影との決着……
「くっ、馬鹿な。まさか俺の力を打ち破るだと……」
視界から赤黒い炎が消え、俺と『リベンジャー』は最初と同じ青空で覆われた世界に立っている。
「決着を付けるぞ、『リベンジャー』!」
「くっ……偽物の癖に調子に乗りやがって!」
再び目にも止まらぬ速さで『リベンジャー』が俺に突撃する! が、俺はその神速の一撃を易々と防御した。
(……体が軽い)
理由は分からない。が、さっきまでと違い、体が軽く、思うように動いてくれる!
「力は俺の方が上だと言うことを忘れたのか! くらえ、〈バーストレイジ〉!」
俺も奴に合わせてスキルを発動する。俺と『リベンジャー』が放った赤黒い光は正面からぶつかって……
ドッカーン!
前と同じ展開、しかし結果は逆で、衝撃に耐えきれずに吹き飛ばされたのは『リベンジャー』だ。
(力が湧いてくる……)
心の底から力が湧いてくる。やってやる、やり遂げてやる……そんな力強い想いが湧いてくるのだ。
「開き直ったか、エドワード! だが、どう思おうが、現実は変わらない! お前が俺を否定した過去も、父がお前を構わずアレクサンダーばかりを気にかける今も!」
そうだ。確かにそうだ。現実は現実でしか変えられない。俺が何をどう感じても、それで誰かが変わるわけじゃない。でも、それでも……いや、それだからこそ!
「俺はもう自分を憐れんだりはしない! 俺は俺に誇りを持って生きる!」
体が……心が熱く燃え上がる。もしかしたら本当に燃えているのかも知れないと思う熱さの中、ある言葉が頭に浮かぶ。
(これはまさか……)
いや、そうだ。これこそ俺の新たな──
「消えろ、エドワード! 王は俺! お前は俺の中の小さな可能性でしかない!」
叫びと共に『リベンジャー』が再び〈アウェイキングシャドウ〉を発動する。赤黒い炎が悪夢のように広がっていく。
「さようなら、『リベンジャー』。これで終わりだ」
弱い俺が生んだ……いや、俺そのものである『リベンジャー』。もしかしたら、お前が正しく、俺は間違っているのかも知れない。けど……
(俺は信じたい。大切な人が信じてくれる今のこの想いを……)
だから、俺は未来へと進む。過去と他人は変えられなくても、未来と自分は変えられるはずだから。
「〈ブレイジングサン〉!」
頭に浮かんだ言葉を口にした瞬間、真っ赤な炎が全てを包みこんだ!
*
目を開けると、俺は初代国王の手記を持って座っていた。
(終わった……んだよな?)
試しに少し腕を動かしてみるが、何の痛みもない。大丈夫だ。
「うっ……戻ったのか?」
「ヘイゼル、大丈夫か?」
そう声をかけた瞬間……
ガバッ!
意識を取り戻したヘイゼルは突然俺を抱きしめた!
「ディラン……勝ったのじゃな!?」
「ああ……ヘイゼルのおかげだよ」
あの時ヘイゼルの言葉がなかったら、俺の心は完全に折れてしまっていただろう。
「ディラン!」
「上手く行ったのか!」
隣の部屋からエレナとオリヴァーさんがかけこんでくる。どうやらずっと気にしてくれていたみたいだ。
(ありがとう、みんな……)
仲間がいる。そのことのありがたみはいつも感じていたつもりだった。けど、俺は今、改めてそのことを実感した。
(みんながこんなに応援してくれてるんだ。明日は絶対勝たなくちゃ!)
俺はみんなへの感謝しながら秘かにそう決意した。
*
(アレクサンダー視点)
「……申し訳ありません、アレクサンダー様」
頭を下げる二人を前に俺は怒鳴りたくなるのを必死で堪えていた。
“アレク……凡人は貴方とは違うのです。許してやらねばなりませんよ”
「分かっています、母上」
俺は二人に向き合い、労を労うと下がって明日に備えるように命じた。
“それでこそ我が子です、アレク”
「ありがとうございます、母上」
母上の言葉で二人に対する怒りは吹き飛んだ。母上に褒められた……良かった。俺は母上を失望させずに済んだんだ!
”褒美に以前約束していたものを与えましょう“
おおっ……遂に!
(俺の勝利を盤石にする新たな力……母上を疑う訳じゃないが、いつ下さるのかとヤキモキしたぜ!)
勿論、待たされたことに対する不満なんてない。母上には母上のお考えがあるんだからな。が、義兄との決戦は明日だ。流石に間に合わないんじゃないかという焦りはあったのだ。
(まあ、今の俺が負けるとは思えないが、あいつには完勝しないと気が済まないからな)
明日の決戦は戦いじゃなく、ショーでなくてはならないのだ。俺があいつに全てで勝る上位互換の存在であることを見せつけるためのもの。だから、力はあり過ぎて困ることはないのだ。
“アレク、こちらに……”
「はい、母上」
母上の指か俺の額に触れる。そして……
筆者の呟き :
ディランの新スキル『ブレイジングサン』。最初は別の名前でした。いや、より正確に言えば某カードバトルアニメからパクってつけていました。だって、好きなんだもの……
vitaのメモカが壊れるまではスキマ時間によく見ていました。ああ、直ってくれないかな、僕のメモカ……
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