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俺だけのスキル【ガチャ】が世界を救う  作者: 渡琉兎


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第98話:課題と期待

 コボルトナイトとの戦闘を終えた竜胆は、すぐに脱力感を覚えた。


(……これは、下級土魔法を使い過ぎた時の感じと似ているな)


 魔法剣というだけあり、当然だが発動には魔力を使用する。

 スキルの取捨選択を余儀なくさてた時、竜胆は魔力が少ないことを理由にスキル【下級土魔法】を削除した。


(こいつは、どうにかして魔力を高めないといけないか)


 そんなことを考えていると、恭介と彩音がコボルトレンジャーを片付けて近づいてきた。


「魔法剣、どうだった?」

「格好よかったですよ、竜胆さん!」


 恭介は使い勝手を、彩音は見た目の感想を口にする。


「使いこなすことができれば、俺にあったスキルだと思う。ただ、魔力が少ないから、そこが課題だな」


 剣術はスキル【中級剣術】で底上げが可能。上位互換に進化すればさらなる上積みも期待できる。

 しかし、魔力だけはそうもいかない。


「……竜胆君が後天的に獲得したスキルは、熟練度があるんだったよね?」

「そうだけど、どうしたんだ?」


 熟練度について確認を取った恭介は、竜胆の返答を受けて思案顔を浮かべると、しばらくして自らの考えを口にする。


「……僕が知る限り、魔法剣に類似するスキルを授かったプレイヤーの多くは、魔力が自然と強化されていたはずなんだ」

「なっ! それは本当なのか!」

「あくまでも僕が知る限りの話だけどね。彩音さんはそんな話を聞いたことはないかな?」


 恭介は彩音に問い掛けた。


「私も聞いたことはありますけど、実際に魔法剣に類似するスキルを持ったプレイヤーと一緒になったことがなくて……」

「恭介が言っていた、その類似するスキルってのはなんだったんだ?」

「スキル【魔法付与】だよ」


 スキル【魔法付与】は、魔法剣のように剣にのみ魔法を纏わせるものではなく、装備全てに魔法を付与することができる。

 その際、魔法剣よりも膨大な魔力を消費するからなのか、魔法付与を授かったプレイヤーの魔力量は非常に多く、また他の能力に比べて上がり幅が大きかった。


「魔力の成長がスキルに影響されるなら、魔法剣の熟練度が上がって上位互換に進化した時、魔力も底上げされるんじゃないかな? まあ、僕の予測込みの話なんだけどね」


 最後の方は苦笑いを浮かべていたが、竜胆はこの予測が正しいと思っていた。

 事実、魔法系のスキルを授かった者は魔力が高く、その威力は成長と共に強くなっていった。

 単純にスキルに慣れていったという見方もできるが、能力がスキルに合わせて成長していると見ることもできる。


「だが恭介、お前たちのスキルには熟練度、という項目はないんだろう? そこはどう説明するつもりなんだ?」


 竜胆のスキル【ガチャ】が規格外だと言われる所以は、スキルが成長するところにある。

 スキル【ガチャ】もレベルを上げることで、獲得できるスキルが増えるのだが、その獲得したスキルの熟練度を上げることで上位互換に進化させることができるのも、規格外と言わざるを得ない。

 スキルによって成長する能力が変わるのであれば、竜胆だけではなく、全プレイヤーに熟練度がなければ説明がつかない。


「竜胆君の場合は、あくまでもスキルが進化しているんだ。だけど、僕たちの場合はスキルではなく、スキルに合わせて僕たちが成長しているんだよ」

「……つまり、プレイヤーの肉体がスキルに引っ張られている、って言いたいのか?」

「あぁ。僕の例で言うと、元々は引っ込み思案で争いごとも好きじゃなかったんだ。でも、プレイヤーになって、スキル【戦意高揚】を授かってから、徐々にだけど戦うことが楽しくなってきたんだ」


 それでも穏やかな性格を保てているのは、ひとえに元々の性格が本当におとなしかったからだと、恭介は考えていた。


「彩音さんは授かったスキルに、自分が引っ張られている感覚はないかな?」


 恭介が問い掛けると、彩音も小さく頷く。


「私も覚えがあります」

「そうなのか?」

「は、はい。なんと言いますか、プレイヤーになる前よりも周りの動きがはっきり見えるようになったと言いますか、意識するようになったかなって……でも、こういうスキルだから意識的にそうなったんだと思っていました」


 彩音は心当たりはあるものの、自分が意図してそうしていると思っていた。


「最初に言ったけど、あくまでも僕も予測だよ。竜胆君に関しては、とりあえず魔法剣の熟練度を上げて、上位互換に進化させてみたらいいんじゃないかなって提案をしたかったんだ」


 魔法剣を使っていれば、おのずと中級剣術も使うことになる。

 それぞれに熟練度を上げることができれば、それに越したことはない。


「……そうだな。魔力が少ないからそう何度も使えないけど、使える時は積極的に使ってみるか」


 課題が浮き彫りになった魔法剣だが、同時に大きな期待も抱くものとなった。

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