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俺だけのスキル【ガチャ】が世界を救う  作者: 渡琉兎


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第91話:信じるべき相手

 朝ご飯のタイミングで竜胆は病院をあとにした。

 警備室で疾風剣を受け取ると、竜胆はその足で協会ビルへ向かう。


「……よし、恭介と彩音にも連絡完了っと」


 送信した内容は『今後の活動について相談したい』というものだった。

 すぐに恭介と彩音から連絡が返ってくると、協会ビルで合流する流れになった。


「朝ご飯を買って食べるか」


 協会ビルに併設されているコンビニに足を運び、おにぎりとドリンクを購入してから飲食スペースへ向かう。

 そこで朝ご飯を取りながら二人の到着を待とうと思っていた竜胆だったが、そこで意外な人物と遭遇してしまう。


「……あれ? あなたは、猪狩国親?」

「あん? なんでお前がここにいるんだ、新人?」


 飲食スペースには一人、国親がおにぎりを頬張っていた。


「えっと、食事を取ろうと思って」

「あー、そうか。まあ、いいんじゃねぇか」


 そう口にした国親は、黙々とおにぎりを食べ始める。

 空席を一つ挟んだテーブルに腰掛けた竜胆もおにぎりを頬張った。


(……な、なんか、気まずいなぁ)

「おい、新人」

「は、はい、なんでしょうか?」


 気まずいと思っていると、突然国親が声を掛けてきた。


「恭介は大丈夫なのか?」

「えっ? ……はい、問題ありません。古傷も上級ポーションで完治していますよ」

「そうか……なら、よかったわ」

「えっと、どれはどういう意味――」

「それじゃあな、新人」


 国親は竜胆の言葉を遮りながらそう言い残すと、飲食スペースをさっさとあとにした。

 その姿を黙って見送ることしかできなかった竜胆は、国親の言葉の真意を考え始める。


(……恭介が膝を怪我したことを知っているのは、まあ分かる。活躍していたパーティだったみたいだし、ライバル視していれば情報を集めていたかもしれないからな。だが、最後のよかったってのはどういうことなんだ?)


 竜胆は恭介と国親が言い争っている姿しか見ておらず、仲が悪いとばかり思っていた。

 しかし、よく考えてみれば二人がどのような関係性なのかまでは分からず、もしかすると竜胆が考えているより仲違いしているわけではないのかもしれない。


「……ついでに恭介に聞いてみるか」


 これから会うのだからと、竜胆は恭介に聞いてみようと思いながら、残りのおにぎりを頬張った。


 竜胆が協会ビルに到着してから三〇分ほどが経ち恭介が、五分遅れで彩音が到着した。


「すみません、お待たせしました!」

「僕はそこまで待っていないよ」

「俺が急に呼んだんだ、気にしないでくれ」


 最後に到着した彩音が謝罪すると、恭介、竜胆の順番で問題ないと答えた。


「それで、竜胆君。今日はどうしたんだい?」

「そうですよ! せっかく鏡花ちゃんが治ったんですから、一日くらいはゆっくりしてもよかったんじゃないですか?」


 恭介と彩音が竜胆を気遣い声を掛けたが、彼は首を横に振り口を開いた。


「今日の朝、鏡花と話をしていたんだけど、その中で俺の今後の活動について決めたことがあってな、それを二人に伝えようと思ったんだ」


 竜胆の今後の活動についてと聞き、恭介と彩音は真面目な顔で姿勢を正した。


「でもまあ、そこまで深刻に考えての答えだったり、難しいことじゃないんだ。俺は俺なりに頑張る、無理をしてもいいことはないって、鏡花に教えられたんだ」

「竜胆君なりに頑張るか」

「……うん、それがいいと思います!」


 竜胆の言葉に、恭介も彩音も納得したように頷いた。


「正直、もっと多くの人を助けられるよう頑張るべきなのかって考えてもいたんだ。だけど、そうすると危険に晒される機会が増えてしまうし、俺が死んだら鏡花を一人にしてしまう。それだけは絶対にダメだって考えて、俺だけじゃ答えを出せないなって思っていたんだ」

「そこで鏡花ちゃんが貴重な意見をくれたんだね」

「あぁ。俺が普通に頑張っていれば、助けられる人は増えるって教えてくれたんだ」

「鏡花ちゃん、素晴らしい意見じゃないですか!」


 恭介と彩音も鏡花の意見に賛同しており、竜胆は自分のことのように嬉しくなった。


「そこでなんだが……俺は恭介と彩音のことを信用している。そして、そんな二人が信用している相手を信じてみようと思っているんだ」

「僕たちが信用している相手?」

「それって、誰のことですか?」


 恭介にも彩音にも心当たりがなく、二人は同時に首を傾げた。


「その相手は――堂村支部長だ」

「「えぇっ!! し、支部長!?」」


 竜胆の言葉に二人は驚きの声をあげた。

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