こころと想い
(ヘイゼル視点)
「ふーむ……うんともすんとも言わんの」
「マリョクはんのうナシ……」
ディランがセオ爺とやらのところへ行っている間、妾は例の本を調べているのじゃが……これが予想外に厄介な代物じゃった。
(妾では何をしても反応せん……やはりディランでないと駄目だということか?)
ディランでないと反応しない、それはつまりクラス持ちにしか発動出来ないのじゃろうな。
(しかし、一体どうやってクラス持ちかどうか見分けてるのじゃ? いや、それよりも……)
謎は尽きん……が、妾ではどうやっても発動させることは不可能じゃろうな。
「まさかこんな厄介なアーティファクトがあったとはな……」
「でーたベースケンサク……ガイトウはナシ」
妾の呟きに律儀にディランのもう一つのアーティファクトが反応する。実はこいつも妾が頼んで置いて行って貰ったのじゃ。
「……しかし、よく考えればそなたも十分規格外よの。こうして会話出来るアーティファクトなど聞いたこともない」
いかに古代の技術とはいえ、そんなことが安々と出来るとは思えぬが……
「ワタシはアンドリューサマよりキオクのコピーをアズカッテおります」
「なるほどの」
それなら一応説明はつく。じゃが、そんなに簡単な話ではない。アーティファクトが高い性能を持っていることに加え、発動した者によほど強い想いがなければこんなことは起こらんじゃろう。
(このアーティファクトをディランに送った者は相当な忠義者よな)
確かにアンドリューとか言ったか。一度会ってみたいものじゃ。
「シカシ、ワタシのキオクはタダのコピー。ワタシはアンドリューサマのマネごとをシテイルにスギマセン」
ふむ。確かに理屈はそうじゃな。
(こやつは自分で感じ、考えるのではなく、与えられた記憶を元に行動を決定するシステムで動いておるのじゃからな)
いわゆる心とか魂とかがこやつの中にあるわけではない。しかし……
「別にそこまで自分を卑下することもなかろう? 他者の記憶のコピーがそなたの中にあったとしても、それは今はそなたの物なんじゃからな」
「ワタシのモノ……」
「そうじゃ。それに今はそなただけの記憶もあろう? それはもうコピーではなく、別個の存在だということじゃ」
表情がない分、妾の言葉をどう感じたのかは分からん。が、何となくこのアーティファクトは今、戸惑っているように思う。それこそまさに心を持つ者の特権じゃ。
「アルゴリズムはたん……リカイふのうデス」
「構わん。ゆっくり考えると良い」
ふむ。混乱させたかの……?
「ワタシはエドワードサマのタメのドウグ。ドウグにココロはナイノデハ?」
こやつ、面白いのぅ……何て生真面目な思考じゃ。これはこやつの創造主の影響かの?
「人も動物も何かに従って生きている。ならばそれと心の有無は関係あるまい?」
そう。誰かに従っているかとか、自分が何者に生まれたかどうかなど些末なこと。本当に大切なのは……
「心があるかどうか、人であるかどうかは自分で決めるものじゃ。アーティファクトだとか、人間だとかは関係ない」
「ソンナ……いや、シカシ……」
「そうじゃ。人として生まれながら自らを人とは思わずに生きている者もおる。悲しいことじゃがな」
自分を人だと、皆と対等な人間性だと思えていないと周りからもそのような扱いを受ける。そうすると後は悪循環じゃ。まあ、よくあることじゃが。
「ワタシはエドワードサマのシモベであり、ドウグ。エドワードサマのタイシのため、コノミをオササゲするタメにここにイマス」
こやつの思考、単に記憶をコピーしただけとは思えぬレベルじゃな。
「そのエドワードはお主をどう扱ってる? 道具か? それとも大切な仲間としてかの?」
「シカシ……そんなフソンなこと……」
「不遜も何もそなたの主人がそう考えてるのじゃ。それを否定する方が不遜じゃろ」
「……」
ふむ、考えこんでしまったか。まあ、良い。
(ディラン、お主は中々の幸せものじゃの)
これからディランに降りかかる運命、それは妾にさえ見通せないほど大きく、深いうねりの中にある。おそらく生半可な力では切り抜けられまい。だが……
(お主には仲間がおる。これほどまでに想ってくれる仲間がな)
想いの力で全てが解決するわけではない。が、想いなくしては何事も達成できぬものじゃ。
(お主は一人ではない。そのことを決して忘れるでないぞ、ディラン……)
いつか本当の窮地に陥った時、この絆がお主の導きとなるはずじゃからな……
筆者の呟き :
長々と……そしてグダグダと……さらには思わせぶりなことばかりで申し訳ありませんm(_ _)m これも次の展開に微妙〜に関わりがあることでして(汗)
要はマシンGとヘイゼルはディラン不在の間に色々話して少し距離が縮まりました、というくらいの認識でオッケーです!
……え、ならもっと短くなるはず? ええ、ご尤もです(汗)




