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真の力

(エレナ視点)


「それがどうしたぁ!」


 私の拳が直撃したにも関わらず、動きが止まったのはほんの僅かな時間だけ。ベルナルドは姿勢を崩すことなく腕を振るった!


 ブン!


 予想していなかった訳じゃない。けど、攻撃の直撃だったせいもあって攻撃が私の腕をかする。


 ばきぃ……


 くっ!


 バッ!


 骨が軋むような嫌な音を耳にしながら私は距離を取る。かすっただけでこの威力か……予想はしてたけど。


「分かったか? 自分に勝ち目がないってことが。あん?」


 ベルナルドは小馬鹿にするような声で私にそう言った。


「拳の直撃を食らっても俺はノーダメージ。にも関わらず、適当に振った腕がかすっただけでもお前はダメージを受ける。分かるよな

、この意味が?」


 分かってる。このままじゃジリ貧だ。


(〈気功術 : 水〉は既に発動済み。デバフをかけていけば私の拳が通じるはずだけど……)


 問題はそれまで私の体力が保つかということだ。残念ながら〈気功術 : 木〉での体力回復が心もとなく感じるくらいとベルナルドの間には攻撃力に差がある。私の体力がどこまで保つのかが鍵だ。


「勝てもしない相手に挑んで来るなんて……親子揃って本当に馬鹿な奴らだ。救いようもない」


 ……集中だ。相手の攻撃をかわし、拳を当てる。それを繰り返すんだ。動きは決して負けてない


「どうせ、動きはほぼ同等とか思ってるんだろ? 本当に馬鹿だよな。獣人の真の力も知らねぇんだよな、お前みたいな混ざり者は」


 獣人の……真の力?


「お前みたいな雑魚に見せるのは勿体ないが、ちょこまかされるとうざってぇ。さっさと動けなくしてお楽しみといくか!」


 突然、ベルナルドは空に向かって声を出──いや、これは遠吠えだ。


(何? 体が……)


 男の体が膨らみ、体毛が体を覆っていく。これは……


(おとうさんと同じ──)


 変化が止まった時、ベルナルドの体はまるで二本足で立つ狼のような姿に変貌した!


「獣人の中にはよ、戦闘時に肉体をより戦闘用の形態に変化させられる特別な奴もいる。つまり、それが俺だ」


 肉体を強化! でも私は──っ!


 ドカッ!


 その瞬間、息も吸えなくなるくらいの衝撃が私を襲う。そして、それは一度では終わらない。二度、三度、そして……


 ドサッ……


 地面に叩きつけられ、倒れ込む。このまま倒れていた方が楽かもしれない。けど!


「うっ……ああッ」


 体中が痛みと恐怖を伝えてくる。五感の全てが私に”逃げろ“と叫んでる。でも私は……


「おいおい、まだ立つのかよ」


 私は負けない。だって、私は──


「エレナ!」


 その声に思わず振り向くと、ディランは酷い顔をしている。ああ、心配をかけてるんだろうな……


「かかかっ! いいね、その信頼関係! 俺はそういうのを見ると壊してやりたくて仕方がなくなるんだよなぁぁぁ!」


 ベルナルドから再び殺気が溢れ出す。相手はほぼノーダメージだけど、私は立っているのがやっと。勝ち目なんてないのかも知れない。けど、けど……


(負けたくない!)


 私はおとうさんに証明したい。私はもう大丈夫だって。だから、安心して私のことを天国で見ていて欲しい。何故なら……


(私は強くなった。おとうさんのおかげで……)


 おとうさんは命をかけて私を守ってくれた。それが無意味じゃないと証明するんだ。じゃなきゃ、おとうさんは何のために死──


「生かさず殺さずいたぶってやる! 覚悟しろ!」


 その瞬間、全てが消えた……



(ここは……)


 始めに目に入って来たのは暗闇に飛ぶ蛍の光。それで私が思い出したのは、昔おとうさんに聞かせて貰った死後の世界、ヴァルハラの話だ。


(確か、この蛍火の一つ一つが死者の魂だったっけ……)


 優しい光だ。まるで私を導くような……


”エレナ……“


 懐かしい声がした。けど、この声は決して忘れない。何故なら……


「おとうさん!」


 そこには私の記憶の中のままのおとうさんがいた。優しく、厳しく、でも私を心の底から愛してくれているおとうさんだ。


“エレナ……まさかお前がここに来るまで成長するとは思っても見なかったぞ”


「ここはヴァルハラじゃない……?」


”ここはヴァルハラじゃない。その一歩手前だ“


 死後の世界、ヴァルハラの一歩手前。ってことら私は死にかけているってことかな……


“いや、まだ何も決まってはいない。この世界は言わばお前の血族の記憶が眠る世界だ”


 私の血族の記憶……?


 フィィィン!


 肌見放さず持っていた首飾りが蛍火と同じように光る。これはおとうさんが遺してくれた追憶の血石に鎖をつけたものだ。


”それは血に眠る一族の記憶と力が固まったもの。そして、生死の境にいる子に選択肢を与えるのだ。今のように……“


 生死の境……選択肢? それって……


“エレナ、お前は何故戦うのだ。私はお前に幸せになって欲しいと願っていたのに……”


 おとうさんの顔が苦痛に歪む。ああ、私はやっぱりおとうさんに心配をかけてしまっているんだ……



筆者の呟き :

 すみません。二話で終えたかったのですが、出来ませんでした。次話で終わり&ざまあ回(?)なのでお許しを……


(本当は後二話くらいやりた……ガハッ!)


 ちなみにエレナの首飾りになっている追憶の血石は18話でディランが彼女のおとうさんの亡骸が灰化した中から見つけ出し、エレナに渡したものです。伏線回収が遅くて申し訳ないです(汗)


 ブクマ&ポイントがまだの方は是非ポチッとしてエレナを応援してやって下さい。“レビュー書いてやるぜ!”って方も是非。正直この辺りは構想で泣く、執筆して泣く、見直して泣くの三重苦(?)ですよ……

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