影との和解
ポタ……
水滴が床に落ちる音がする……
気がつくと俺は音のない空間にいた。
(牢獄……いや、祭壇か?)
窓のない空間には何もない。が、あちこちは掃き清められ、高価そうな石が壁や床に敷き詰められている。
「こんな所に何しに来たんだよ、ああん?」
部屋の奥には高くなった場所があり、そこに置かれた椅子の上にそいつはいた。
「居心地はどうだ?」
「最悪だね」
何と声をかけたら良いかわからずこう言ってみたのだが……どうやら機嫌を損ねてしまったようだ。
「最初に会った時よりマシな場所に見えるけどな」
「これでもか?」
椅子に腰掛けた『リベンジャー』が軽く腕を振るうと彼の体を縛る鎖がシャランと音を立てた。
「……すまないな。そんなつもりはなかったんだが」
「ふん、敗者必滅がこの世の理だ。好きにすれば良いさ」
そう言って椅子に深く腰掛けると『リベンジャー』は目を閉じる。が、俺がまだこの場にいることに気がつくと、再び目を開けた。
「お前、何しに来たんだ?」
「何ってまあ……」
何と説明したらいいか分からない。だが、何をしたらいいかだけは分かってる。
(”今更“って言われるかも知れないけど……)
想いにに呼応するように剣が現れる。俺はそれを握ると『リベンジャー』に向けた。
「……なるほど。邪魔者を完全に消しに来たって訳か。いいぜ、どうせ今俺に出来ることは何もねーからな」
諦めにも似た笑みを浮かべる『リベンジャー』に俺は剣を振り下ろした!
バリィン!
鎖を斬ると同時に剣は割れて消え失せる。俺は続けて鎖を解き始めた。
「……お前、何してんだ?」
「見てわかんねーのかよ。おい、お前も協力しろよ」
鎖は案外簡単に解けていく。ひょっとしたら亀裂が入ると脆くなる作りなのかも。
バリバリ……パリィン!
程なくして鎖は解けると、『リベンジャー』は戸惑いながら自由になった手足に目をやった。
「一体お前何考えて──」
「良く考えたらさ……アレクサンダーを倒してもまだ終わらないよな」
そう。俺は今までアレクサンダーへの憎しみを滾らせてここまで来た。勿論、奴のことは憎い。が……
(アイツも俺と同じだ。父さんや母親に振り回されている……)
結局、全ての始まりは父さんに追放されたこと……いや、それよりずっと前。父さんが母様を蔑ろにして来たことから始まってるんだ。
(そこを問いたださない限り、何も終わらない……)
父さんは一体何を考えてるのか。何のために周りを振り回すようなことばかりしているのか。俺が父さんと向き合わない限り何も解決しない。
「お前……」
「俺、父さんと話をするつもりだ。その時にはその……力を貸して欲しい」
忌み嫌い、否定して、心の底に押し込めた想い。何を今更と思われても仕方がない。が、まずはここからしないと始まらないのだ。
(それにまあ、拒否されたらその時はその時だ)
クラスチェンジ出来なくなるかも知れないし、また戦わなきゃいけないかも知れない。まあ、でもそれも仕方がな──
「……認めるぜ」
静かにそう言うと『リベンジャー』は俺に近づき、膝を折った。
「お前が王だ、エドワード」
その厳かな声に俺は驚き、次に納得した。
(そうか……それだけで良かったんだ)
俺は手を取り、『リベンジャー』と向き合う。彼の顔は泣いてるのか、笑ってるのか分からない。多分俺も同じような顔をしているんだろう……
「さて……王様よ。とにかくまずは試合に勝てないとならないな」
「そうだな」
言われて気付いたというわけでは無いが、俺は窮地に立たされている。呑気に喋ってる場合ではないかも知れないな。
「さと、と。なら、とっと戻らないとな! 途中でへばるんじゃねーぞ、王様!」
ニヤリと口元に笑みを浮かべながら『リベンジャー』が拳を突き出す。俺は彼と同じように笑いながら拳を合わせた。
「肝に銘じるよ」
その時、合わさった二人の拳から金色の光が広がった!
*
目を開けた時、俺の目の前には黒い雨のように剣や槍が迫っていた!
「おいおい、絶対絶命じゃないか!」
確かに迫りくる剣や槍は百や二百じゃないだろう。これだけの数になると回避することも防御することも難しい。
(なら、正面突破しかないな)
俺がそう考えると、『リベンジャー』なニヤリと笑った。
「良いね、王様。景気づけに派手にやってやれよ」
「ああ」
回避も防御も不可能……それはこのスキルも同じだ!
「〈ブレイジングサン〉!」
筆者のつぶやき :
『リベンジャー』の姿や声はディラン(エドワード)にしか認識出来ません。つまり、『リベンジャー』が攻撃すれば傍目には突然攻撃されたようにしか見えません。ということは某忍者漫画のラスボスの技と同──(以外自粛)
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