予想外
「……一体どうなってるんだ、こりゃ」
それから俺達は薬草を探している最中にゴブリンやホブゴブリンと五回ほど遭遇した。追い払うことには成功したものの、これだけ続くと流石に運だけの問題とは思えない。
「明らかに何か普通でないことが起こってますね……何かは分かりませんが」
オリヴァーさんの呟きにエレナがそう答える。その意見には俺も賛成だ。
「薬草はまだ決められた量には足りないが、帰った方が良さそうだな」
「そうですね。そうしましょう」
今までは俺達でも何とかなった。が、次はどううか分からない。何が起こっているのか分からない以上、今まで以上の数のゴブリンに襲われる可能性もあるし、襲ってくるのがゴブリンやホブゴブリンだけとも限らないのだ。
「済まないな、変なことになっちまって。割の良いクエストを紹介するつもりがまさか失敗しちまうとはな」
オリヴァーさんが済まなさそうな顔でそう言うので俺達は慌てて首を振った。
「そんな! 森の異常はオリヴァーさんのせいではないですし」
「それにこんなこともあるんだと知れて良かったです!」
エレナに続けて口にした俺の言葉は本心だ。俺は冒険者とは危険と隣り合わせの職業だと思ってた。いや、事実そうかも知れないが、だからこそなるべくリスクを避け、危険だと思えば引くことが大事なのだと学ばせて貰えたからな。
「そう言って貰えると助かるが……ま、ギルドに帰ったら飯を奢るからよ」
オリヴァーさんがそう言ったその時、誰かの悲鳴が聞こえた!
(近い!)
一番早く駆け出したのはエレナだ。五感が鋭い彼女は悲鳴の聞こえた方向へと正確に駆けていく。エレナの背を追って走ると……
(子ども!?)
眼の前にいたのは腰を抜かした女の子。そして、五〜六メートル程はある緑色の巨体……間違いなく魔物だ!
「オーガだと! 嘘だろ!」
オリヴァーさんがそう漏らす。俺はその声色から危険な相手だとすぐに理解した。が、ここで逃げたらあの子は確実に死ぬ。それは絶対に駄目だ!
「俺が注意を引きます。その隙に……」
「だが……」
オリヴァーさんが何か言いたげな顔をする。が、ここで議論している暇はない。今にも女の子に振り下ろされようとしている太い腕を見たオリヴァーさんは風のように駆け出した!
「〈ダブルシュート〉ッ!」
接近戦主体のエレナを援護するためにクラスがレンジャーだったため、俺はクラスを変える手間なくスキルを放つ。ナイフは隙だらけのオーガの背に向かって飛び……
ザク……ザク……
ナイフは狙い通りに刺さった。が、オーガが痛がるどころか、声一つ上げない。
(嘘だろ……)
が、何か刺さった感覚はあるのかを背を腕で探っている。まあ、手が届かないみたいだが……
”早くこっちへ“
“駄目……足が動かない”
この隙にオリヴァーさんは女の子の元へたどり着けたようだ。あと少し……あと少し時間を稼げれば……
「〈集中〉……」
〈ダブルシュート〉のクールタイム中に俺は〈集中〉を発動。背が駄目なら急所を狙えば良い。
「ガガ……フンッ!」
体の割に短い腕で背に刺さったナイフを取ろうと無駄な足掻きをしていたオーガは突然、大きく体を震わせた! すると、ナイフがポトリポトリと地面に落ちる。俺のナイフはどうも少し刺さっていた程度らしい。
(……何て皮膚の硬さだ)
これは剣で切りつけても大したダメージは与えられないかも。厄介だな……
「ガ……アガ?」
オーガは地面に落ちたナイフを見ると不思議そうに光にかざす。まるで“何処から飛んで来たんだ?”と言わんばかりのバカ面だ。
「〈気功術 : 水〉ッ!」
隙だらけのオーガにエレナが拳を叩き込む。彼女の攻撃でもダメージはほとんどないかも知れないが……
(ナイスだ、エレナ!)
エレナの〈気功術 : 水〉は相手にデバフをかける効果がある。〈集中〉でスキルの威力が上がった今ならもしかして……
「〈ダブルシュート〉ッ!」
〈ダブルシュート〉のクールタイムが終わった俺はすかさずスキルを発動してナイフを投げた! 狙いは一番弱いところ。すなわち……
「アギャァァァ!」
エレナに殴られたことさえ気づかずにナイフを眺めていたオーガは突如目を押さえてのたうち回る。皮膚じゃまず攻撃が通らないと思った俺は目を狙ったのだ。が……
「アガガガッ!」
効きはしたが、オーガの怒りをかったらしい。今までのバカ面は何処へやら、オーガは残った一つの目で近くにいたエレナを睨みつけた!
(クソッ!)
俺は全力でエレナの元へ走る。が、オーガの腕の方が速い。
(ヤバい!!!)
少女の叫び:
きゃあああっ!
って、ここは何処? えっ……これを読むの?
「オーガに襲われた少女の運命はいかに!? 次話も急展開! ブクマが未だの方は見逃さないように是非!」
ブクマって何? ここは何処?




