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リスク

(リスクだと? 知ったことか!)


 俺が“Yes”と念じながらアレクサンダーに斬りかかる。その瞬間、力が溢れてくるのと同時に心にある言葉が浮かんできた。


(これは……スキルか?)


 どんなスキルかは分からない。が、俺は直感した。これは俺の復讐を果たすためのスキルだと!


「死ねよ、義兄さんッ! 〈光速剣〉ッ!」


 アレクサンダーはそんな俺に余裕たっぷりな笑みを浮かべながら剣を構え、スキルを発動する。音さえ置き去りにする高速の斬撃。だが……


「〈バーストレイジ〉ッ!」


 スキルと共に斬撃をアレクサンダーの剣に叩きつける! その軌跡は俺の怒りを吐き出すように赤黒く光り……


 ズバッ!


 俺の剣がアレクサンダーの剣を叩き折り、更には奴の体を袈裟斬りにする。丁度アンドリューがされたのと同じように……


「なっ……ガハッ!」


 アレクサンダーがよろめき、膝をつく。追撃には絶好の好機だが、俺もまた膝をついていた。


(これが代償……か?)


 傷を負っていないというのに体中が痛む。だが、奴に止めを指す力は十分に残っている!


「はッ!」

「わ、わわわっ!」


 俺が再び振るった剣をアレクサンダーは地べたを転がって避ける。どうやら奴に負わせた傷はさほど深くないらしい。スキルと剣を叩き壊したせいで威力が減衰されたか……


「終わりだ……」

「い、嫌だ……僕はやっと、やっと!」


 命乞いにも似た悲鳴を上げるアレクサンダー。例え体の傷は浅くても頼みの綱のスキルを破られた精神的なダメージは相当大きいらしい。


(だが今更許しはしないぞ、アレクサンダー! お前は俺の大切な人を踏みにじったんだ!)


 俺は再び〈バーストレイジ〉を発動させ、斬撃をアレクサンダーに振るう……が、ダメージからか足がもつれてしまった!


 ズバババンッ!


 アレクサンダーから外れた斬撃が地面に叩きつけられる。丁度俺とアレクサンダーを隔てるように描かれたそれは底が見えないほど深い切り込みを入れた。


「ぐっ……」

「あっ……わわわっ!」


 再び姿勢を戻して剣を構えようとする俺に恐怖を抱いたのか、アレクサンダーが後ろへと後退る。


(死──)


 俺が再び剣を振りかぶったその時……


 ビシ……ビシビシビシビシッ!


 何かが崩れるような音に俺の手が一瞬止まる。しかし、それは次第に大きくなって……


 ビシビシビシビシ……ドッカーン!


 轟音と共に地面が割れ、俺の体は宙へと投げ出された!


「エドワード様ッ!」


 急速に遠くなる景色……最後に目に入ったのは落ちる俺へと手を伸ばすシャーロットの姿だった。


”くそっ……くそっ……“


 誰かの声がする。 


“あいつ、許さないっ! 俺の大切な人を傷つけやがって!”


 そうだ……アンドリューを助けなきゃ。まだ間に合う。急いで治療すればきっと……


”いつも……いつもアイツだ! アイツが俺から奪っていく!“


 ……いつも? 

 ……アイツってのはアレクサンダーのことか?


“許さない……許さないぞ……絶対に復讐してやるッ!“


 一体何のことだ……何を言って……



 次に目覚めた時、俺の視界に飛び込んで来たのは木漏れ日だった。


(……ここは?)


 どうも巨大な木の洞の中らしい。体に巻かれた包帯など手当てされているところを見ると、誰かに助けてもらったようだ。


「あっ! まだ駄目です!」


 起き上がろうとした瞬間、体に激痛が走る。再び倒れ込む俺の近くへ誰かが駆け寄ってきた。


「無理しないで下さい。まだ動いちゃ駄目です!」


 そう言って、俺に布団代わりの布をかけてくれたのは茶色の髪を長く伸ばした見知らぬ少女。


(この娘は……?)


 周りは粗末ではあるが、雨露をしのげるようにはなっている。多分、この娘が連れてきてくれたんだろう。


「ありがとう。君が俺を助けてくれたんだろう?」


「そんな、大したことは! それより何か口に入れられそうですか?」


「分からないが、試してみたいな。何から何まで済まない」


「気にしないで下さい。今起こしますね」


 少女の細腕に何故そんな力があるのかは分からないが、俺は上半身を起こされ、白湯のようなものを飲ませてもらった。


「大丈夫ですか?」


「ああ、飲みこむことは出来そうだ」


 俺の言葉を聞いて少女はほっと胸を撫で下ろした。


「良かった。でも、今はこれで我慢して下さい。あなたは三日間目を覚まさなかったんですから」


「み、三日!?」


 俺はそんなに長い間寝ていたのか!


「木がクッションになっていたので打ち身はさほど大したことはなかったんですが、至るところから出血していて……」


 そうだったのか……


(これがカースクラスとやらのリスクなのか?)


 凄まじいリスクだ。わざわざ警告が出るのも頷けるな。


「とにかく休んで下さい。私は食べ物を探していますから」


「ありがとう。そうさせてもらう」


 カースクラスのこと、アンドリューやシャーロットのこと、そしてこの少女のこと。気になることは色々ある。が……


(今は休むしかないか……)


 こんなに雑念だらけで寝られるのかと心配になったが、俺の意識は実にあっさりと閉ざされた。

???の呟き:

 よう。七話目にしてようやく登場だ……って俺が誰かは分からないか。俺はまあいわゆる裏主人公ってとこだ。俺の正体を考えながら読むのも楽しいかも知れないな。

 ……っと忘れるとこだった。ブクマやポイントがまだなら今直ぐにした方がいい。この筆者、テンションが上がると緊急更新しやがることもあるからな。

 ちなみに俺の出番はかなり終盤だ。でも、ちょこちょこ顔は出すから忘れないでくれよ!


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― 新着の感想 ―
意味深な謎の声。 今できる推測ですが、エドワードのクラス関連あるいは初代国王縁のモノでしょうか? 3日の間にどんなことがおきたのか、この少女は何者か。 急展開から更に物語は加速しそうで楽しみです。
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