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ウィシッユコレクター 願いを証明する者  作者: アスタ. 天ユ
ファストシーズン:意識する(リアライズ)
7/7

ファイル5:燃える業火と共鳴(レゾナンス)する心

突如、ヴォイドの体内から漆黒の光が放たれた。


ヴォイドと煉獄縁之介、二人の意識はその光に呑み込まれ、現実から切り離される。


ヴォイドが目を開けると、視界に広がっていたのはモザイクのようなノイズではない。


彼の瞳が映写機となり、空間に具現化させたのは、『煉獄縁之介』という男の記憶の断片だった。


同時に、ヴォイドの皮膚が焼け爛れるような激痛が走る。


それは単なる異能の共鳴(レゾナンス)現象だけではなく。『煉獄縁之介』という存在そのものが内包する『業火』――煮えたぎる負の感情の逆流だった。


(熱い……そして、何かが焼ける匂い。この熱量は物理的な炎ではない。俺の肉体に損傷はないが、魂が削られるようだ……これが、縁之介の感情が今になお……燃焼し続ける... 現象……なのか?)


ヴォイドの目の前に映し出されたのは、縁之介にとって最も逃げ出したい場所であり、最も熱く、そして最も暗い記憶の一ページだった。


「ここは俺の故郷……俺がかつて生きた証を残そうとした、最初の家だ」


記憶の中の縁之介が呟く。その表情には、深い悲しみと嫌悪が張り付いていた。


「縁之介」


ヴォイドは声をかけたが、記憶の中の彼に返事はない。これはあくまで再生された過去の映像だ。


「俺は名門貴族の嫡男(ちゃくなん)として生まれた。だが……俺はこの家族が反吐が出るほど嫌いだった」


縁之介は歯を食いしばり、隠しきれない殺気を滲ませる。


「なぜ、そこまで……?」


「俺の家族は、表面だけの偽善者だ。常に自分たちを『絶対的正義』と称し、傲慢にも他人の命を裁く」


記憶の風景が変わる。煌びやかな屋敷の裏で行われていた、凄惨な粛清の光景。


「『神の代行者』として世界の悪を裁く? 弱者に恵みをもたらす? ……笑わせるな。そんなものは、上の連中が都合の悪い人間を消し、自分たちの殺人を正当化するための言い訳に過ぎない」


