心の影
(とりあえず考えてみるか……)
正直納得はしていない。が、目の前の俺はともかく、幻獣であるヘイゼルまでこう言われると無下には出来ないな。
「ところであんたはどのクラスなんだ? それに『リベンジャー』は?」
俺が目の前の普通の服を着た男の方を向き、そう尋ねると、彼は苦笑いをしながらこう応えた。
「私のことはすぐに分かる。だが、『リベンジャー』はお前が自身の影と向き合わねば対話は出来ないだろう」
俺の影……?
「それってどう言う……」
詳しく聞こうとしたその時、白い靄がだんだん濃くなっていく。いや、もっと前から濃くなり始めていたのだろうか。とにかく目の前にいたはずのターバンを巻いた俺も特徴のない格好をした俺も靄に包まれ、姿が見えなくなっていって……
*
「ッ!」
気がついた時には俺は宿の部屋に戻っていた。目の前にはアンドリューから受け取った初代国王の手記がある。
(時間はさほど経ってないみたいだな)
窓から空を見てそう思う。あの空間でのやり取りは密度が濃かったからかなり長い間いたようにも感じたのだが。いや、もしかしたらあの空間では時間が経過しないのかもしれないな。
(……とにかく調べておくか)
ざっと目を通すと、やはり内容が変わってる。具体的に言えば、クラスについてより詳しく書かれているのだ。
(“クラスは自分の可能性そのものであり、自分の一部”、”クラスを使いこなすということは自分を使いこなすということ“……)
あの不思議な空間でのもう一人の俺とのやり取りで知ったことについての記述が増えている。恐らく何らかの条件で開示される情報が増えていくのだろう。
(何のためにそんなこと……初めから全部書いておいてくれればいいのに)
そんなことを考えながらページをめくっているうちに俺は遂に探していたページにたどり着いた。
(あ、あった!)
探していたのはダーククラスについての記述だ。前見た時には何処を探してもなかったんだから、今回新たに現れたんだろうな。
◆◆◆
ダーククラスについて
心に影を抱えし者、いずれそこに行き着くが、その力は持ち主を振り回す。
◆◆◆
み、短っ! それに……
(心の影って何だよ)
影……何だかあまり良い感じがしない言葉だが。一体どう言う意味なんだ?
「ディラン、大丈夫か!」
「わっ、ヘイゼル!」
突然ヘイゼルがドアを蹴破る勢いで部屋に入って来た!
「怪我は? 何か異常はないか?」
「ちょっと待て、ヘイゼル!」
俺をベッドに押し倒して身体をあちこちと調べ始めるヘイゼルに俺は本気で焦る。いや、心配してくれてるのは分かってる。焦っているのは彼女の行動じゃなくて……
「……良かった。特に異常はないようじゃの。どうやら悪質なアーティファクトではなかったようじゃな」
「あの、ヘイゼル……」
「何じゃ? 別に大袈裟ではないぞ。アーティファクトは古代の遺産。そこら辺にある魔道具とは違い、莫大な力を持っとる分、危険も大きい。妾も一度痛い目に……」
「そうじゃなくて!」
長くなりそうだった話を遮って俺が声を上げると、ヘイゼルが不思議そうな顔をして俺を見た。
「どうしたんじゃ、ディラン? そんなに焦って?」
「……とりあえず服を着てくれないか?」
「あ、着替えの最中だったことを忘れとった」
そうやって頭をポリポリかくヘイゼルは下──いや、何も言うまい。とりあえず言う通りに服を着始めたのだが……
「すまないが、後ろを向いてやってくれないか?」
「……注文が多いのう」
文句を言いながらもヘイゼルは着衣を改めてくれるのだが……この編は幻獣と人間の感覚の差なのかな? いや、もしかしたらヘイゼルが色々と無自覚なだけかもしれないけど。
ヘイゼルのつぶやき:
全くディランはかたいのぅ……若いんだからもっと勢いで動いても良いんじゃないかとおもうのじゃが。
おっ……そなたはまだブクマとポイントを入れておらぬと見た。慎重さは美徳じゃが、ここは勢いにのってポチッとしてしまうのがオススメじゃぞ! ここからも見どころ満載じゃから是非頼む!




