は入らなくなったのだった。


「何だか、アスターさんのアイディアを盗ったみたいで、今でも気に食わないよ俺は」

「まあ、アイディアは私のじゃないし、魔法も私のとは違うものですから」


魔法でのものづくりでは往々にしてこういうことが起こる。

完全に同じ魔法を掛けて、完全に同じものを作れば正当な非難の対象になるが、職人は基本それぞれが独自の魔法を使って工夫を凝らすため、その結果同じ効果が付与されるということはあり得ることだった。

違いは、仕上がりが綺麗・汚いとか、持続時間が長い・短いとかそういうところに現れ、顧客はそれを含めてどの職人に頼むかを決める。

顧客の選択肢が増えるのと、職人は魔法を写し盗られたわけではないため文句を言う余地はなく、あまり問題にはされていないのだった。

カレンは、注文を受けてものづくりをするタイプの職人であり、作る物のアイディアを自分が出すことはまずないことから、特に気にしたことはなかった。

技術の方も、少なくともカレンのと寸分違わず同じ魔法を使う人を、彼女は見たことがない。


件の鏡は、『概念の型』があっさりとできて全く苦労せず、カレンとしてもあまり愛着が湧かなかった。

今回依頼を受けた鏡は、イメージ作りはそれなりに必要で工夫もしなければならないが、鏡の必要性を考えてしまい若干気が進まなかった。

そういう躊躇に足を引っ張られると失敗を招くので、考えないように考えないように、と頭の中で唱えながら、カレンは用件を切り出す。


「白銅と、あと大理石みたいな彫刻に使える石ありますか?両方とも破片の方がいいんですけど」

「白銅は在庫があるが、大理石は取り寄せが必要だね。柘榴はどうする?」

「あれ、取り扱い、ありましたっけ」


カレンがきょとんとすると、店主は得意げに言った。


「去年のあの時、鏡磨くのに使うって言ってたじゃない。大量は難しいけど、2、3個ならうちで調達してもいいですよ。材料がまとめて届いた方が楽でしょ、柘榴ナマモノだし」

「わ、助かります。それでお願いします」


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