その名はG!
ドンッ!
轟音と共にオーガの頭が地面に打ち付けられる!
ドカッ━ン!
姿勢が崩れたせいでオーガの攻撃はすぐ傍の地面を穿つ。普通ならその轟音に肝を冷すところだが、今の俺はそれどころではなかった。
「一体何が……」
呆然とするエレナに説明するのを忘れ、俺はオーガを打ち付けたそれを凝視した。
「お前はアンドリューの……」
「トウチャクがオソクなりモウシワケアリません、エドワードサマ」
人形をしたそれは竜牙兵と呼ばれるゴーレムの一種。古代に生きたと言われる偉大な魔法使いが創造した魔道具でアンドリューの生家に伝わる家宝の一つ、竜牙兵だ。
「お前、何で」
「アンドリューサマのメイでマイリマシタ。ササゲモノとメッセージをアズカッてオリます」
竜牙兵は人の生命力と魔力を吸って発動する魔道具。当然その量が増えるほど強く賢くなる。あのオーガを押し倒す強さと会話が出来る知能……一体どれほどの生命力と魔力を与えたんだよ、アンドリュー!
「ワガアルジのイノチにベツジョウはアリマセン。アルジのメッセージをミテイタダケればオワカリいただけるかとオモイます」
そうなのか……ならひとまずは安心かな。しかし相変わらず無茶苦茶するな、アンドリューは!
「エドワードサマ、ワガあるじヨリのササゲモノを……ムッ!」
頭に乗っていた竜牙兵が飛び退くと同時にオーガが立ち上がる。くそっ、まだ動けるのか!
カシャ……
軽やかな音と共に竜牙兵の体の一部が開く。そこにあるのは……剣の柄か?
「オつかいクダサイマセ。ワガアルジよりアズカリマした」
「ありがとう!」
俺は剣を引き抜いて向き直る。すると、竜牙兵もまたオーガに向かって構えをとった。
「お前の名は?」
「アルジよりタマワリしコードは『G』。ドウゾ『G』とオヨビください」
G……何よりの援軍だ。
「マシンG、エレナを守りながら牽制を。俺が前に出る!」
「カシコマリました、エドワードサマ!」
マシンGがエレナの前へ移動した瞬間、オーガが拳を突き出した!
ビュッ……ザク!
ダメージにより速度が落ちたとはいえ、俺に出来たのはギリギリでかわすだけ。だが、構えた剣の刃はオーガの腕の方を向いていたらしい。
ザクザクザクッ!
Gから受け取った剣はオーガの分厚い表皮を深々と切り裂いた!
(かなりの業物だな……これなら!)
既にクラスは『剣士』に変更してある。俺は〈ダブルスラッシュ〉を放──
(やば──)
第六感の導きで俺は〈パリィ〉を発動。おかげで体に突き刺さりそうだった拳の先を弾くことに成功した!
(くそっ……やはり強いな)
マシンGの攻撃で多少弱ったとはいえ、パワーとスピードは圧倒的。さらにアンデッドならではの迷いのなさも厄介だ。
(攻撃を受けようが、お構いなしに反撃してくるんだもんな……)
さっきの攻撃もダメージを受けた直後に放ったものだろう。普通の生き物なら怯んだり、一旦離れて様子を見たりするはずだ。
ビュッ! ビュッ! ビュッ!
俺はオーガの放つ拳を紙一重でかわす。だが、既に疲労が溜まってる上に一発食らえば終わりの俺とは違い、相手は疲れを知らないアンデッド。このままじゃジリ貧だ。
(隙を作って攻撃を叩き込まないと……)
動きを止め、核へ全力でスキルを叩き込む。それしかないのだが……
(動きを止めるどころじゃ……)
何度かは最初みたいにかわしながら切り傷を作ることには成功してる。が、オーガが止まる気配がない。
(くそっ……何かないか……)
そんなふうに考え事をしていたせいだろう。俺はうっかりぬかるみで足を滑らせてしまった!
ツルッ
(しまっ──)
かわしようがないオーガの拳が迫──
ドッカーン!
その瞬間、オーガの体が吹き飛んだ!
「ディラン!」
エレナが大砲のようにデカい筒のようなものを担いでいる!
(あれはマシンGのキャノンモード!)
マシンGは込められた生命力や魔力を消費することで変形し、様々な力を発揮するのだ。
(キャノンモードはかなりの反動があるはずだけど……流石エレナだな)
おっと、感心してはばかりはいられない!
「エドワードサマ、トドメを!!」
「大丈夫、援護するよ!」
エレナがキャノンモードのマシンGを構える。よし、これなら……
「ァァァ!」
オーガが奇声を上げながら突進してくる! よし……ここで決める!
筆者の独り言:
Gがディラン(エドワード)の位置が分かったのはアンドリューのマジックポーチにイチを知らせる魔道具がついているためです。
あと、Gのセリフが読み辛くてスミマセン。メカ感を出したくてカタカナにしたのですが、意外と喋るんですよね、彼は。
という訳で頼もしい援軍を得たディランはパワーアップしたオーガを倒せるのか!? 次話も白熱の展開ですので、ブクマ&ポイントの方は是非ポチッとして頂いて明日の更新をお待ち頂ければと思います!




