影との対峙
ガキィィン!
俺の剣と『リベンジャー』の剣が衝突する。が、拮抗したのは一瞬だけ。俺は直ぐに押し負けて後退させられた。
「はっはっは! ざまぁないな、俺!」
ニュアンスで末尾の“俺”は奴のことではなく、俺のことを指しているんだと直感する。だが、その意図は分からない。アイツと俺は別の存在。同じなのは見た目だけだ。
「理解できねぇか! だよな! だよな!」
狂気じみた笑みを浮かべながら『リベンジャー』が突進する。一見無謀に見えるそれの攻撃は実は今の俺に最も有効な手だ。
(避ければ〈バーストレイジ〉で追撃される。が、防御しても押し負ける……)
奴の力の方が上なのはさっきの衝突で分かった。が、遠近どちらもこなせる万能スキル〈バーストレイジ〉を奴が使えないはずがない。だから、俺が出来るのは……
「「〈バーストレイジ〉ッ!!」」
剣が衝突する瞬間、俺もバーストレイジ〉を発動させて威力を減衰させる。ダメージは受けるが、それは〈バーストレイジ〉を発動させた奴も同──
「ははは……お前は本当に馬鹿だな。痛み分けのつもりだったのか?」
ぶつかれば俺の負けだとしても、〈バーストレイジ〉は自分にダメージを受けるスキル。『リベンジャー』も負傷すると思ったのだが……
「俺が俺のスキルを使ってダメージを受けるわけないだろ! だからお前は馬鹿なんだ!」
「くっ……」
何故か傷一つ負っていない『リベンジャー』とあちこちから血を流す俺。今の攻防がどちらに理があったのかは明らかだ。
「ほらほら! まだまだ行くぞ! 〈ダブルシュート〉!」
何ッ!
(他のクラスのスキルまで使えるのか!?)
予想外の事実に僅かに動きが鈍り、またもや傷を負う。距離をとっていたから深手にはならなかったものの、手痛いダメージだ。
(くっ……俺が今まで得たクラスの力を使えるなんて反則だろ!)
大体、〈ダブルシュート〉は俺が得──
(待てよ……つまり、そう言うことか)
俺が得た全てのスキルを使うことが出来る。それがアイツが俺だと言う言葉の意味なのか?
(だが、だとしたら……)
ダッ!
『リベンジャー』が地面を蹴り、俺に向かって突進してくる!
(構えからして突進後、〈ヘビーエッジ〉へ繋げるつもりか!)
なら俺は……
ビュンッ!
俺が回避のために動こうとした瞬間、奴の動きが急に速くなる! そして、俺の動きを先回りするように剣を──
「〈バーストレイジ〉ッ!」
それを読んでいた俺はいち早くスキルを発動させ、『リベンジャー』の体勢を崩すと同時に反動で位置を変える。その結果、奴の剣は宙を切り、俺の攻撃は……
バシュッ!
〈バーストレイジ〉と〈大罪:憤怒〉の反動で俺は傷を負う。が、『リベンジャー』にはそれ以上のダメージを与えたはずだ!
「フン……」
今のやりとりで確信した。奴はスキルだけじゃなく、俺が今までの旅で得てきたものを全て使ってくる。だが、それは反対に俺が『リベンジャー』の動きを予測できるということでもある。
(つまり、俺が奴ならどうするかを考えれば良いってことだ)
さっき急にスピードが上がったのは途中で『レンジャー』にクラスチェンジしたからだ。
「……ちょっとは理解したか」
「……」
血を流しながら『リベンジャー』は何故か口元に笑みを浮かべている。一体何を考えているのか……
「だが、まだまだだ。まだまだお前は分かっちゃいない!」
抑えられない怒りが溢れ出しているかのように『リベンジャー』が俺に向かって勢いよく剣を振るう。
「何をだ!」
反射的にそう問うと『リベンジャー』は体をワナワナと震わせた!
「そう言うところだ! エドワード!」
ゴゥッ!
風を押しのけるようにして『リベンジャー』が俺に迫る! 今までとは比較にならない速度! これは……
(〈バーストレイジ〉を後ろに放ってスピードを上げた!?)
気づいた時には既に距離を詰められている。またもや俺の剣と奴の剣が交差する!
(ヤバいッ!)
いなして体勢を崩して距離を取ろうとするが、それは奴にもバレているようで上手くいかない。
(クソッ! 〈バーストレイジ〉が来る!)
ゼロ距離での〈バーストレイジ〉……喰らえば間違いなく俺の負けだ!
「闇に堕ちろ! 〈アウェキングシャドウ〉!」
なっ……そのスキルは!
『リベンジャー』の叫び :
さて、いよいよ次話で俺の正体が明らかになる。冒頭からここまで引っ張るなんて全く筆者は何を考えてるんだか……だが、奴も奴なりにこの展開については悩んだらしい。それが費やした時間に足るものになったかどうかは是非自分の目と心で確かめて見てくれ。
おっと、前も言ったがブクマとポイントは済んでるか? 戦いは激化する一方だ。流れ弾で痛い目に遭いたくなければポチッとしておくことを勧めるぜ! 何せヤバいスキルだからな、〈アウェイキングシャドウ〉は!




