そして……
ぐぐぐ……
紫電が徐々に小さくなっていく。さらに紫の人影の腕の氷はだんだん広がっていく!
”王様! 俺はもう行けるぜ! 早く呼んでくれよ!“
この声、『リベンジャー』か!
「さて……私も末席に加えさせて頂いてもよろしいですかな、エドワード様」
オリヴァーさんと共にアンドリューが前に出て剣を構える。形勢は完全に逆転だ。が……
「ほぅ……お前は中々人望があるのだな、エドワード」
追い詰められたはずのウィリアムの顔には余裕がある。ハッタリか? いや、油断は出来ない。
(まだアイツは何か隠してる。様子を見るから少し待ってくれ、『リベンジャー』)
ダークスキルにあの紫のオーラ……ウィリアムは何かを隠してる。
「何をしても無駄だ、エドワード」
ウィリアムがそう言って手を挙げる。すると、紫電が弾けるように巨大化した!
「ああっ!」
「うっ!」
クローディアさんとヘイゼルがその勢いに押されて倒れる。
(あの二人の力を跳ね返すなんて……)
紫電はもはや空を覆わんばかりの大きさにまでなっている。これじゃまるで太陽──
(そうか。それなら……)
俺は剣を構えると、頭の中で『リベンジャー』に今思いついたことを説明した。
「さらばだ、我が息子よ。我が覇道の贄となれ」
紫電が空から降ってくる。こんな規模の魔法、人の力でどうこう出来るはずがない。けど……
(どうだ、『リベンジャー』?)
“無茶苦茶なこと思いつくな、王様は”
まあ、確かに無茶苦茶だ。けどこれなら……
”ああ。奴らに一泡吹かせてやれるな“
ニヤリと笑う『リベンジャー』の顔が脳裏をよぎる。何だかんだ言って賛成なのかよ、『リベンジャー』!
(まあ、そりゃそうか。お前は俺なんだもんだな)
一人では無理でもお前とならやれる。だって俺達は最高のバディなんだから。
「行くぞ!」
“あいよ、王様!”
俺が〈アウェイキングシャドウ〉を発動すると、黒い影がまるで鎧のように纏わりついた。
ダッ!
俺は二人分のジャンプ力で紫電に向かってジャンプする。あっという間に目の前に迫る紫電の太陽に突っ込む瞬間、俺と『リベンジャー』はスキルを発動した!
”「〈ブレイジングサン〉!」“
太陽のように熱く、全てを破壊する怒りのオーラ。だが、俺達はそれを自分に向けた!
ゴゴゴゴッ!
赤い太陽と化した俺達と紫電の太陽がぶつかり合う。だが、大きさも力も向こうが上。次第に包みこまれるように押されていく!
(大丈夫か、『リベンジャー』?)
”王様こそ、大丈夫かよ。ここからだぞ“
(俺はお前に守られてる。けどお前は……)
“自分の毒で死ぬ蛇はいねーよ。とはいえ、ちとキツイか”
黒い影の鎧越しにも猛烈な熱さを感じる。言うほど楽な状態ではないはずだ。が……
「ふははは! 最後まで諦めない不屈の闘志、素晴らしい! だが、もう死ね!」
落ちてゆく紫電の太陽が間もなく地面にぶつかる……
“行くぜ、王様!”
(ああ!)
この状況はまさに俺の狙い通り。
”〈ブレイジングサン〉はこの魔法を破壊するためじゃなく、俺達がノーダメージで魔法の内部に入るためのバリア“
そして、破壊するのは……
(やれるな、『リベンジャー』!)
“誰に言ってるんだ。当たり前だろ!”
俺達は再び息を合わせてスキルを発動した。
”「〈バーストレイジ〉ッ!」“
内部から弾けた〈ブレイジングサン〉のオーラが紫電の太陽の内部を駆け巡り、焼き尽くす! そして……
ドッカーン!
内部からズタズタにされた紫電の太陽は地面に到達する前に破裂した!
(みんなは!?)
空から落ちてゆく俺の視界には復旧した闘技場の結界の中に大勢の人の姿が見える。アンドリューやシャーロットが誘導してくれたんだろう。
スタッ
身にまとっていた影が形を変えて落下の衝撃を受け止めてくれたおかげで元の場所に難なく着地できた。が、そこにはもうウィリアムの姿はない。
”奴の姿はないな。今ので死んだか?“
(……かもしれないが)
何せあれだけの威力だ。奴も俺に破られるとは思ってはいなかっただろうし……
(まあ、どちらにしろ今回は俺達の勝ちだ。助かったぜ、『リベンジャー』)
“ああ。まあ、一泡くらいは吹かせてやれただろ。次もギタギタにしてやろうぜ、王様!”
今はウィリアムを追うよりも皆の無事を確かめないとな。
筆者のお礼:
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。毎日連載は一旦ここで止めさせて頂き、少しお休みを頂こうと思います。
ブーストが欲しいので一旦完結は打ちますが、後日談やまだ説明しきれていないことが色々とあるのでまたゆっくり書きたいと思います。




