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予期せぬ出会い

「「「!!!」」」


 声がした方を振り向くと、そこには老人が一人立っている。見た目は何のこともない普通の老人だが……


(嘘だろ! 誰もいなかったはずだ!)


 五感に優れたエレナや幻獣であるヘイゼルさえも気づかなかったとなると普通の老人であるはずがない。一体何者なんだ!?


「おっと、脅かしてすまん。相手の死角に入るのが癖になっておってな」


 死角に入る……そんなことが出来るのか? いや、出来るから今まで俺達は気付けなかったのか?


「セオ爺!」

「ジョシュア、話は聞いた。大変だったな」


 少年が老人にしがみつく。どうやら知り合いらしい。


「遺跡の攻略に思ったより時間がかかってての。様子を見に来たんじゃが……正解じゃったな」


 ……ってことはこの少年達が所属していた組織の人か。


「この子が迷惑をかけてすまなかった。そして、寛大な対応に感謝する」


 老人は尚も泣きじゃくる少年の頭を撫でながら引き剥がすと、俺達に頭を下げる。どうやら最初から見てたっぽいな……


「いえ。盗まれたものも返って来たのでお気になさらずに」


 マシンGも帰ってきたし、気になっていた少年達の処遇も解決しそうだし、まあこれで一件落着ってやつかな。


「いやいや、そう言う訳にはいかん。迷惑をかけ、恩義も受けた。何の報いもなしというのは筋が通らん。少し時間はかかるが、必ず礼はさせて貰う」


「いや、そんな……」


 手を振って断ろうとしたその瞬間、老人は両手を合わせて再び頭を下げた。


「じゃからすまんが、ついでにもう少し手を貸してはくれんかの?」



 老人と少年──それぞれセオさんとジョシュアという名らしい──と共に少女を連れて宿に戻った。


「……」


 清潔にした後、ベッドに寝かせてエレナが〈気功術 : 木〉を発動する。が、やがて残念そうに首を振った。


「生命力が落ちてる。〈気功術 : 木〉は相手の回復力を高めるスキルだから今の弱った状態じゃあまり効果がないみたい……」


「先に毒をどうにかしないといかんか」


「そなたにはどうにか出来んのか」


 ヘイゼルの言葉にセオさんは首を横に振った。


「残念じゃが、毒は儂の専門外じゃ。それに恐らくこの毒はあやつのオリジナル。解毒剤が店で手に入る可能性は低いじゃろうな」


 あやつと言うのは、留守を任されていながら反乱を起こし、本部からジョシュア達を追い出した幹部のことだ。セオさんには大体相手の目星がついてるみたいだな。


「そんな……」


 エレナはセオさんの言葉にショックを受けながらも再び〈気功術 : 木〉を発動する。恐らく少しでも体力を回復させるつもりなんだろう。


「案ずるな。手はある。じゃが、ちと面倒なことになりそうじゃの……」


「あの……」


 考え込むセオさん、弱々しい呼吸を繰り返す少女にうなだれたジョシュア。その光景を目の当たりにした俺は思わず口を開いた。


「俺に何か出来ることはありますか?」



 ちなみにエレナには賛成されたが、ヘイゼルには“本当にお人好しじゃな! ま、だからこそ妾も助けられた訳じゃが”と笑われた。


(“王族たるもの、常に弱者を思いやるべし”ってのは母とアンドリュー教えの一つだけど……) 


 だが、それを思い出すより早く俺は口走っていた。正直あの光景が見ていられなかったのだ。 


(まあ、引き受けてしまったものは仕方ない。切り替えていこう!)


 幸い、エレナもヘイゼルも協力してくれるんだ。何とかなるだろ。


(とりあえず、手伝いまでまだ時間がある。これをもう一度見ておくか)


 俺はマジックポーチから初代国王の手記を取り出した。アンドリューから渡されたこれは何と初代国王直筆のオリジナル。さらに何故か今は書かれている内容がクラスやスキルについての説明へと変わっているのだ。


(不思議な本だよな……これもクラスによって得た力、なのかな)


 初代国王は俺と同じクラス持ちだったらしい。もしかしたら、この不思議な本もクラスによるスキルで作られたものかもな。


(とにかく調べてみるか)


 ダーククラスとは何なのか。今はこの本だけが手がかりだ。


(もうすぐ予選は終わり。そしたら三週間後に本選開催……時間はあるようでないからな)


 本を開いた瞬間、俺の視界は真っ白に染まった!


(なっ……)


 視界が戻ると同時に俺は白い靄で包まれた不思議な空間にいた。


(ここは何処だ……?)


 キョロキョロと周りを見回して見ると、不意に肩を誰かに掴まれた。


「ディラン、妾じゃ」

「ヘイゼル、何でここに?」


 俺の肩を掴んだのは別室で休んでいるはずのヘイゼルだ。一体どうなってるんだ?


「従魔契約の影響じゃな。そなたの魂が別の空間に飛ばされた余波を妾も受けたんじゃろう」


「別の空間……?」


「そうじゃ。一番ありそうなのは強力なアーティファクトを使ったとかじゃが……何か心当たりはないかの?」


 アーティファクト? 俺は単にアンドリューから渡された手記を開いただけだが……


 コツン……コツン……


 誰かが近づいてくる!


「油断するな、ディラン! 複数くるぞ!」

「ああ!」


 白い靄の奥から現れたのは……

アンドリューの知恵袋

 アーティファクトとは古代の魔法使いが作ったとされる魔道具を指す言葉。古代の魔法使いによって作られた魔道具は強力かつ現代では再現不可能な機能を持つものが多いため、このように呼ばれる。アーティファクトは非常に数が少ないため、その存在を知っている者も限られている。


セオ爺からのお願い :

 随分お人好しな若者じゃな……まあ、手は借りるが礼は必ずさせて貰うからの。それにしてもやはりこうなったか。さて、どう落とし所をつくるかのぅ……

 何だか先が気になってきたじゃろ? もしブクマやポイントがまだならポチッとして明日の更新を待つのが良いのじゃ。

 


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