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エトランゾ

(アレクサンダー視点)


 白い光が消えた時、義兄さんを呼び出した部屋の様子を映し出す水晶球には誰もいなくなっていた。


(よし! これで!)


 母様から頂いたアーティファクトは完璧に発動した! これで義兄さんはもうこちらの世界には帰って来られない!


「……とりあえず一段落といった感じでしょうか」


 目の前にいる女が手をかざすと、水晶球に映っていた映像が切り替わる。城の大広間くらいの広さの部屋には消えた義兄さん達の姿がある。つまり、今映っているのはアーティファクト、『エトランゾ』で作られた亜空間の中って訳だ。


「では、行って参ります。念の為に彼にも声をかけますが、よろしいですか?」


「ああ。明日僕の試合はないからな」


 この女が言った“彼”とは僕のサポートを勤める男のことだ。”彼“とこの女は母様から紹介された俺のチームメイトなのだ。


「しかし、本当に二人も必要なのか? 明日の夜明けまでに出口にたどり着けなければ永遠に出られなくなるんだろ?」


 母様から頂いたこのアーティファクトが作る亜空間は三層構造のダンジョン。それぞれの階には罠や妨害用のゴーレムに加え、出口の前には階層守護者──つまり、ボスだ──が陣取る部屋があるのだ。


(まあ、小規模なダンジョンってとこだな)


 小さいとはいえ配置されたゴーレムや罠はかなりの性能で、母様はC級冒険者のパーティでも攻略には半日はかかると仰っていた。だが、このアーティファクトの出口は朝日と共に消える。つまり、後七〜八時間しかないってことだ。


「念には念を……ということですよ。剣聖アレクサンダー様の覇道を邪魔する者は確実に始末しなければなりませんから」


 ちなみに階層守護者になるものはこのアーティファクトの中に入る必要はなく、予め配置されたゴーレムを操るだけでいい。つまり、自分が傷つくことなく戦えるということだ。まあ、義兄さんが僕のサポートに勝てるとは思えないけど……


「確かにな。なら、任せた。僕はシャーロットの元へ向かう」


 僕の前で他の男と──よりにもよって義兄さんと踊るなんて──あの女、ただじゃおかないぞ!


「焦りは禁物ですよ、剣聖様。少なくとも婚姻までは手荒な真似はいけないと王妃様も……」


「分かってる」


 母様のお言葉に僕が背く負けないだろ、この馬鹿女が!


「では、私はこれで」

「ああ。頼んだぞ」


 さて、後はいかに自然に義兄さんに消えて貰うかだな。ま、やり方なんていくらでもあるけどな……


(ディラン視点)


 ザクッ! ドガッ!


 行く手を阻んでいたゴーレムが倒れる。よし、これでとりあえず全部倒せたな!


「おミゴトです、エドワードさま!」


 ソードモードに変形したマシンGがそう声をかけてくれる。が、喜んでばかりはいられない。何故ならタイムリミットがあるんだからな。


「次はどっちなのじゃ?、Gよ」


 少し進むと十字路にさしかかり、ヘイゼルはマシンGにそう尋ねた。


「ミギへのルートをスイショウします」

「右だな、分かった」


 先頭にいるオリヴァーさんはそう言うと、襲撃に警戒しながら進み始めた。隊列はオリヴァーさん、ヘイゼル、俺、エレナの順だ。俺が真ん中なのはマシンGと協力してマッピングをしているからだ。


(『シーフ』の新スキル、〈忍び地図〉が早くも役に立つとはな……)


 アレックスとの修行で〈忍び足〉の熟練度が上がり、覚えたスキルだ。頭の中に地図が浮かんでくるスキルなのだが、これに加え、マシンGが解析したこのアーティファクトの情報を合わせることで俺達はあまり迷うことなく進むことが出来ていた。


