天恵の儀
司教が必要な詠唱をすると聖像からアレクサンダーへと黄色い光が降り注いで来た。
「な、なんとアレクサンダー様のスキルは〈光速剣〉! 先代の剣聖がお持ちだったスキルです!」
司教の声と同時にアレクサンダーの近くで彼のステータス画面が表示された。
◆◆◆
アレクサンダー Lv1
力 ──
防御 ──
魔力 ──
精神 ──
素早さ ──
スキル
〈光速剣〉
◆◆◆
ちなみに各種パラメーターに何も描かれていないのは流石に公衆の面前で披露するようなものではないからだ。天恵の儀を受けたものはいつでもステータス画面を開けるようになり、自分が開いたステータス画面にはちゃんとパラメーターが載せられているらしい。
「父上! 俺、剣聖のスキルを授かったぜ!」
「でかした! それでこそ我が息子だ!」
父とアレクサンダーが喜ぶ傍で、義母は感激のあまり涙を流している。まあ、剣聖のスキルを授かったなら輝かしい未来が約束されたみたいなもんだからな。
「では、次はエドワード様に……」
「待て!」
粛々と進めようとする司教に父が再び待てをかけた。
「エドは最後だ」
「お、お待ち下さい! それではエドワード様があまりに──」
規則と伝統を無視した父の言葉に司教が思わず抗議の声を上げる。が、父はそんな司教を一喝した。
「お前は王の言葉に背くつもりか。家族共々反逆罪となる覚悟があってのことだろうな!」
司教はブルブルと震えながら唇を噛みしめる。自分だけじゃなく、家族にまで罪に問われるとなってはな……気の毒に。
「司教、父の言う通りに。私は順番など気にしない。それで授かるスキルが変わるわけではないですから」
「……御意」
司教はギリギリと歯を食いしばりながらそう言うと、式を再開した。
「お次はシャーロット様」
「はい」
少し緊張した様子のシャーロットが前へと進み、式に臨む。しばらくすると聖像から白銀の光が彼女に降り注いだ。
「シャーロット様のスキルはな、なんと〈セイクリッドヒール〉! かの大聖女、イザベラ様がお持ちだったという伝説のスキルです!」
「「「おおッ!」」」
その場にいた全員が思わず声を上げた。何せ大聖女イザベラ様は初代国王を助け、このアイゼムアース王国を建国する力となった方だからな。
「……早く続きを」
父が不満げにそう司教に命令する。多分、アレクサンダーの時より皆の反応が大きいのが気に食わないのだろう。
(良かったな、シャーロット)
席に戻りながら嬉しそうに目配せをするシャーロットに俺は心の中でそう返事をした。
「では次は──」
そうして天恵の儀は続き……
「エドワード様、どうぞ」
ついに俺の番になった。
「エドワード様、ご立派でしたぞ。胸を張って行ってきて下さい」
「ありがとう、アンドリュー」
立ち上がる俺を側で付き従ってくれているアンドリューが励ましてくれる。“立派”と言うのは多分、司教のことを思って言葉をかけたことを指しているんだろう。
(”王族たるもの、常に弱者を思いやるべし“だもんな)
母とアンドリューが口を酸っぱくして教えてくれた王族の心得えは俺の中にしっかりと根付いている。だから……
(どんなスキルを授かっても俺は俺。これからもやることは変わらない)
自分を鍛え、得た力で誰かを助ける。そして誰に何を言われても、そんな自分を誇りに思うこと。俺はそれを母とアンドリューから教わった。
「では、天恵の儀を……おおっ!」
司教が儀式を始めるやいなや聖像から金色の光が溢れ出た! その眩い光はその場にいた全員を照らし、やがて消えた。
「今の光は……あっ、エドワード様のスキルは……えっ!?」
光が消え、自身の役割を思い出した司教が口ごもる。一体どうしたんだ?
(俺のステータスは?)
俺は近くに表示されているステータスに目をやった。
◆◆◆
エドワード Lv1(アノニマスLv1)
力 ──
防御 ──
魔力 ──
精神 ──
素早さ ──
スキル
〔 〕
〔 〕
〔 〕
◆◆◆
何だ……何も書かれていない?
「スキルが書かれていない? どう言うことだ?」
「エドワード様はスキルを授からなかったのか?」
「そんな馬鹿な。天恵の儀を受けた者は皆、何かスキルを一つ授かってきたではないか!」
呆然とする俺に周りのお喋りがやけに大きく聞こえる。天恵の儀を受けたのにスキルを授からない、そんなことがあるのか……
筆者のつぶやき :
な、何だって! 主人公だけがスキルを授からない!? そんなことって……
はい、テンプレです。ですので安心して次話をご覧くださいませm(_ _)m
司教からのお願い:
読者の皆様、読んで頂きありがとうございます。名前さえ出て来ない私から皆様にお願いするなど分不相応かとは思いますが、どうかブクマやポイントでご支援下さいませ。皆様のお心遣いがきっと慈悲深いエドワード様の力になるはず。どうかよろしくお願いします……