対話らしきもの
「皆を生かす……くくくっ」
「何がおかしい!」
コイツ……何を笑ってるんだ? 忘れたのか、”王族たるもの──
「”常に弱者を思いやるべし“か? 確かにな。お前は良く学び、良く鍛えてきたのだな、エドワード」
ウィリアムは何ともいえない視線で俺を見た。これは嘲り? いや……
「だがな、現実はそんな綺麗事だけでは……誰かに借りた言葉だけでは解決出来ぬこともある。お前には現実というものを教えてやろう……父としてな!」
ウィリアムが剣を抜く。俺はヤツに構えた剣を固く握りしめる。
「いつまでも父親ぶるな! この臆病者ッ!」
ガキィィン!
ウィリアムと俺の剣が真正面からぶつかり合う! そして……
バリバリバリバリッ!
俺とヤツの剣が帯びた〈バーストレイジ〉がぶつかり合う! くそっ……狙いは同じか!
バリバリッ! ドン!
二つの赤黒い閃光はぶつかり合い、すぐに大きく爆ぜる! その威力に俺とウィリアムは大きく後退させられた!
「……互角か。まあ、元々お前のスキルだからな」
ウィリアムが手を振ると奴に纏わりついていた赤黒い閃光はすぐに四散した。
(くっ……通じないか)
俺のスキルは奴に奪われ、もう使えない。頼みの綱の〈バーストレイジ〉が通じないとなると……
グラッ……
姿勢を変えようとすると、俺の意思に反して体が泳ぐ。アレクサンダーとの戦いの直後だからな……『リベンジャー』が半分受け持ってくれているとはいえ、もう体も限界だ。
(……が、こんなところで弱音を吐くわけにはいかない!)
奴はここで止める。そして、思い知らせてやるんだ、自分の間違いを!
「もう止めろ、エドワード。お前は良くやったが、もう力は残ってないだろう。無益な戦いはもうよせ」
「で、仲間がお前に殺されるのを黙って見てろと言うのか?」
「心配するな。お前も一緒に送ってやる」
「ふざけるな!」
俺は突進しながら『レンジャー』にクラスチェンジする。クラス補正により急に加速した俺は奴の予想よりも速く懐に潜り込み……
ガキン!
剣を振るう瞬間、『剣士』にクラスチェンジ! が、防がれてしまう……
「〈パリィ〉!」
「ッ!」
これは俺の……
「〈ヘビーエッジ〉!」
体勢が崩れた俺への追撃!
(……このスキルも!)
ゴロゴロ……
かわせないと思った俺は一か八かでわざと倒れて地面を転がった。普通なら防御が出来なくなる悪手だが……
ズドン!
ウィリアムの剣が石畳を切り裂く。〈パリィ〉を発動した直後だったからやはり狙いが甘かったみたいだ!
「ふむ……中々やるではないか、エドワード」
くそっ……余裕たっぷりって感じだな。
「が、この後の予定は詰まっていてな。そろそろ終わらせて貰う」
ウィリアムがそう言った瞬間……
ボゥゥゥ
ウィリアムの体がアレクサンダーのように紫のオーラに包まれていく!
(なっ!)
それだけじゃない! さらに紫のオーラが集まり、人のような姿になっていく!
「遊びは終わりだ、エドワード」
「アアア、スベテをハイに……」
ウィリアムの横に現れた人のような姿をした何かが手を上げる。すると、紫電が集まり、大きな玉のようなものになり始めた!
(や、ヤバい!)
この魔力、王都全体が吹き飛ぶんじゃ……
「シ─!」
バキィン!
突然、紫電を集める腕が凍りついた!
(なっ!)
さらに、紫電がどんどん小さくなっていく! まるで透明な何かが紫電を押し込めているような……
「大丈夫か、ディラン!」
「ヘイゼル!」
振り返るとヘイゼルが紫電に向かって手をかざしている。彼女があの魔法を止めてくれたのか!
「準備に時間がかかってしまってすまんのじゃ!」
「後は任せろ!」
こっちに向かって走ってくるオリヴァーさんの後ろにはエレナに支えられたクローディアさんの姿もある。
(みんな……)
その瞬間、体に力が湧いてきた。みんなのおかげで体に力が……
(いや、これは実際に体力が回復している!)
疲れ切っていた体がまるでポーションを飲んだように……いや、それ以上だ。それにケガの痛みも無くなっている!
「……やっと私のスキルを貴方のために使える時が来たのね、エド」
懐かしい……そして、一時たりとも忘れたことのない声がする。
(この人はエレナを治療してくれていた……)
フードを目深に被っていたから分からなかったが、まさかシャーロットだったのか!
筆者の一人言:
シャーロットは着ていたローブは認識阻害の力が付与された魔導具です。この場に紛れ込むためのものですが、そのせいでエドワードは今まで彼女に気づかなかったようです。
シャーロットからのお願い:
最後の最後で遂に私にも出番が! 正ヒロインなのに誰よりも出番が少ない私の不遇を“可哀想”だとか”応援したい“などと思ってくださる方は是非ブクマやポイントでご支援下さいませ!