「しっかし、舞踏会の次はダンジョン探索とはな。世の中何があるか分からないものだな」


 オリヴァーさんは隠し持っていた短剣で戦っている。この準備の良さを見ると、口ではこう言っていてもあまり驚いてないようにさえ思えるな。


「全くじゃ。まさかまた同じようなアーティファクトに囚われる羽目になるとはのぅ」


 ヘイゼルの方はボヤキに近い。そういや、前に“アーティファクトのせいで酷い目にあった”とか言ってたっけ。


(けど、そのおかげで脱出までのタイムリミットが分かったな)


 この空間に飛ばされてから現れたステータス画面のようなものにはカウントダウンされていく数字が表示されている。ヘイゼルのおかげでこれが脱出までのタイムリミットであることが分かったのだ。


(後七時間半弱で全三層のダンジョンをクリアする、か)


 だが、やるしかない。ここから脱出し、今度こそアレクサンダーと決着をつけ、シャーロットとアンドリューを取り返す。そう誓ったんだ!


「しかし、こいつらは中々硬いなぁ。こいつじゃあまりダメージは通らないな」


「私も戦力外かもしれません……」


 ゴーレム達の体は硬いため、オリヴァーさんの短剣やエレナの拳は通じにくい。おまけに奴らはずんぐりむっくりな体に見合うように耐久力も中々のもの。二人の攻撃では倒すのに時間がかかるのは間違いない。


「何事にも相性というものがある。それにそなたらが引きつけてくれれば、妾やディランが止めを刺しやすくなるのじゃ。役割分担をしていこうぞ」


 ヘイゼルの言う通り、ダメージはあまり通っていなくても二人のおかげで俺やヘイゼルは凄く攻撃しやすくなっている。


「そうか? なら良いんだが。マッピングはディランがやってくれてるなら俺は罠がないか警戒するか。簡単なやつくらいなら見抜けるしな」


「私は敵を警戒しておくね」


「頼むのじゃ。罠もゴーレムは生命反応がないから感知しにくいのじゃ」


 感知も相性ってのがあるんだな。


(まあ、何でも完璧なんてものはないよな)


 誰でも得意不得意がある。だから助け合うんだ。そして、それが出来るチームは強い。


(待ってろよ、アレクサンダー! 絶対全員で脱出してやるからな!)


 

 警戒しながらダンジョンを進みつつ、ゴーレムと戦うこと二〜三時間。俺達は大きな扉の前にたどり着いた。


「む、今までとは様子が違うな」


「……でーたカイセキ。オソラクぼすノへやデス」


 ボスか……ますますダンジョンだな。


「ってことはいよいよこの階は終わりってことだ」


「ええ、行きましょう!」


 オリヴァーさんにそう応え、俺は扉に手をかけた。一体どんな化け物が出てくるのかは分からない。が、俺達は絶対負けない!

アンドリューの知恵袋 :

『エトランゾ』 

 一般にアーティファクトと呼ばれる古代に作られた魔道具の一種。発動すると事前に指定された空間にいる人間を設定された亜空間に転移させる。転移させる亜空間は様々だが、必ず脱出するための条件があると言われている。アーティファクトの中でもかなり珍しく、王族であっても手に入れることは相当な幸運が必要な代物。


筆者の独り言

 ゴーレムと戦い、ディランはちょっとレベルアップしました。最近ステータスを出せてなかったのでこの機会に公開させて頂きます。


◆◆◆


エドワード(ディラン) Lv12(シーフLv2)

力   20

防御  19

魔力  13

精神  14

素早さ 19(+5)

※クリティカル率が上昇


スキル

〈盗賊の道〉

〈忍び足〉

〈忍び地図〉


◆◆◆


 え? 何故本文でやらないのかって? 何か入れられなかったんですよね……


*ブクマやポイントがまだの方はこの機会に是非ポチッとしてやって下さい。そうすればきっと次話もハイテンションで書けると思いますm(_ _)m

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