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決着

(ディラン〈エドワード〉視点)


 ドッゴーン!


 まるで大砲のような音と共に何かが飛び、 闘技場を覆う結界にぶち当たる。そして……


 バリバリバリッ!


 その勢いは止まらず、飛んできた何かは結界を突き破ろうとするかのように突き刺さる! そのせいで結界はまるで悲鳴のような音を立てた。


 ドサッ……


 しばらくして勢いが止まると、▲がぼろ切れのように地面に落ちる。そう、俺達はこの時点でようやく飛んでいたのが奴だと気がついたのだ!


「……し……勝者、エレナ選手」


 審判がそう宣言するには少し間があった。が、それも無理はないかも知れない。そのくらい衝撃的な光景だったのだ。


「エレナ!」


 俺がそう叫んで駆け寄ると、エレナは微笑んで腕を上げ──


 バタッ……!


 突然、糸が切れた操り人形のようにエレナが倒れ込む! それと同時にまるで赤い絨毯のように血が広がっていく!


「む……いかんな。早くこっちへ!」


 俺の後ろでヘイゼルがクローディアさんの治療に当たっていたヒーラーに声をかける。すると、フードを目深にかぶったヒーラーが駆けつけてくれた。


「ディラン……私、勝ったよ」

「ああ! ああ! 凄いよ、エレナ!」


 治療を受けながらうわ言のようにそう言うエレナの手を取る。それくらいしか出来ないことが悔しい……


「後もう少しなのに……力になれなくてごめん……」


「エレナぁぁぁ!」


 意識が途切れたエレナを思わず揺さぶろうとした俺をさっきのヒーラーが止めた。


「大丈夫。眠っただけです。それより担架の準備を」


「は、はい」


 俺とヘイゼルがエレナを運ぶ間も治療は続いてる。勝つためにこんなにボロボロになるまで戦ってくれたんだな、エレナ。


(ごめん。いや、ありがとう……だな)


 エレナはエレナの意思で戦ってくれたのだ。伝えるべきなのは謝罪ではなく、感謝であるはずだ。


「さて、結果はエレナ選手の勝利ですが……まあ、紙一重でしたね。実質的にはベルナルド選手の勝利と言えると思いますが、如何ですか?」


「いや〜、おっしゃる通りですね。実質的にはベルナルド選手の勝ちです。流石剣聖のサポートです。凄まじく強い!」


 相変わらず腹が立つ……いや、そんな言葉じゃ生ぬるい。


(エレナの頑張りを、覚悟を馬鹿にしやがって……)


 が、今はそんなことよりもエレナの方が優先だ。俺達は言われた通りにクローディアさんを治療するために急遽設けられたテントの中にエレナを運び込んだ。


「今はあまり動かさない方が良いでしょう」

「エレナは大丈夫なんですか!」


 ヘイゼルに押し止められながら俺がそう問うと、フードを被ったさっきのヒーラーが大きく頷いた。


「ベストを尽くします。だから、彼女は私に任せてあなたはあなたのすべき事に集中して下さい」


 何気ない言葉だったのだが、俺は何故か急に安心してしまった。理由は分からない。が、何故かこう思うのだ。エレナのことはこの人に任せておけば大丈夫だと。


「よろしくお願いします」


 俺はこの場にいる全てのヒーラーにそう声をかけるとテントを出た。あのヒーラーの言う通りだ。俺は俺のなすべきことに集中しなくては!


「さて、次の試合は……おおっと、これは!」


 観客が一斉に歓声を上げる。どうやら誰かが……いや、奴が闘技場に入って来たようだ。


「茶番はもうこの辺でいいだろう。私の準備は整った!」


 歓声と共に現れたのは俺の名を騙り、この闘技大会を開いたアレクサンダーだ!


(茶番だと!……ここまで戦ったオリヴァーさんやエレナを馬鹿にしているのか!?)


 いや、オリヴァーさんやエレナだけじゃない。クローディアさんも、そして気に入らない奴だがベルナルドだって本気で戦ったはずだ。それを……!


「いよいよクライマックス! ここから……って母さん?」


 ……?


「……分かってるよ。油断はしないよ」


 アレクサンダーが誰かと話してる……?


(けど、周りには誰もいないぞ?)


 アレクサンダーは今、完全に一人だ。にも関わらず誰かと会話しているように見えたが……


「ヘイゼル、何か見えるか?」 


 ヘイゼルは生命反応を見ることが出来る特別な目を持っているからだ。きっと彼女には何かが見えて……


「何も見えぬ。あの男は誰もいない場所で一人言を言っているように見えるな」


 な……


(気でも触れたか? いや……)


 心を病むといないはずの人の声が聞こえたりすることがあると聞いたことはある。が、アレクサンダーの振る舞いからはそんな様子は見られない。ってことは……


「出て来いよ、義兄さん! そろそろ決着をつけようじゃないか!」


筆者のつぶやき :

 闘技場と観客席の間には距離があるので、ディラン〈エドワード〉やヘイゼル、アレクサンダーの声はこの場にいる人にしか聞こえません。したがって、アレクサンダーの不可解な言動な観客は気づいていません(今のところ)



アレクサンダーの叫び :

 あっはっは! 舞台は整った! いよいよ、ショーの始まりだ!


 ん? ブクマとポイントがまだだと? あり得ない……が、今なら間に合うと母さんも言ってるぞ! 母さんは絶対だ! 今すぐポチッとした方が良いぞ! 後、レビューを書くかどうかで迷ってる君! 今すぐ書いたほうが良いと母さんが言ってるぞ! 何故なら書かないと君は──


(アレクサンダーはこんなことを言ってますが、書かなくても何も起きませんのでご安心くださいm(_ _)m)

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