縁之介の声が震える。


「たとえ相手に罪がなくとも、一族の利益のためなら容赦なく殺す。それも、自分たちの手は汚さず、他人にやらせてな」


「痛い……」


ヴォイドの体は突如激痛が伝わる。


「これは……まるで……自分の身が……煉獄縁之介の過去を体験した感覚た。」


ヴォイドは言葉を失う。それは、縁之介が体験した『地獄』そのものだったからだ。


「俺を含め、名門・煉獄家に生まれた歴代の子供たちは皆、『被害者』であり、『加害者』候補だった」


場面が転換する。映し出されたのは、子供たちが殺し合う修練場。


「煉獄家に代々受け継がれたのは『愛』ではなく。終わりなき『選別』だ」


「大人が宣う『絶対的正義』……その執行者たる『神の剣』を選抜するため、俺たちは物心ついた頃から技術を叩き込まれ、見えない争いの渦へと突き落とされた」


「子供たちが生き残るために残された選択肢はただ一つ。『殺し合う』ことのみ」


「なんで……家族同士で争わなければならないんだ……」


幼き日の縁之介の手が激しく震え、刀を取り落としそうになる。


彼が躊躇(ためら)う最中、従兄弟の少年が剣を振り上げ、襲いかかってきた。


悪いね……縁之介。僕は生きたい……だから、死んでください!」


だが、従兄弟の剣を弾いた瞬間、縁之介の身体は生存本能に従い、従兄弟を逆袈裟(さかげさ)に斬り捨てていた。


鮮血が舞い、従兄弟の身体がゆっくりと地面へ崩れ落ちる。


「あ……あぁ……」


従兄弟の最期の顔。それは、安堵に満ちていた。


彼は本気で縁之介を殺すつもりなどなかった。ただ、縁之介の手を借りて、この地獄から解放されたかったのだ。


「ようやく……楽になれる……」


従兄弟は事切れた。


縁之介は、自らの手を見る。真っ赤な鮮血で塗り潰されたその手を。恐怖と後悔が、幼い心を蝕んでいく。


「選択を一歩でも誤れば、待っているのは『死』だ」


屋敷の大人たちの冷徹な声が響く。


「煉獄家の基準に達しない不適合者はいらない。その出来損ない(失敗作)を処分しろ」


煉獄家の当主が始末の命令を下した。選別に落ちた子供たちは、ゴミのように焼却炉へ投げ込まれた。


「どうしてだ! どうして彼らは死ななければならない!? なんであんた達は、平然と家族の死体を燃やせるんだ!」


「この世は弱肉強食(じゃくにくきょうしょく)だ、縁之介。歴史は勝者が作る。家族など、『絶対的正義』という偉業を成すための交換パーツに過ぎん」


当主である男は、縁之介の頭を床に叩きつけた。


「煉獄縁之介。妹まで淘汰されたくなれば、これからもお前は一族の偉業のため、『正義の剣』として命を捧げろ」


燃え上がる炎。失敗作とされた子供たちの悲鳴。そして、後に残る黒い灰。


その光景は縁之介の脳裏に焼き付き、決して消えない呪いとなった。


「誰もがそれを『正義の淘汰』と呼んだ」


「毎日、毎日……同じ殺し合いを繰り返し」


「僕はあとどれくらい、家族を殺さなければならないんだ……」


幾多の屍を越え、縁之介の心の火は消えかけていた。


「あの光景を思い出すたび、体の内側から火に蝕まれるような激痛が走る。……何を使っても、その火を消すことはできなかった」


ヴォイドは胸を押さえた。映像を見ているだけの自分の胸にも、焼きごてを当てられたような幻痛が走る。


(逃げたい……この家から……)


当時の縁之介の思考が流れ込んでくる。


「もしこの場所に居続けたら、俺も、そして妹もいつか淘汰される。……逃げなければ」


「妹……?」


記憶の景色が、一瞬だけ柔らかな春の日差しに変わる。


庭園の中で、風を乗り、桜の花弁が木から降り注ぐ。縁側で死んだような目をしている縁之介の元へ、一人の少女が歩み寄ってきた。


手には焼きたてのクッキーが乗った皿を持っている。


「縁兄! また手伝いをサボって! もう、最近何してるの?」


少女の名は焔月(ほつき)


煉獄家の闇の中で、唯一汚されることのなかった光。


「焔月……お前はこの家をどう思う? 好きなのか? もし機会があれば、外の世界を……見に行きたいか?」


縁之介の問いに、焔月は少し考えてから答えた。


「うーん、どうかな。私にとってね、家とか善悪とか関係ないの。私はただ、できる限り多くの人を助けたいだけ」


焔月は屈託(くったく)のない笑顔を見せる。


「助けた人が悲しみから立ち直って笑顔になる……その景色を思えば、心が温かくなるの。だから私は修行を続ける。これは私自身が決めたことだから!」


彼女はクッキーを一つ摘まみ、縁之介の口へと運んだ。


「おまけとして、もし縁兄にもやりたいことがあるなら、私も手伝うよ。……もう、そんな絶望したような顔しないで。悩みがあるなら言って? 私が全部聞くから」


サクッ、とクッキーの砕ける音が響く。


その甘さは、縁之介が久しぶりに感じた「人間」の味だった。


「ありがとう。焔月はやっぱり優しいな……。約束するよ。お前のその願い、俺が絶対に叶えさせる。」


(焔月……お前だけは、この家の悪意に染めさせない。悪意のない世界へ連れ出す。それが俺の唯一の願いだ)


