心の問題
「まず、試合は妾達の勝ちじゃ。ディラン、お主が最後に放った例のスキルが奴らをまとめて倒したからの。ついでに会場も壊れて試合の進行は遅れておる。怪我の功名というやつかの」
会場を破壊……まさかそれほどの威力になるなんてな。修理をしてくれる人には申し訳ないことをしたな。
(でも、そうでなかったら既に大会は終わってたかもしれない……)
つまり、“怪我の功名”とはそう言う事だろう。人に迷惑をかけておいてこんなことを言うのは何だが……
(……あれ? でもケガは治ってるな)
頭に血が上り、クラスチェンジして〈バーストレイジ〉を発動したことは覚えている。が、俺の体は今大きなケガはしていないようだ。前に『リベンジャー』にクラスチェンジして〈バーストレイジ〉を放った時には身動き出来ないくらいの負傷していたんだが……
「怪我についてはまたエレナから説明してもらうとして、先に話さねばならぬことがある。実はそなたは三日三晩寝ておったのじゃ」
三日三晩……最初に『リベンジャー』にクラスチェンジした時もそれくらい寝込んだっけ。
(でも、今回はたった一発撃っただけて倒れるなんて……)
技の威力が上がったせいなのか、他の理由があるのかは分からないが……
「つまり、今は試合があった日から数えて四日目じゃ。ちなみに試合は明日行われる予定じゃ」
試合は明日……なら間に合ったのか。
(明日がいよいよアレクサンダーとの試合……)
ここまで長かったような、短かったような。だが、これでいよいよ決着がつけられ──
「じゃが、今のままでは試合には出られないじゃろう」
「なっ!」
思ってもなかった言葉を言われて起き上がる。するとその瞬間、前進に痛みが走った!
「っ!」
「動くなと言ったじゃろうに……じゃが、これで理由は分かるの?」
体中に巻かれた包帯にあちこちに血の染みが出来ている。さっき体を起こしたからこうなったのか?
“次、『リベンジャー』にクラスチェンジすれば俺の力はお前を超える。気をつけろ”
不意に『リベンジャー』に言われた言葉が脳裏を過ぎる。あの時は意味が分からなかったが、これが答えなのか?
「そのままでは生活さえままならぬ。クラスを『リベンジャー』から変えることは出来ぬか?」
「やってみるよ、ヘイゼル」
俺は心の中で”ステータス“と念じた。
◆◆◆
エドワード Lv14(リベンジャーLv2)new!
力 22
防御 21
魔力 14
精神 15
素早さ 20
スキル
〈大罪:憤怒〉
〈レイジバースト〉
〈アウェイキングシャドウ〉new!
◆◆◆
で、クラスを選んで……
◆◆◆
→リベンジャーLv2 new!
◆◆◆
えっ……『リベンジャー』以外のクラスが表示されない!?
「やはり駄目か……」
「ああ。何故か他のクラスがステータスに表示されないな」
ちなみにいつもやるように“クラスチェンジ”と念じてみても何も起こらない。何故かどうやってもクラスが『リベンジャー』から変更出来ないのだ。
(アイツが言ってたのはこう言うことなのか……?)
俺の力を『リベンジャー』の力が超えるとはつまりクラスチェンジが出来なくなるってことなのか!?
「なら、明日までにどうにかせねばならぬな。こうして案内も来ている訳じゃし」
ヘイゼルはそう言って次の試合の日時が記載された書類を渡してくれた。日時は明日の正午。窓から差し込む光から予測すると今は夜明け前だろうから、残る時間は一日と数時間と言ったところか。
「案ずるな。恐らく全ての問題は心の問題じゃ。時間はさほど大きな意味を持たぬ」
静かにそう言うヘイゼルの顔は怖いくらいに真剣だ。恐らく俺を落ち着かせるための言葉だったんだろうが、その表情を見ると、とてもじゃないが、安心は出来ない。
(けど心の問題ってことはつまり、オレの問題ってことだ……)
つまり、オレが何とかしないといけないってことだ。ビビってる場合じゃない!
「ふむ……闘志は十分じゃな。なら、何とかなるやもしれぬな」
「何か策があるってことか?」
反射的にそう問うと、ヘイゼルは困った顔をした。
「あると言えばある。が、ないとも言える」
まるで謎かけのような返答だ。が、ヘイゼルはこんな場面でからかうようなことを言う奴じゃない。俺は黙って彼女の言葉に耳を傾けた。
筆者の独り言:
あ、思わせぶりなところで終わってしまいました(汗) いや、次話ではちゃんと進みますからどうぞお許しを……
鋭い方は『リベンジャー』のクラスレベルが上がっていることに気づかれたと思います。新スキルについては次話でちょこっと明かされますのでお楽しみに……




