理由
バキィン! ガキィッン!
父さんとアンドリューの戦いは凄まじかった。しかも、剣を交える度に激しくなっていく!
「まさかお前に邪魔されるとはな、アンドリュー!」
「私こそ失望しましたぞ、我が君! 息子に剣を向けるなど、どんな理由があっても許されることではありませぬぞ!」
ガキィィン! ザザザッ!
正面からぶつかった二人はその互いの剣圧とスキルの威力で吹き飛ばされる。が、互いに姿勢は崩さず、にらみ合う。何て戦いなんだ!
「アンドリュー、大丈夫か!」
「エドワード様!」
俺はアンドリューと並んで剣を抜く。話したいこと、聞きたいことははいっぱいあるけど、まずは父さんを黙らせるのが先だ。
「エドワード……まさか父である私に剣を向けるというのか?」
その言葉で俺の中で何かに火がついた。心の中に押し殺したある思い。気づかれまいと、気づくまいと心の奥底に封じていた思いだ。
(……おかしい)
そうだ。父さんの言ってること、やってることは理不尽だ。俺を無視し、踏みつけにしておいて、抗議すれば非難するなんて……
(そんなの……そんなのって!)
ヤケになった訳でも、怒りに任せた訳でもない。ただ、心の奥底にしまっていたはずのその言葉が自然とこぼれ落ちた。
「お前なんか、父さんじゃない!」
そう。本当の父さんなら俺と一緒にいてくれるはず。
「母さんの葬式にさえ来ないお前が俺の父さんのはずがない!」
そう。母さんに最後の別れさえ言いに来ない奴が本当の父さんのはずがない!
「お前は俺の父さんじゃない! 俺の父さんはアンドリューだ!」
「エドワード様……」
そうだ、そうだ、そうだ。今俺が剣を向けているこの男は俺の父さんなんかじゃない! コイツは俺を無視し、傷つけ、さらには必死で得たスキルを奪うただの敵だ!
「ふっ……それがお前の本音という訳か、エドワード」
父さ──いや、ウィリアム国王は俺の言葉に顔色一つ変えずにそう言った。
「大人しく言う事を聞いていた裏でまさかそんなことを考えていたとは……」
「我が君よ。エドワード様の……貴方のご子息の本当の思いがお分かりになりませんか? 何故エドワード様が怒っておられるのか、その本当の意味が……」
「無論だ。私が憎いのだろう、エドワード。無理はない。だが、私には勝てん」
ブン!
ウィリアムが剣を振るうと、赤黒い閃光が走る! それは結界を切り裂き、観客席へと飛んでいった!
ドッカーン!
爆音と共に悲鳴が聞こえてくる。今だに晴れない土埃のせいで外の様子は見えないが……
「それでも向かって来ると言うなら相手になろう。どうする、エドワード?」
「我が君!」
悲鳴にも似た叫び声を上げるアンドリューの肩に俺はそっと手を置いた。
「俺が止める。アンドリュー、見届けてくれるか」
何が目的かは分からない。が、ウィリアムはさっき観客席を攻撃した。コイツをこのままにしては絶対に駄目だ。
「……仰せのままに」
俺の顔から何かを読み取ったのか、アンドリューは何も言わずに後ろに下がった。
「ふっ……まあいい。どうせこの場にいる者は皆死んで貰わなければ行けないのだ。自分の息子くらい自分の手であの世へ送ってやらねばな」
なっ……“この場にいる者は皆死んでもらう”だって?
「一体何のためにそんなことを! 俺達からスキルを奪うのが目的じゃなかったのか!」
アレクサンダーの闘技大会を目の前の男が自分の目的のために利用したのは間違いない。でも、俺達からスキルを奪う以外にもまだ目的があったって言うのか!?
「何も教えぬまま殺すのも忍びないか。仕方がない。教えてやろう。私の目的はこの場にいる者を贄とすることだ」
贄……犠牲にするということか!
「何かを得るためには何かを犠牲にしなければならぬ。私は力を得るためにお前達を犠牲にせねばならぬのだ」
そうか……
「……やっと分かったよ」
それなら全ての辻褄が合う。
「俺は馬鹿だ……いや、子どもだっただけか?」
最初から分かってた。でも、そうじゃないはずだと信じてた。いや、信じたかったんだ。でも、この言葉でハッキリした。この男、ウィリアム・アレクサンダー・アースキンは……
「アンタ、自分さえ良ければ良いんだな! 自分のために誰かを……みんなを踏みつけにしても何とも思わないんだな!」
「王とはそう言うものだ、息子よ」
「黙れ! 黙れ黙れ黙れ!」
違う! 俺が目指した王ってのはそんなんじゃない!
「王ってのは、皆を生かす存在だ! だから皆が王だと認めるんだ! そんなことも分からないのか、アンタは!」
ウィリアムからの提案:
王たる私が言うのも何だが、ブクマはもう済んでおるか? いよいよ最終決戦……と言った感じだが、物語はまだまだ終わらぬ。見落としを防ぐためにもブクマをしておくことを勧めるぞ。何せこの先は目が離せない展開になるのでな。
──偉そうですみません。王様なので、どうかご容赦をm(_ _)m




