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おとぎ話の造形屋  作者: 蜂須賀漆


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(4)玉手箱⑨

首都のカフェで、レオンとスタンリーが休憩をしていると、そこへ偶然タセル社のコンビが来合わせた。


「あーあ。今回はホンっとにやられたぜ」


勝手に同じテーブルに着いたクリフが、頭の後ろで腕を組みながら、半目で2人を見た。

ミックは通りすがりのウェイターにランチを注文しながら、「ホントですよ」と同意を示している。


「別にやってないだろ。俺らは、お前が投げたモンを拾っただけだ」

「だってまさかあの女がホントにやれるとは思わなかったんだよ。何か条件もめんどくせえしさあ」

「できる、って情報あったから行ったんだろ。諦めが早えんだよ」

「はー。今回の手柄で特別手当貰ったんだろ。奢ってくれよ」

「馬鹿言え、後から来てちゃっかり集ってんじゃねえ。しかもお前の頼んだやつスペシャルじゃねえか」

「デザートも食べたいんですけど」

「ミックお前何便乗してんだ、ぶっとばすぞ」


大事なものを仕舞うなら、この箱に入れたいという要望があれば承りたい。

ミス・アスターの提案からは言い方を変えて、涙目のピオネル社社長を中継し、気圧された元請け経由で竜族に伝えると、艶の深い漆黒に何か玉虫色の素材で貝殻と、六角形の箱とを模様として浮き立たせた、東洋の意匠を見慣れぬ者にも最高級品だと分かる箱が提供された。

何でも竜族は、実際の依頼はその姫からだったようだが、至極気に入っている箱に、大事な役目を担わせることができることに、非常に喜んだらしい。

その箱を、ミス・アスターが例の鍋に、蓋と実に分けて躊躇なくどぼんと沈めた時は肝を冷やしたが、魔法付与は無事に成功し、その完成度の高さが評価されて、当初提示されたよりも高額の報酬が支払われることとなり、元請けはご満悦とともにミス・アスターを職人リストに書き加え、ピオネル社も潤うこととなったのは、下請け連の当然に知るところとなった。

もちろん、レオンとスタンリーの財布もかなり温かくなった。


「結局、何に使う箱だったんだ。決して漏れ出しもしないし変性もしない、だっけか」

「悪いがそれは守秘義務。喋ったら元請けにどやされるじゃすまないからな」


大切な人の、寿命を入れるのです。


用途について竜族の姫が自ら記したという手紙に執念を感じて、読んだ誰もがぞっとしなかったが、手紙を転送されたミス・アスターは、承知しました、頂いた内容をもとに魔法を付与します、と短い返信を寄越しただけで、依頼を難なくやってのけた。

中に寿命を入れて蓋を閉め、時の流れから切り離す。

竜族の天性が考えさせることなのか、お姫様が特異なのかは分からないが、世の中には物騒な思考回路を持った奴がいるとレオンは呆れた。

ついでに、その物騒な希望を鮮やかに実現させてしまう職人がいることにも、心からの溜め息が漏れた。

そんなレオンをよそにスタンリーは、一時的な小金持ちになったことにほくほく顔で、「またこういうおいしい案件に当たりたいですね、レオンさん」と陽気に言った。

レオンの呆れは頂点に達し、


「でも俺はしばらくお前と行動しないけどな」


とスタンリーを氷点下に突き落としておいた。


「何でですか!俺何かしました!?」

「お前みたいな言葉遣いがなってない奴と組むのはお断りだ。寿命が縮む」

「えっだって俺が空気読まなかったから成約になったんでしょ!結果オーライ!」

「オーライじゃない。ちゃんとした礼儀作法を身に着けるまではどこにも連れて行かねえよ俺は」

「えー!そんな、ひでえ!」


スタンリーが絶叫して周囲の視線を浴び、クリフが「確かにお前の敬語はひでえよ」と茶々を入れ、ミックは早くもデザートに専念している。

魔法と言ってもいろいろあるが、しかし今回は良いものを見せてもらったもんだ、とクリフは食後の飲み物を空にしながら、スタンリーの脇腹に一撃をお見舞いしたのだった。


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