企み
時間は少し戻って裏でこそこそやっていたサイラスくんの話です。
(サイラス視点)
ドッカーン!
「ぐわぁぁ!」
シオドアが悲鳴を上げながら吹き飛ばされていく。くそっ……一体何が起こってるんだ!
(あの世間知らずの新人に一泡吹かせてやろうと闘技大会に参加したってのに!)
本戦の第一回戦がバトルロイヤルと聞き、裏金を払ってあのディランとかいうド素人と同じ組に入り、念には念をいれ何組かの冒険者を買収したまでは良かった。だが、始まると同時に衝撃波やらなんやらが飛び交う地獄が展開されたのだ!
(この凄まじい攻撃の嵐……一体何者なんだよ!)
攻撃は同じ方向から放たれている。つまり、あるチームが周囲を一方的に攻撃している可能性が高い。
(余波だけでシオドアもマイロもやられた……一体何が起こってるんだ!?)
裏金を掴んで聞いた話ではどの組でも実力が拮抗するように冒険者ランクや実績を加味してあると聞いた。なのに何だよ、この一方的な展開は!
(だが、諦めるわけにはいかねー! あのド素人にD級冒険者サイラス様の力を見せつけるまではな!)
本来ならば先に行くまで取っておきたがったが……仕方ない!
「アデラ、あれをやる! フォローは頼んだ!」
「分かった! 気を付けて!」
俺は腰からポーションの瓶を取り出すと、ぐいっと一口で飲み干した。すると……
(くくく……力が湧いてくるぜ!)
俺が飲んだのは一時的に力が増す魔法薬。この大会では使用が禁止されているが、俺は係員に金を払って持ち込んだのだ!
ビリッ……ビリビリ!
隆起した筋肉で所々衣服が避ける音がする。これだけのパワーがあれば誰が相手でも負けはしない!
「行くぞ! 喰らえッ!」
剣を振るって突進したその瞬間……
ドッカーン!
爆音と共に俺は意識を失った。
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「……ラス選手、失格です!」
誰かが何かを叫ぶ声で意識が戻る。くそっ……一体何が
「おい、目を覚ましたぞ」
「うわっ……運のない奴だ」
どうやらまだ試合は終わったらしく、倒れた奴らのところに大会の係員が介抱に向かっている。
(くそ……結局あの世間知らずに力を見せつけてやることら出来なかったか)
しかし、この様子じゃ奴らも何処かで伸びてるだろう。悔しいが、痛み分けってところか……
「おい、立てるか?」
「……ああ」
頭はまだ少しぼんやりするが、立つくらい問題ない。
「お、おい!」
「……今、布か何かを取りに行ってやるから待ってろ」
立ち上がった俺を見て側にいる係員が焦った声を上げる。何だ……? 何を言ってるんだ?
「だっはっは! あいつ、まだ気づいてないぞ!」
「裸の王様ならぬ裸の負け犬ってところだな!」
は……?
(裸の……何だって?)
ヒュゥゥ……寒っ!
その瞬間、風が吹いてきた。それは俺の素膚を撫でて……って、おい!
(服が……ない!)
慌てて体を両腕で覆う俺を見た観客はどっと笑い出した!
「おいおい、今更かよ!」
「別に見たくないから! 隠さなくても大丈夫だぞ!」
「いや、隠せ! 汚物は目に毒だ! あっはっはっは!」
く、くっそ……破けた服が爆風で飛んで行ったのか!
「おい、早──」
着るものを要求しようとした次の瞬間、俺の耳に信じられない知らせが聞こえてきた!
「Eブロックの勝者はディランチーム! 圧倒的な実力で文句なしの圧勝です!」
な、何ぃ!? あの世間知らずが勝者だと!
(じ、じゃああの信じられない攻撃はまさかあいつのチームの……)
そんな馬鹿な……一体何がどうなってるんだ……
筆者のつぶやき :
読んで頂きありがとうございました。“この回いらないんじゃないか……?”と思ったのですが、サイラスがどうしてもというので……いや、嘘です。次話からはディラン視点に戻ります! ”サイラス頑張れ!”、“もう出てくんな!”等々思われる方は是非ブクマやポイントでのエールをお願いします。えっ、勿論既に終わってる? ありがとうございますっっっ!




