表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/89

誇りと絆

「私は証明したい。私はもう一人でも戦えるし、生きていけるって」


 だからもうおとうさんに心配をかけたくない。なのに……


“やはりお前は優しい子だな”


 おとうさん……


”だが、ここで逃げてもお前の力が足りないってことにはならないぞ。お前は壁に挑む力は既に持っている。そして、壁とは一度で越えなきゃならないものではない“


 確かにそれはそうかも知れない。


“出来たことではなく、出来るまで続けたことにこそ意味がある”


 おとうさんによく聞かされた言葉だ。


“ここで棄権しても誰も責めはしない。それでもお前は戦うのか、エレナ”


 おとうさんが澄んだ瞳でそう私に聞いた。確かにそうだ。ここは棄権すべきかも知れない。誰も私が命の危険を冒してまで勝つことを願っていないんだ。


(……でも!)


 その時私の脳裏にディランの顔がよぎった。


「でも、負けるわけにはいかないの。だって、この試合はディランが大切な人を取り戻すための戦いだもの!」


 そうだ。この戦いは私だけのものじゃない。ディランの未来がかかった戦いなんだ!


(大切な人が奪われる痛み、私にはよく分かる……)


 ディランはここまで必死に頑張って来た。そんな彼にあんな思いをして欲しくない……


”やはりお前は優しい子だ、エレナ“


 おとうさんは泣きそうな顔で笑う。けど、それは一瞬だった。


“仲間のために命をかける、絆を何より尊ぶ。それは我が一族の誇りだ、エレナ”


 周りの蛍火が強く、激しく輝き始める!


“お前に覚悟があるなら、我らはそのための力になろう!”


 おとうさんの姿が光に変わっていく。これは一体……


”お前を誇りに思うよ、エレナ“


 そう言うと、おとうさんは私の頭を撫でた。


”大きくなったな……お前が私の娘で良かった“


 おとうさんだった光が辺りに広がって──


(ディラン視点)


「エレナぁ!」


 俺が声を出せたのは宙に打ち上げられたエレナが地上に叩きつけられた後。それまでの間に俺に見えただけで三回……いや五回、ベルナルドの拳が彼女を襲った。


(もういい……もう止めてくれ!)


 地面に叩きつけられたエレナはのろのろと立ち上がる。が、既に限界を越えているのは明らかだ。


「棄権しろ、エレナ! 殺されるぞ!」


 ベルナルドの姿が消える! エレナッ……


(……あれ?)


 気がつけば、エレナがいた位置にベルナルドが膝をついている。あいつ、何故あんなところに……


(いや……それよりエレナはどこに?)


 俺がそう思った瞬間、エレナのかかと落としがベルナルドの脳天に直撃した!


「がッ!」


 これは一体……それにエレナの様子がおかしいぞ……


(一体何が起こってるんだ!?)


 急にエレナの動きが変わった!


「このッ!」


 ベルナルドが腕を振るう。その速度、威力は相変わらず凄まじい。が、エレナは既にそこにはおらず……


 ドカッ!


 鋭い蹴りが膝に入り、ベルナルドが苦悶の声を上げながら再び膝をついた。


「お、俺がまた膝を……こんな小娘相手に……」


 憎々しげにそう言うベルナルドだが、すぐには立ち上がれないところを見ると、相当なダメージなのだろう。


「早く立って。それとも降参する?」


 今だに立ち上がれないベルナルドを見下ろしながらエレナがそう言うと……


「こ、降参だと? お前如き混ざり者相手に? ふざけるな!」


 ベルナルドが振り向けざまに何かを投げつけた! あれは石……いや、砂? 目潰しのつもりか!?


 シュッ!


 が、ベルナルドが投げた時には既にエレナはそこにいない。彼女は既に……


 ヒュンヒュン……ドカッ!


 横っ面にエレナの回し蹴りが直撃する。ベルナルドはまるでボールのように吹き飛び、地面を転がった。


「馬鹿な……馬鹿な……何なんだ、この力は!」


「あなたも知ってるはず。これはあなたが捨てた絆の力……」


 エレナが拳を構えた。恐らく次で決めるつもりだ。


「悲しい人……思い通りにいかないからってみんなを恨んで死に追いやるなんて……」


 エレナの瞳から溢れたのは涙。だが、それは血のような赤い色をしている。


「この俺を憐れむのか、混ざり者ぉぉ!」


 ベルナルドが砲弾のような勢いで突進する! エレナは……


(エレナ視点)


 突進してくるベルナルドが見える。彼がどこを目指し、どうするつもりなのかも。


(でも、そうはならない)


 勝つのは私。そして、次の一撃が最後。


(これはみんなの無念を晴らすための拳だ)


 皆の記憶が教えてくれた。ベルナルドが一体何をしたのかを。だから、これは彼のせいで散っていた手向けの一撃……


(けど……ううん、だから私の分も加えても良いよね?)


 私の体の中に流れる皆の血がニッコリと頷いた。勿論、私のおとうさんも。


「おとうさんの仇──ッ!」


 私の全力、そして皆の力がこもった私の拳がベルナルドのみぞおちに入った!




筆者の呟き :

 な、何とか二話で終わりましたが、追憶の血石の効果が説明しきれなかったのでここに載せときます。



追憶の血石

 持ち主である血族に危機が訪れた時、体内にはいってその血となり、力を与える。


補足

1 劇中でエレナの身体能力が上がっているのは血圧の上昇により身体能力を向上したからです。しかし、血圧が上がると血管に負荷がかかります。最後の方でエレナが血の涙を流しているのは血圧が上がったせいで目の毛細血管か切れてしまったからです。


2 ここで公開したテキストは効果発動後に見ることが出来るものです。このように条件を満たすまで見ることが出来ないテキストも存在します。


 本懐を遂げるエレナ会心の一撃! そして……


 続きは次話で! 見逃さないようにまだの方はブクマとポイントをポチッとしておくことを推奨します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