秘策
「作戦通り俺が前へ出る。ディランは下がれ!」
「はい!」
その瞬間、オーガが姿を現した! 片目が潰れ、怒り狂ったオーガは俺達を見ると今までよりも大きな咆哮を上げる!
(けど……俺達だって負けるわけにはいかない!)
ここを引けば村に被害が出るし、村人達が襲われる可能性もある。
(クラスはもう変更した。後は……)
練習する時間も場所もなかったからぶっつけ本番だが……やるしかない!
「〈ホーリーレイ〉!」
俺が発動したのはエクソシストのスキル、〈ホーリーレイ〉。アンデッドに特別に高い効果がある魔法だ!
ピィィィン!
白い光がオーガに降りそそぐ! そして……
「アギャャャ!」
オーガが苦悶の声を上げる。片目を潰した時と同じ……いや、それ以上だ!
(効いてる!)
オーガの表皮は分厚く、武器でさえ満足なダメージは与えられない。でも魔法なら効くんじゃないかと思ったんだが、読みが当たったな!
「〈ダブルスラッシュ〉!」
「〈〈気功術 : 水〉〉!」
足が止まったオーガにオリヴァーさんとエレナが攻撃を畳み掛ける! よし、このまま……
「グォォォ!」
しかし、オーガは二人の攻撃を無視して俺に突っ込んで来る! なんて奴だ! が……
(予想通り……)
俺が更に後ろへ下がると……
ドガッ
オーガの下半身は用意していた落とし穴にはまった!
(いまだッ!)
俺は再び〈ホーリーレイ〉を発動!
ピィィィン!
「アギャャャ!」
よし、もう一発……
(ぐっ……)
続けて〈ホーリーレイ〉を発動しようとしたら急にめまいが……
(話には聞いていたが、これが魔力が枯渇した時の症状か……)
魔法にはスキルと違ってクールタイムがない。代わりに発動する度に魔力を消費するのだが、この時体に変調をきたす場合がある。当然魔力を大量に使うほど、また連続して使うほどその症状は酷くなる。つまり……
(少し待たないと駄目か……)
だから、魔法を使える者はどの魔法をどれくらい使うと症状が出るのか、どのくらいの間隔を空けたら良いのかなどと言ったことを知っておかなくてはならない。じゃないと、ここぞという時に魔法が使えないなんてことになる──まさに今の俺のように。
「ディラン、大丈夫!? 〈気功術 : 木〉!」
よろめく俺を支えながらエレナがそっと手を握る。するとエレナの手から体が温まっていく……よし、これなら!
「くらえッ! 〈ホーリーレイ〉ッ!」
「アギャャャャャャャャャャ!」
渾身で放った〈ホーリーレイ〉を受けたオーガは悲鳴を上げながら白目を剥く! やった、倒したか!?
「いや、待て! 様子がおかしい!」
オリヴァーさんが指した先には……
(あれは邪印!?)
いつの間にかエレナのお父さんの体にあったものと同じ印がオーガの腕に浮かんでいる!
“あのオーガ、加護で腕力が強化されておったはずだが”
ヘイゼルの言葉が脳裏をよぎる。加護って言うのは邪印のことだったのか!
「ャャャャャャ!」
音にならない声を上げながらオーガの体は膨らんでいく。同時に肌からは生気が失われ、毒々しい紫色に変わっていく……
(アンデッド化……なら!)
エクソシストのスキル、〈ホーリーレイ〉はアンデッドに効果バツグンだ!
「〈ホーリ……くッ!」
「ディラン!」
極度のめまいに膝をつきかけた俺をエレナが支えてくれた。くそっ……さっきの〈ホーリーレイ〉で魔力が完全に尽きたみたいだ……
「ャャャャャャ!」
オーガは奇声を上げながら腕を振り回す!
バリバリ……バリバリバリバリ!
オーガの拳が地面に深い亀裂が走らせる! 今までとは腕力が別物だ!
「ァァァ!」
オーガは穴にはまった下半身を力尽くで引っこ抜くと、俺達に襲いかかって来た!
「くそっ!」
オリヴァーさんが迎え撃つ! が……
ドン!
丸太のような腕にまるで木の葉のように吹き飛ばされてしまった!
「オリヴァーさんッ!」
叫びながらもエレナを背にして俺は剣を抜いた。C級冒険者のオリヴァーさんでさえ一撃でやられてしまうんだ。俺じゃ瞬殺……いや、即死だろう。
(だが……ッ! 最後まで諦めないぞ!)
“王族たるもの、最後まで自らの勝利を疑わない”
アンドリューと母上の教えだ。それに……
(俺は……まだ死ねない!)
俺はこんなところで死ねない! アレクサンダーを倒し、シャーロットとアンドリューを取り返すんだ!
「ャャャャャャ!」
オーガが再び拳を振り下ろしたらその時──!
ディランからのお願い:
──!!!
死んでない……って後書きかよ! こんなタイミングで? 全く筆者は何考えてんだよ!
いつも読んでくれてありがとう! もし、大ピンチな俺へブクマやポイントでさらなる応援をして貰えたら嬉しい。こんなとこで終わるわけには行かないからな!




