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禁じ手

 後一押し……後一押しで押し勝てる!


(けど、俺にはもう……)


 スキル、魔法、技術……俺は今の一撃に全てを込めた。これ以上一体何を……


(……そうか)


 まだある。

 まだ俺にはこの一撃に乗せられるものがある……


(簡単には使わないと誓った。けど……)


 今はもうあの力を使うしか……


(……クラス変更)


 今度は誰かを傷つけるためじゃない。目の前の命を救うために力を貸してくれっ!


(『リベンジャー』ッ!)


 その瞬間、体の奥底から力が湧いてくる。俺は溢れる力で更に深くルーンブレイドを押し込んだ!


 メリメリ……ピシピシ……


 体が軋む音と紫の鎖にヒビが入る音がする。よし……このまま行けば……


「ディラン、鎖が!」


「マリョクハンノウぞうだい! エドワードサマッ!」


 ヒビが入った紫の鎖が蛇のように暴れ出し、俺を締め上げようと襲いかかって来た! 


「むぅ……この呪い、まだ解けぬか!」


 しぶとい呪いにヘイゼル様が唸る。が、呪いと相対する俺には分かっていた。これは最後のあがきだと。この呪いは自分が消える前に少しでも多くの命を巻きぞいにしようとしているのだ。


(……そうはさせるか)


 ここまで来たんだ……ヘイゼル様は絶対に助けて見せるッ!


(これが本当に最後の手段……)


 俺は遂にあのスキルを使う覚悟をした!


「これで最後だ! 〈バーストレイジ〉ッ!」


 その瞬間、視界が真っ白になった……



(……ここは?)


 白い光が収まった後、俺は薄暗い小部屋にいた。地下牢のようなその場所は月明かりさえ僅かにしか差し込んでこない。


「どうして……」


 突然後ろで声がする。振り返るとそこには俯いて座っている少年がいた。


「君、こんなところで何──」


 そう言いかけてた俺は粗末な服からのぞく少年の体に傷があるのを見つけ、思わず息をのんだ。


(これは……)


 しかも、少年の体にあるのはただの傷じゃない。鞭を打たれて出来たミミズ腫れに何かで殴られたような酷い青痣……どれもこれも酷い虐待の跡だ。


「どうしてこんな……」


 眼の前の少年は体格から見て精々五〜六才と言ったところだろう。そんな年端もいかない少年が何故こんな目に……


 ピク……


 今まで俯き、なんのリアクションも示さなかった少年が俺の声に気づき、体を震わせた。


「どうして……?」


 少年は俺がさっき言った言葉を繰り返した。


「“どうして”だと……それをお前が言うのか、エドワード?」


 少年の声に混じる苛立ちに俺は少なからず動揺する。何故だ……何故この少年は怒ってるんだ?


「どうして俺がここにいて、どうして俺がこんな目にあっているのか……それをお前は知らないと言うのか、エドワード」


 かすれた少年の声は物音で消え去りそうなくらい小さい。が、聞き落とすことはない。何故なら耳にこびりつきそうな迫力に満ちていたからだ。


「ふざけるなよ……全てお前のせいだろうが!!!」


 その瞬間、再び白い光が視界に満ちた!



 ピシ……バキバキバキバキッ!


 白い光が消えた時、俺の目と耳に入ってきたのはまさに今、壊れて消えていく紫の鎖だった。


(遂に……やった)


 俺の手からルーンブレイドが離れ、地面に膝をつくのと同時に紫の鎖はバラバラに千切れて霧散した。


「ディラン!」 「エドワードサマ!」


 エレナとマシンGが駆け寄ってくる。だが、正直今の俺に二人に応える力どころか体を支えることさえ……


 ガシッ


 崩れるように地面へ倒れそうになった俺の体を二人が支えてくれた。


「この傷、まさかダーククラスの……とにかくこれ飲んで」


 俺の体を見て全てを察したエレナは険しい顔をしながらもポーションを飲ませてくれた。緊急クエストのために持ってきた最後の一本だ。


 じわわわ……

 

 すぐに体が暖かくなり、一気に疲れが消えていく。


「ディラン、まだ動いちゃ駄目だからね」


 起き上がろうとしたんだが、傷を調べているエレナにそう釘を刺され、身動きを止めた。険しい表情を見るに、今回は寝込まなかったから大丈夫……って訳にはいかなさそうだな、こりゃ。って


「おおっ……呪いが」


 ヘイゼル様は弱々しく体を動かしながら呪いが完全に解けたことを確認している。どうやら呪いは解けてもダメージは残っているようだ。


「そちには何と礼をいったら良いか……とにかく礼を言うぞ、ディラン」


「一か八かでしたが、お役に立てで良かったです」


 頭を下げるヘイゼル様を制しながら俺はそう言った。実際、今回上手くいったのは俺の力というより運の要素が大きいな。


(それにみんなの力のおかげだ)


 エレナのスキル、マシンGの持ってきてくれたルーンブレイド……そのどれが欠けても上手くいかなかっただろう。


(……それにダーククラスの力も)


 そう思った時……

???の嘲笑:

 ハハハッ! 遂に使いやがったな! おかげで後書きに出てこれたぜ! と言ってもこんなもので満足してやるつもりはないがな! いずれ俺は……おっと、この先はまだ話すわけにはいかねぇな。危ない危ない。

 ところで俺の正体は分かったか? いや、分からないよな。ちなみに筆者はこの時点でようやく俺の正体に気づいたらしい。鈍い奴だよ、全く……

 情報は小出しにしていくが、まあ”なんだろうな〜“ってな感じで気楽に考えるくらいが丁度良いと思う。推理小説じゃないからな。ただ、俺の登場はかなり飛び飛びだから見逃さないためにもブクマとポイントはポチッとしておくことを勧めるぜ!

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