縁之介の瞳に、再び光が宿った瞬間だった。



しかし、運命は残酷な形でその願いを断ち切った。


縁之介が脱走ルートを確保するために屋敷を離れていた、ある日のこと。


予兆なく内側から燃え上がった炎が、煉獄家の屋敷を包み込んだのだ。


「はぁ……はぁ……そんな、馬鹿な……!」


急いで戻った縁之介の目に映ったのは、紅蓮の炎に焼かれ、崩れ落ちていく生家だった。


因果応報(いんがおうほう)だと嘲笑う気持ちと、妹へのどうしようもない不安が交錯する。


「焔月!! あぁぁぁあああッ!」


彼は彼は自分の身を顧みず、火の海に突き込んた。その無謀さにより、全身の皮膚が灼かれた。激痛が襲う掛かても構わず、たっだ祈るように叫び続けた。


「神様、お願いします! どうか僕の最後の希望を、妹の無事を……!」


十番目の部屋。半開きになった扉の向こうに、彼女はいた。


「見つけた……焔月……! よかった、君だけでも無事でいてくれれば……!」


だが、扉を完全に開けた瞬間、縁之介の世界は崩壊した。


力なく横たわる焔月の腹部からは鮮血が溢れ出し、桜柄の着物をどす黒く染め上げていた。彼女の命の灯火は、既に尽きていた。


「そんな……嘘だろ……嫌だ……」


縁之介はその場に崩れ落ち、血塗れの妹を抱きしめた。まだ微かに温かいその身体が、急速に冷たくなっていく。


「縁……兄……生きて……私の分まで……自分の願いを……叶えて……」


最期の言葉を残し、焔月は動かなくなった。


降り出した雨が、燃え盛る炎を叩く。だが、縁之介の絶叫をかき消すことはできなかった。


「神よ! なぜだ! 悪人だけでなく、貴方さえも罪悪を許すのか! どうして焔月まで死ななければならない! 僕が人を殺したからか!? ならばどうして僕を生かした!」


雨と涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、彼は天を睨んだ。


「答えろ! 神でありながら、それほどまでに無能なのか!?」


返答はない。ただ無情な雨が降り注ぐだけ。


「……いいだろう。善を殺し、悪を見逃すのが神の選択なら……俺は、煉獄縁之介はここで願う!」


彼の瞳から光が消え、代わりにどす黒い怨念の炎が宿る。


「この世界に存在するすべての『罪悪』に復讐する!」


「この身が燃え尽きようとも、災いをもたらす『悪縁』を断ち切る! もう二度と、悪意に罪のない人間を傷つけさせはしない! 『罪悪の業火』は俺一人が背負えばいい……これは、俺という悪人への『罰』だ!」


あの日、『優しい灯』は死んだ。


代わりに生まれたのは、復讐の業火を纏った鬼――「斬炎(ざんえん)」だった。



「――はっ、はぁ……!」


強烈な共鳴のバックラッシュと共に、ヴォイドの意識は現実へと弾き出された。


路地裏の冷たい空気が肺に入り込むが、全身にはまだ灼熱感が残っている。


ヴォイドは隣で荒い息をつく縁之介を見た。


この男の中に渦巻く、壮絶な過去と覚悟。それを「データ」としてではなく、「痛み」として理解してしまった。


(苦しい……胸が、張り裂けそうだ)


ヴォイドの右目から、一筋の黒い液体が流れた。涙ではない。過剰な「業」を受け止めたことによる、肉体の軋みだ。


「これが……君の願い……」


(……理解できない……こんな解析不能た。)


ヴォイドは震える手で自身の胸を掴む。


「お前は……これ程の想いを背負って、戦い続けていたのか」


「そっか……俺の記憶が。……あぁ。俺は許せなかった。悪人も、悪を許したこの世界も」


縁之介はよろめきながら立ち上がり、ヴォイドに背を向ける。


「見たなら話は早い。もう俺の邪魔をするな。(……俺は人殺しの悪人だ。救われる必要も価値もない。この業火は俺一人で燃やし尽くせばいい)」


(なぜだ、縁之介? その道の先には死しかないとわかっているはずだのに……なぜた……ダメだ、そのやり方はやっぱり間違っでいる。)


ヴォイドは縁之介の寂寥感(せきりょうかん)溢れる背中を見て、心の中疑問を問い掛けた。


(でもそれがこそ君の存在てあれば……)


―そして結論出した。


「……縁之介。お前のやり方はやはり間違っている。だから俺はお前を一人で行かせない」


ヴォイドの言葉に、縁之介が足を止める。


「まだ言うか! 悪意によって俺の家族は死んだ! これは俺自身が求める罰だ、お前には関係ない!」


縁之介が激昂し、ヴォイドの胸倉を掴んで壁に叩きつける。殺気立った拳が振り上げられるが、ヴォイドは身じろぎもしない。


「人殺しのようなやり方でお前の願いを叶えたら、お前はお前が憎む『悪人』と何が違う? ……断言する。その証明方法は間違っている」


「お前ごときに何がわかる! 俺の生き方を勝手に否定するな!」


(ヴォイド……なんで、俺の道を邪魔する?)


