魔剣ルーンブレイド
突進してくるオーガはかなりのスピードだ。が、エレナは既に狙いをしっかりと定めていた!
「マドウほうジュウテンカンリョウ、ウテます!」
「いっけぇぇ〜!」
ドッカーン!
キャノンモードのマシンGが放った砲撃がオーガの頭部を消し飛ばす!
(頭部を破壊されればいくらアンデッドでも一時的に動けなくなる!)
よし、これで……
「魔を宿せし剣よ、いまこそ力を解き放て!」
二人を信じていた俺は既に準備万端! 手にある魔剣は俺の詠唱を聞き届け、力を開放した!
ザワッ……
アンドリューが送ってくれた剣は魔剣ルーンブレイド。この剣は魔法を込めることで斬撃を強化出来るのだ!
「行くぞッ!」
ダッ!
素早さに補正がかかるレンジャーでの突進! そして、懐に潜り込んだ瞬間……
(クラスを『剣士』に変更!)
突進で得たスピードを全て剣に乗せて振るう! だが、勿論これだけじゃない!
「〈ヘビーエッジ〉ッ!」
スピードを乗せた斬撃をスキルで更に強化……そして
ザク……
インパクトの瞬間……ルーンブレイドに込められた魔力が炸裂する!
ザクザクザクザクザクザクッ!
俺が込めたのは僅かばかり回復した魔力でやっとこさ発動した〈ホーリーレイ〉。だがこの魔法、アンデットには効果バツグンだ!
パキッ……
まるでバターを裂くように進んだ剣に硬い何かを砕く感触……やったぞ、核を破壊した!
「ァ……アアアアアア」
いつの間にか再生していた顎から奇声が上がると共に灰化が始まる。よし、勝った……
バタ……
「ディラン!」
「エドワードサマッ!」
横倒しになった視界で俺は自分が倒れたことに気がついた。それと共に襲ってきた頭痛とめまいのせいで俺は意識を手放した……
*
「ディラン、起きないな」
……この声は
薄目を開けると、日の光と共に建物の天井らしきものが目に入った。
(ここはオーロラの村か……)
気を失った後、マシンGかエレナに運ばれたんだろう。部屋の隅にはスリープモードのマシンGがいるな。
(オーガは倒したんだよな……ってオリヴァーさんは!)
ぼんやりしていた頭が一気に起き、俺は体を起こす。オーガに吹き飛ばされたオリヴァーさんを助けないと!
「ディラン、気がついた?」
エレナがそう言って声をかけてくる。そして……
「元気そうだな、ディラン。安心したよ」
「オリヴァーさん!」
俺の隣のベッドにはオリヴァーさんが横になっていた。
「怪我は大丈夫ですか?」
「大丈夫……と言いたいところだが、しばらくは動けそうにないな。ま、あのオーガの直撃を受けて生きてるんだ。文句は言えねぇよ」
オリヴァーさんは口調は軽いが、全身を包帯でグルグル巻きにされた痛々しい姿だ。何とか出来れば良いんだが……
「私のスキルじゃ応急手当程度しか出来なくて……でもオリヴァーさんが持ってた魔道具で冒険者ギルドに連絡したからヒーラーの人が来てくれるよ!」
そっか……回復魔法をかけてもらえば大丈夫か。
(何だか、オリヴァーさんだけ怪我を負わせてしまって申し訳ないな……)
今回、オーガ戦ではオリヴァーさんが前衛だったからな。この怪我は俺達をかばってのものだ……
「おいおい、んな顔するなよ! さっきも言ったが、生きてるだけでラッキーだから。それに緊急クエストの達成で報酬も入るしな。しばらくゆっくり出来るってもんさ」
どうも考えが顔にでていたらしい。オリヴァーさんは俺に明るい声でそう言ってくれた。
(……そうだな。今、そんなことを考えても仕方ないな)
オリヴァーさんは今は動けない。なら、動ける俺は今出来ることをやらないと!
「オリヴァーさん、俺、森の様子を見てきます。ついでに薬草がないか探してみます」
「おう、助かるぜ」
オリヴァーさんの笑顔に見送られて俺は部屋を出る。その時、頭の中に声が響いた。
“起きたか、ディラン”
(ヘイゼル様?)
まるでステータスからのメッセージのようだ……流石幻獣。こんなことまで出来るのか。
”ちと話したいことがある。こっちに来てくれないか“
(分かりました)
ヘイゼル様からの話……一体何だろうか。
(……って何か忘れているような)
何だろう……まっ、いいか。
*
(サイラス視点)
くせぇ……くせぇよ……
オーガに止めの一撃をくらいそうになった俺だが、足がもつれて倒れ込んだせいで何とか回避できた。しかし、回避した先はゴブリンの糞だらけだったのだ!
(フンをしっぱなしなんて、何て最低な奴らだな!)
しかも俺は倒れ込んだ後に気絶していたらしく、身体中がフンまみれ。くそ……ふざけんなよ!
「シオドア、アデラ、マイロ……生きてるか?」
「その声は! おーい、サイラスがいるぞ!」
何とか起き上がって声をかけるとシオドアから返事が! 良かった……
(皆生きてるっぽいな。良かった)
俺は近づいてくる足音が三つくらいあることに安堵する。いや、本当に良かった……
「サイラス、どうやってあの一撃を回避して……って、うッ!」
シオドアが鼻を摘みながら顔をしかめる。ああ、そうだな。臭いよな。
「とにかく……死んでなくて……良かった。今、ポーシ……ョンを……」
シオドアからポーションを受け取って喉に流し込む。HPは回復するが、顔を歪めながら鼻を摘む仲間の視線で傷ついた自尊心は回復しない。ちなみにポーションを受け取るために近づいただけでシオドアは吐いた……
「とにかく……戻…ろう」
「ああ」
立ち上がると、また仲間の表情が歪む。くそっ……こんな目に遭うならいっそ死んだほうがマシだったぜ!
サイラスのぼやき:
くせぇ……ってここは後書き!? おい、こんな状況でやれって言うのかよ、この腐れ筆者! 人の皮を被った鬼だな、てめぇは! 地獄へ堕ちろ!
……くっ、だがやらないと終わらないだろうな。全く横暴な筆者だぜ。って訳でブクマやポイントがまだの方はこの機会によろしく頼む。俺の華麗な成り上がりを期待している人は特に! 俺はこんなとこでは終わらねぇ!
「彼のざまあを期待している方もよろしくお願いしますm(_ _)m」
あ? 筆者か? 割り込んでくんじゃねーよ、ばーか!




