窮地
「……ここは?」
白い光が収まった時、俺達は森の中にいた。
「あの王宮の部屋とは違う……邪印の爆発で位置がずれたのか?」
近くでヘイゼルがそう呟くのが聞こえ、俺はハッとして周りを見回す。
(エレナもオリヴァーさんもいる!)
良かった! ありがとう、マシン……
「マシンG?」
どこを見てもマシンGの姿がない。一体どこへ行ったんだ?
「ディラン、マシンGは……」
オリヴァーさんが何か言いかけるのをヘイゼルが止めた。
「身を挺して妾達を脱出させてくれたのじゃ。お主も分かってるはずじゃ」
そうだ。確かにマシンGはここでお別れだと、俺に前へ進めと言っていた。俺は最後に何の言葉もかけてやれなかったけど……
(マシンG……)
今の俺の心にはやるせなさに満ちていた。どうしてついてきてくれなかったのかという想いが次から湧いてくる。でも……
(マシンGは俺に最後まで尽くしてくれた。それを感謝しないと)
そう考えると、腹の底に何か重苦しいものが差し込まれるような感じがする。これは何だ? 悲しみか、それとも……
「悲しいのは分かる。じゃが……」
「分かってる。とりあえず宿へ戻ろう」
ヘイゼルの傷の手当ても必要だし、みんなまずは休まないと。
「ここは王都の近くの森か? こりゃ急がないと朝まで宿に戻れないぞ」
「急ぎましょう!」
俺はそう言うと、方角を調べるオリヴァーさんを手伝い始めた。そうすることで、マシンGを失った空虚感から目を逸らしたかったのだ。
*
(アレクサンダー、お前って奴は……)
明け方に宿に戻った俺達には例の試合の日程を知らせる手紙が届いていた。しかも、試合の日は今日の午前一番目の試合。俺達が宿に戻ってから僅か三時間後だ。
(俺達がアーティファクトを脱出したとしても不戦敗することを狙ったのか? どちらにしてもやり方が汚すぎるぞ!)
戻った俺達はほとんど休む間もなく試合に向かった。が、ずっとダンジョン探索をしたあげく宿まで歩いていた俺達は満身創痍だ。加えて……
「こいつらを倒せば釈放。しかも報酬がたんまり貰える……クククッ、ようやくツキが回って来たぜぇ」
「薬を飲んだ今の俺達に敵はいねぇ!」
俺達の相手はどう見ても普通じゃない奴らだ。だが、身のこなしを見ても強いことは間違いない。
(俺の大切な人を何度も傷つけておきながら、自分は高みの見物って訳か、アレクサンダー!)
アンドリューにマシンG、俺の大切な人達を傷つけたことは許せない。だが、それと同じくらいこんな汚い手を使ってくることが許せない!
「ヘイゼル、大丈夫?」
「ふん、このくらい……なんともないのじゃ」
そう強がるヘイゼルだが、彼女が限界なのは誰の目からも明らかだ。そしてそれは声をかけたエレナも同じだろう。何せ激戦後に夜通し歩いたのにロクに休めてもいないのだから。
「エレナはヘイゼルの護衛を。俺とディランで奴らを引きつける」
「で、妾の魔法で一網打尽じゃな。任せるのじゃ」
「無理は駄目だぞ、ヘイゼル」
俺はそう言って釘を刺す。が、俺とオリヴァーさんも万全からは程遠い。この試合、負けるわけにはいかないが、今の俺達でどこまでやれるのか……
「3.2.1……試合開始ッ!」
試合が始まった!
「うひゃひゃ、行くぜ!」
先頭を走る男から赤い雷が放たれる。こいつ、魔法を? いや、違う!
(遠距離攻撃用の魔道具! しかも凄まじい威力だ!)
俺達を飛び越えていく赤い雷を見て俺はさらに驚いた。狙いは俺達じゃない!
(後ろにいるヘイゼルを狙ってる!)
魔法を警戒したのか! くそ、やはりこいつら腕は立つな!
「がぁぁ!」
「うっ……」
不意を打たれたヘイゼルとエレナの悲鳴が聞こえる。ヘイゼル、エレナ、大丈夫か!
「ほら、こっちも行くぞ! 〈ブルストライク〉!」
「〈ヘビーエッジ〉!」
ヘイゼル達に気を取られた俺とオリヴァーさんに別の男達がスキルで攻撃を仕掛けてくる! 俺は何とか直撃は避けたのだが……
ドカドカドカッ!
崩れた体勢に掌打を浴びて思わず片膝をつく。くそっ、一体何をされたんだ!?
「流石禁制品の魔道具だな。良いもの貰ったぜ!」
「ほら立てや、コラァ!」
ドカッ!
蹴りを受けながらも俺は後退する。くそ………禁制品の魔道具だと! 反則じゃないか!
(アレクサンダーに渡されたのか? あいつはどこまで汚いんだ!)
込み上げる怒りを抑えつつ、俺は状況を確認する。俺のすぐ前に男が二人。オリヴァーさんも一人、相手にしている。押されてるな……
(……! 敵はもう一人いるはずだ!)
最初に魔道具で赤い雷を放った男はいつの間にか後退し、再び狙いを定めている。
(狙いはヘイゼルとエレナか!)
くそっ、させるか!
オリヴァーからの救援要請 :
くっ……こんなに分が悪い戦いは久しぶりだな。エレナやヘイゼルも心配だが、目の前にいる奴らも厄介だ。今は焦らずチャンスを待つしか……
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