「わからないさ」


ヴォイドは静かに答えた。


「俺は何も持たない『空白(ヴォイド)』だ。だからこそ……俺にしかできないことがある」


ヴォイドの瞳が、縁之介の瞳を射抜く。


かつては無機質だったその瞳に、今は確かな意思の光が宿っていた。


「縁之介、答えろ。お前が死んだら、お前の願いも、妹の願いも(そして俺が探したい答え)も全て『水の泡』に変えてしまう。それでいいのか」


「どうしろって言うんだ! 焔月を守ることすら出来なかった俺に、これ以外に何が残ってる!」


縁之介は拳を壁に叩きつけ、慟哭する。


「あるさ。今のお前が選んだ道とは全く違う、だがお前たちの願いを叶える方法が」


ヴォイドは目をつむって、子供頃のある記憶を脳内で再生した。


「ヴォイド。いつか……お前にも幾多の選択に悩まされるだろ。決して正しとは限らない。痛みが満ちる人生になるかもしれない。でも、怖す必要はない、前に進む、自分らしい答を見つけろ。」


「シェラウド……それはという意味なんだ。」


(このもやもやな気持ち、まだはっきりしないか、今は少し分かる気がする。もしあなた様がここに居たら、同じ気持ちを持って、同じ選択するだろ、シェラウド。)


ヴォイドは、自身の記憶の底にある「育ての親シェラウド」の言葉を反芻する。


「縁之介。お前の怒り、その『罪悪業火(ざいあくごうか』……俺に分けてくれないか」


「は……?」


「簡単に「理解済」などな『甘い言葉』を言はない。だから俺がお前の『業火(ごうか)』共に背負い、それを持って『復讐』を『否定』し、お前の願いへの道を『再定義(リディファイン)』する。」


ヴォイドの頬にある黒い紋様が、脈打つように少しつつ広がった。


「100パーセントには肯定はできない。だが、現状を観測し、分析した結果……これが最も『可能性』のある方法だ」


ヴォイドは手を差し伸べた。


「縁之介。俺を信じてくれないか……」


縁之介は、差し出された手と、ヴォイドの顔を交互に見た。


(こいつ……まじか。俺の地獄を、一緒に背負うと言っている。信じでもいいのか……焔月……)


「……簡単に信じられるかよ。だが……お前がそこまで言うなら、その僅かな可能性に賭けてみる価値はあるかもしれねぇ」


縁之介は乱暴にヴォイドの手を掴み、強く握り返した。


二人の間に、新たな契約パスが繋がった瞬間だった。



「さて、縁之介……反撃する前に…君に知らせるべきことがある。」


ヴォイドは自身のこめかみを指差す。


「俺の異能は『ブラックホール』はだった吸収を通じて異能の発動する時の波動を消すだけ。攻撃手段にはなれない。だが、それを補足として、俺にまず敵を観察しなければならない。つまり『弱点』を探る前提が必要。その後決め手は……縁之介、君に任せる。」


ヴォイドは空中に指で図を描くように説明する。


「なるほど……。なら、俺が囮になって奴を引きずり出す。その隙を解析して、合図をくれ」


「了解した。……死ぬなよ、縁之介」


「誰にモノを言ってる」


大通りに出た縁之介は、瓦礫の上に立ち、高らかに叫ぶ。


「おいカメローゲン! 続きをしようぜ!」


カメローゲンの首が不気味な角度で回転し、縁之介を捉える。


「どこへ消えたかと思えば……!やっと出てきたか」


縁之介は不敵に笑い、路地裏へ逃げ込んだ。


縁之介は地形を利用して疾走する。路地を抜け、壁を蹴り、変幻自在の動きでカメローゲンを翻弄する。


「チョコマカと逃げやがって……舐めるなァ!」


「多重・奪取マルチ・スナッチ!」


カメローゲンが無数の見えない「手」を展開し、全方位から縁之介を圧殺しようとする。


だが、今の縁之介には迷いがない。ヴォイドとの連携を信じ、あえて懐へと飛び込む。


(頼んだぞ、ヴォイド……!)


その瞬間、闇に潜んでいたヴォイドが動いた。


彼は戦場全体を俯瞰し、解析していたのだ。カメローゲンの能力の「隙」を。


「死ねぇぇぇッ!」


カメローゲンの攻撃が直撃する寸前、縁之介は紙一重で回避。


焦ったカメローゲンは、追撃を諦め、防御のために姿を消そうとする。


(今だ……!)


