真実
(結界は……無事か)
どうやらあの紫のオーラは外へ漏れてはいないようだ。が、視界はあまり良くない。土埃のせいだろうか。
カチャ……
一応倒れたアレクサンダーに剣を向けるが、審判が俺の勝利を告げることもない。外からは見えないのか?
(まあ、しばらく起きそうな気配はないけど……)
とはいえ、まずは外に状況を知らせないと……
バキ……
「!?」
結界の上部から音が!
(結界にヒビ……外部からか?)
ひょっとして中の様子を確認するために?
(いや、なら普通に結界を解けばいいだけだ。結界を外部から破るのはほぼ不可能のはず……)
そう。ほぼ不可能なはずなのだが……
バキバキバキッ!
結界が破れ、何かが落ちて来た!
ガキンッ!
いや、空から降りてきた誰かの剣をかわして、俺は後ろへ下がる。一体誰が入ってきたんだ!?
「頃合いか……」
こ、この声は……
(いや、そんなはずは……)
声とぼんやりとした輪郭しか分からなくても今、目の前にいるのが誰かは分かってしまう。何故なら……
「父さん! 何故ここに!」
視界が晴れ、俺の目の前に父さんが現れる。が、父さんは俺には返事を返さず、アレクサンダーの元に近づいた。
「起きろ、アレクサンダー」
「うっ……父上」
ようやく意識を取り戻したアレクサンダーが目を開けた。
「お前の勝利は間違いないと思っていたが……まさか負けてしまうとはな」
「……申し訳ありません」
「よい。勝負は時の運だ」
一見温かい言葉に聞こえるが、父さんの声には何故か感情がこもってないように感じられる。いや、これは気のせいだろうか……
「今回の敗北を次に活かせばよい。諦めない者こそ真の勝者なのだ」
「……はい」
尚も項垂れるアレクサンダーの肩に父さんはそっと手を置く。それはまるでアレクサンダーを励ますよう……だったのだが……
「まあ、お前に次はないがな」
「ち──」
ズンッ!
「中々良いスキルを手に入れたな、アレクサンダー。お前は役にたったよ」
「な、何をしたんだ、父さん」
一体何が起こったんだ?
「エドワード……」
父さんが俺の方を向く。その瞬間……
(えっ!?)
いつの間にか父さんが俺の後ろに!
(これはアレクサンダーの〈縮地〉?)
何故父さんがアレクサンダーのスキルを!?
ズン!
父さんが俺の肩に手を置くと、何かが吸い取られる感触が……ヤバい!
「ふむ……お前、これほど多くのスキルを持っていたのか」
反射的に飛び退いた俺には構わず父さんは驚いた声を上げる。
「お前はスキルを授からなかったはずだが、一体どうして……まあ、良い。お前も役に立ったぞ、エドワード」
一体どう言う意味……まさか!
「ようやく理解したか。お前のスキルは全て貰った。アレクサンダーのようにな」
なっ……
(そんなこと、出来るはずがない!)
スキルとは天から与えられた奇跡の力。それは譲ったり、奪ったり出来るものじゃない。そんなことが出来るなんて聞いたことさえないぞ!
(……まさか!)
いや、そんなはずは……
「そうだ。スキルを奪うスキル、それがこの私のダークスキル、〈スキルフリーク〉だ。お前達はこの時のために今まで生かされてきたのだ」
っ!!!
(父さんがダークスキルを! それにこの時のためって……)
つまり、最初から俺達からスキルを奪うつもりで……
「お前達は互いに憎しみ合い、互いに殺し合うために力を磨いてここまで来た。よくやった。だが……」
父さんの姿が消──
「もう用済みだ」
ブン! ガキン!
誰かが背後から迫る父さんの剣を受け止めた!
「ご乱心なさった……訳ではないのですな、王よ」
アンドリュー!
「アンドリュー、主人である私に盾突くと言うのか」
「主人の蛮行を止めるのも臣下の務めですからな。ふんっ!」
アンドリューがスキルを発動させながら剣を振るう。駄目だ! 父さんは俺とアレクサンダーのスキルを持ってるんだ!
”ボサッとしてんじゃねーぞ、王様!“
この声は『リベンジャー』!
“何しにここまで来たん!! まさか忘れた訳じゃないよな!”
何をしに……そうだ!
”まさかこの状況で仲良くお話ってつもりじゃないよな? 相手が剣を抜いてるんだ。まずすべきなのは……“
(分かってる)
そうだ……理由はどうあれ父さんは俺と戦う気なんだ。なら、まずは勝たないと!
“それでこそ俺の王様だ……まだ外には出られないが、力は貸してやれる。俺の分まで頼むぜ!”
ああ! お前は本当に頼もしい相棒だよ、『リベンジャー』!
『リベンジャー』からのお願い:
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