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勘違い

 その後のことは正直覚えていない。とにかくその後、皆が帰り、聖堂には俺と父達だけになった。


「残念だ。お前なら素晴らしいスキルを授かると思っていたんだが」


 いつもと同じように父の言葉には何の感情も込もっていない。


「ご期待に添えず、申し訳ありません」


 俺はそう言って頭を下げる。が、正直まだ頭はよく働いていなかった。


“何故俺だけ……”

”何でこうなったんだ……?“


 そんな答えの出ない問いばかりが頭ををよぎる。だが、次の父の言葉はそんな混乱にさらなる追い打ちをしかけた。


「お前は良くやってきた。が、スキルを授からなかったものを王子にしておくわけにはいかん」


 なっ………


「かと言って、血の繋がったお前を王子としての資格を剥奪すれば非難は免れない」


 それはそうだろう。スキルを授からなかったというは前代未聞かも知れないが、俺は別に罪をおかした訳じゃない。


「よって、今日からアレクサンダーを“第一王子エドワード”とする。お前は以後、王子でもなけれ我が息子でもない」


 えっ……


 予想外の言葉に思わず顔を上げる。が、父は既に踵を返していてその顔はもう見えなかった。


「数日の猶予をやる。お前は城を出て好きに生きろ」


 父はそう言い残し、後妻とアレクサンダーと共に部屋を出ていった。



「エドワード様! 探しましたぞ!」


 隠し通路を使って城を出てすぐに俺は誰かに呼び止められた。いや、誰かじゃない。この声は……


「アンドリュー……」


「エドワード様、この爺に一言もなしとは流石に冷とうございますぞ」


 いつもと同じように接してくれるアンドリューに俺は少し気持ちがラクになる。だが……


「アンドリュー、俺はもうエドワードじゃないんだ」


 俺はアンドリューに今までのことを全て話した。スキルが授からなかったこと、父から捨てられたこと……


「何と愚かな……王としても父としても愚劣の極みですなッ! 今すぐ素っ首を切り落としてやりましょうか!」


 烈火のようなアンドリューの怒りに俺は何故かまた少し気持ちがラクになり……冷静に考えられるようになってきた。


「仕方ないさ。スキルを授からなかった俺が悪いんだ。ま、アンドリューに習った剣で冒険者にでもな──」


「それは違いますぞ、エドワード様」


 アンドリューは俺の言葉を遮り、一冊の本を差し出した。


「申し上げたいことは色々あります。が、まずはこれを御覧ください」


 そう言ってアンドリューが差し出したのは大聖女と共にこのアイゼムアース王国を興した初代国王の手記。歴史学の授業で飽きるほど読んだ本だ。


(何故今更……)


 だが、アンドリューは無意味なことはしない。俺に関わることなら特に。だから、俺はとにかく言われた通りにページを開いた。


「これは我が家に代々伝わる原本でしてな。初代国王様直筆のオリジナルなのです」


 アンドリューの言うことが事実ならこの本は国宝級の宝。それこそ金貨何百枚、何千枚の値がつくほどの。が、俺の注意はそんなことよりも本の内容に釘付けになっていた!


(本の中身が違う……!?)


 本に書かれていたのは、俺がよく知る王が生まれた話から続く苦難と栄光の人生……ではなく、『クラス』と呼ばれる力についてだった。


(レベルの横に書かれたものが今のクラス……そう言えば確か……)


 俺が念じると、青く輝く光で出来たステータスが現れた。


◆◆◆


エドワード Lv1(アノニマスLv1)

力   9

防御  8

魔力  6

精神  7

素早さ 8


スキル

〔     〕

〔     〕

〔     〕


◆◆◆


 アノニマス、これが俺のクラスか?


「失礼……確かにこの本に書かれている通り、エドワード様のステータスにはクラスが書かれていますな」


 アンドリューが俺のステータスを覗き込んでそう言った。


「つまり、エドワード様はスキルを授からなかったのではなく、初代国王様と同じ力を授かったのです。そんなお方を追放など……万死に値します!」


 アンドリューが再び怒り出す。が、俺は力が抜け、その場に座り込んでしまった。


「エドワード様、どうなされました!?」

「つまり、勘違いってことか……」


 怒りはある。勿論悲しみも。大して調べもせず、俺のことを無能だと決めつけられ、追放されたのだ。


(確かにアンドリューの言う通りだな……)


 父の俺に対する扱いは間違いだってことだ。でも……


(だが……それも無知ゆえのもの)


 亡き母とアンドリューの教えには“無知なる者の無礼には赦しと知識を”というものがある。だから……


「俺はこの怒りを呑み込み、父の間違いを正してやらねばならないないのだな……」


 まずはこの本を見せ、それから……


「それは違いますぞ、エドワード様ッ!」


 力なく項垂れた俺の顔を持ち上げた。


「これはその補足事項が該当します!」


 ”王族たる者、無知なる者の無礼には赦しと知識を”、その教えに続く補足事項? 聞いたことがないぞ?


筆者による補足事項(もしくは言い訳):

 現段階では明らかになっていませんが、アンドリューが持っていた初代国王の手記はある条件で隠された情報が開示される魔道具です。その条件とは、そして何故初代国王はこんな手の込んだことをしたのか……それは物語が進めばいずれ明らかになりますので、よろしければもうしばらくお付き合い下さいませ。


アンドリューからのお勧め:

 皆様、今日もお越し頂きありがとうございます。まだまだ序盤ですが、まもなく急展開が待っております。お見逃しのないようにブクマやポイントをお済ませになられることをお勧めしますぞ。


 ……何ですと? ポイントは見逃しとは関係ない? ホッホッホ! 私としたことが……

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― 新着の感想 ―
自分の名前と立場まで奪われるとは、父王からの疎まれ方もすさまじい。 しかし初代国王の再来ともいえるクラスを得たなら、エドワードの前途は明るいものとなるでしょう。 対して父王や弟が、今後どんな表情をする…
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