闇に潜んでいたヴォイドが、その一瞬を見逃すはずがなかった。


「そこだッ!」


ヴォイドの手から放たれた極小のブラックホールが、カメローゲンの周囲の空間を歪曲させる。


空間迷彩(ヴィジュアル)が剥がれ、無防備な本体が強制的に暴かれた。


「なっ……!?」


「縁之介! 今だ!」


ヴォイドの叫びと共に、雲間から黎明の光が差し込む。


上空へと跳躍していた縁之介が、逆光の中で刀を振り上げた。


その刃には、復讐の炎ではなく、浄化の炎が宿っている。


「煉獄刀・弐式……炎断(えんだん)!!」


一閃。


カメローゲンの身体が両断され、断末魔と共に地面へ崩れ落ちる。


勝負あり。


騎士団長ガラハッドが、ヴォイドと縁之介の勝利を高らかに宣言した。


「馬鹿な……俺たちの最強のコンボが……」


地面に伏したカメローゲンが呻く。


「お前たちの敗因は、力に溺れて連携を欠いたことだ」


「『多重奪取(マルチ・スナッチ)』と『迷彩潜り(ビジュアル・ステップ)』という強力な異能を持っているが、それを『同時』には使えない。一度に一つのモードしか使えない。もう一つモードを使えたい場は、必ず切り替える必要がある。」


「攻撃モードと防御モードの切り替える間に、約0.5秒の冷却時間(タイムラグ)が生じている。」


ヴォイドは静かに彼らに歩み寄る。冷静な解説を聞き、カメローゲンは自嘲気味に笑った。


「カメローゲン。お前たちは負けた。だが、処刑はしない。牢獄で罪を償い、二度と他人を傷つけないと誓え。……」


「……へっ、甘いねぇ…… 言っとくけど、俺たちはお前たちに負けただけ、世界に負けていない。」


「……カメロン……俺……兄貴として失格た……こんな人生だから、せめて金でいい人生になり変わりたかった。お前まで巻き込んで……すまない……」


「……なんだ……そんなことか。知ってるさ……知ってるなお兄貴の後ろに付けた……溝のネズミとして認識されても……兄貴はおいらの兄貴た。」


「カメロン……」


カメロンとローゲンが憑き物が落ちたような顔を見せた、その時だった。


「うっ……ぐあああああああッ!?」


カメロンとローゲンの身体が異常な脈動を始める。


融合していた二人の肉体が風船のように膨張し、血走った球根のような肉塊へと変貌していく。


それはもはや人間ではない。制御不能になった「欲望の暴走体」だ。


「兄貴……助けて……身体が……熱い……!」


(自壊作用(メルトダウン)だと!? まずい、この規模じゃ街ごと吹き飛ぶぞ!)


ウォイドは心で叫ぶ。


(このままでは、街の人々も、駆けつけた騎士団長も巻き添えになる。)


「……やるしかないか……」


ヴォイドは迷わず前に出た。


「ヴォイド!? 何をする気だ!」


「ブラックホール・フルバースト(全力展開)!」


ヴォイドは両手を広げ、限界までブラックホールを展開する。


膨張する爆発エネルギーを、すべてその身一つで飲み込もうというのだ。


「ぐっ……うぅぅぅッ!」


だが、質量が大きすぎる。ヴォイドの足が震え、全身から黒い静電気が迸る。


許容量(キャパシティ)を超え、ヴォイド自身の肉体が崩壊しようとしていた。


(くっ……足が……意識が……!)


膝が折れそうになったその瞬間。


背中に、熱く、力強い感触があった。


「お前、言ったよな。『俺の業火も引き受ける』って……」


縁之介が、ヴォイドの背中を支えていた。


彼自身の残る全エネルギーを、ヴォイドへと注ぎ込む。


「口だけじゃなかったら、ここで倒れるんじゃねぇぞ! ヴォイド!」


「ああ……そうだな……!」


さらに、騎士団長ガラハッドも金色の鐘の防壁を展開し、余波を封じ込める。


ヴォイドと縁之介、二人の姿が重なる。


二人の意思が共鳴し、ブラックホールは限界を超えて稼働した。


カメローゲンの自爆エネルギーを完全に飲み込み、そして静寂と共に消滅させる。


朝日が昇る瓦礫の中。


力を使い果たした二人は、泥のように地面へ倒れ込んだ。


互いの生存を確かめるように、拳を軽くぶつけ合うと、二人は深い眠りへと落ちていった。


影の中、ある鋭いの目線が戦闘現場の跡を静かに見詰めてる。だが、僅か数分しか見えてない。危機感知作動の上で、姿を影へ沈んで、その場から去った。


騎士団長は視線を感じた。だか視線の先にを辿って、そこに何もなかった。


【謎の音:リブートシステム——ローディング——5パーセント】

縁之介の過去が明かされた今、皆さんの目には何が映ったでしょうか。


他者の運命を変えることなどではない。ヴォイドは、その重みを共に背負うことを選んだ。それが彼にとっての『意志証明』なのかもしれません。


そして、闇から現れたあの謎の姿とは……。

この物語の行方を、どうか最後まで見届けてください。


次回の更新時間は3月11日。


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