衝突
ドッカーン!!!
太陽を思わせるような巨大な炎が爆発する。それは空を黒く覆っていた剣や槍を瞬時に灰にした!
「ヒャッハッハ! 爽快だねぇ!」
傍に立っている『リベンジャー』が口笛を吹く。あれ……そういやコイツ、何でこっちの世界にいるんだ?
「あ? 何だ?」
いや、何だと言われても……
「〈アウェイキングシャドウ〉はそう言うスキルだ。それともダメージが浅いことか? 仕方ねぇから半分引き受けてやってるんだ。感謝しろ!」
「あ、ああ。ありがとう」
言われて気づいたが、体へのダメージが思った以上に軽い。これが〈アウェイキングシャドウ〉の効果……いや、『リベンジャー』のおかげだな。
「それより来るぞ!」
爆風で地面に倒されていたアレクサンダーが立ち上がろうとしている。ダメージはさほどでもなさそうだが……
「こ、こんなもの……」
アレクサンダーは手を上げると、再び剣が宙を舞う。が、さっきの〈ブレイジングサン〉でほとんどは破壊したからその数は精々十〜二十本といったところだ。
「俺は無敵の力を手に入れた……もう絶対に負けないんだ! そうだよね、母さん!」
「マザコンが! いい年していつまでも母親にすがってんじゃねーよ!」
そう叫びながら『リベンジャー』は剣を振るい、アレクサンダーの攻撃を全て叩き落とす。
(勝負あり……か)
アレクサンダーの武器はもう腰に帯びている剣が一本だけ。少なくとも今までみたいな数で押す攻撃はもうできないだろう。
「母さん? 待ってよ! 俺、まだやれるよ! 負けないから! 母さんを失望させたりしないよ!」
アレクサンダーの様子が……
「おいおい。大丈夫なのか、こいつ? 誰と話してるんだ?」
「分からないな……」
アレクサンダーは”母さん“って言ってるけど……って、え?
ボゥゥゥ
突然、アレクサンダーの体を紫のオーラが包みこんだ!
「ありがとう、母さん! 俺を信じてくれるんだね!」
な、何だ!?
「おい、見ろ!」
そう言って『リベンジャー』が指差したのはアレクサンダーの額。そこには……
(あ、あれは邪印!)
エレナのお父さんの体を蝕み、ゴリドの森で戦ったオーガに力を与え、さらにはアーティファクトを自壊させ俺達を窮地に追いやったあの邪印だ!
”ウットオシイ……ナゼオマエは!“
な、何だ? 声が……
「おい、しっかりしろ!」
「……大丈夫だ」
この声はアーティファクトの中で聞いたあの声……
(一体何なんだ、これは?)
邪印やこの声……これらは何で俺達の旅の節々に現れるんだ? 単なる偶然では片付けられないんじゃないか?
「おいおい、ヤバいぞこりゃ。一体何なんだよ、このマザコン王子はよ!」
アレクサンダーを包み込む紫のオーラはどんどん広がっていく。そして……
ジュゥゥ
紫のオーラが触れた闘技場の石畳が溶ける音がする。あのオーラ、触れるだけでもヤバいな。
“コンドコソ、ケシテヤル!”
紫のオーラが爆発する! 膨れ上がったオーラは闘技場を覆う結界に阻まれるが……
ミシィ……バリバリ……
結界が揺らぐ音がする。このオーラは石畳のような物体以外のものまで溶かすのか!?
(ってことは、エレナやヘイゼル、オリヴァーさんも危ない!)
闘技場を覆う結界が無くなれば、そばにいるみんながこのオーラに包まれてしまう。いや、それだけじゃない。観客席にまで被害が出るかも……
(止めないと!)
アレクサンダーがゆっくりと近付いてくる。その手には紫のオーラが集まり、次第に剣の形になっていく。
「ちっ……あれはヤベえな。仕方ねぇ、ぶっつけ本番だがやるしかねぇ!」
そう言うと『リベンジャー』の姿は溶けるように消え、変わりに一振りの剣が現れた!
「え……お前剣に?」
「影だからな。姿は何にでも変えられる。それより構えろ!」
「ああ!」
俺は『リベンジャー』を手に取り、アレクサンダーに向けて構える。今まで握ったどの剣よりしっくりくる。まあ、それはそうだろう。なんたってコイツは俺自身なんだから。
「シネ……」
アレクサンダー……いや、奴を操る怪しげなオーラが俺に向けて剣を振るう。
(この一振りに全てを込める……)
結界も俺も長くは保たない。この得体のしれない相手がこれ以上厄介なことをする前に消滅させなければ!
「お前が消えろ!」
刃が交わる瞬間、俺は〈バーストレイジ〉を発動した!
『リベンジャー』のぼやき :
おいおい! 何なんだよ、あのマザコン王子はよ! ダークスキルもそうだが、あの紫のオーラは何なんだよ!
だが、相手が何でも俺の王様が負ける訳がねぇ! どんな力を持っていようが、必ず這いつくばらせてやるぜ!
おっと! とは言ってもみんなの応援は欠かせねぇ。ブクマ&ポイントをうっかり忘れている奴は……うっかりなんだよな? まあ、過去のことは良い。大切なのは今だ。どうするかは勿論任せるが、俺は信じてるぜ。
……ふっ、俺も丸くなったもんだぜ。




