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俺だけのスキル【ガチャ】が世界を救う  作者: 渡琉兎


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第68話:二人目の共有者

 それから竜胆は、彩音へスキル【ガチャ】がどのようなスキルなのかを説明していく。

 それはスキルを獲得できるだけではなく、ガチャの結果によってはレアアイテムや装備が手に入ること、さらにスキルの熟練度を上げれば上位のスキルに進化することなど、現時点で竜胆が把握している全ての情報を彩音へ伝えたのだ。


「……は、はは……なんだろう。直接話を聞いたのに、納得していいのか、分からなくなっちゃいました」


 顔をひきつらせたままそう口にした彩音を見て、竜胆の隣に座る恭介が何度も頷いている。


「僕も最初は本当に驚いたからね、彩音さんと同じようなリアクションだったよ」

「そうだったか?」

「そうだよ」


 首を傾げながらそう口にした竜胆に対して、恭介は呆れたように答える。


「……あれ? ということは、やっぱりCランクじゃなくてBランク……いいえ、それ以上でもいいんじゃないですか!」


 トリプルを超えたスキルの持ち主であり、レアアイテムや装備を大量に獲得できる竜胆がCランクでは、割に合わないと彩音は訴える。


「いいや、俺はCランクでいいよ」


 しかし竜胆はCランクのままで構わないと口にする。


「ど、どうしてですか? ランクが上の方が、より協会からの支援も手厚くなるんですよ?」


 彩音の言葉は拳児からも言われた説明でもある。

 しかし竜胆にとっては可能な限り目立たず、そのうえで鏡花を助けるためのエリクサーを手に入れたいと考えており、一気にランクを上げるのは遠慮したかった。


「何度も言っていると思うが、俺は目立ちたくないんだ。実力に関しても、スキルに関しても」


 竜胆のスキルは規格外すぎる、それを彼自身も理解している。

 だからこそ、悪用しようと企み、竜胆だけではなく、家族にまで魔の手が迫る可能性を極力避けたいと考えていた。


「鏡花のためだ、理解してくれ」

「……分かりました」


 あまり納得がいっていないような雰囲気だが、彩音もランクアップを強要したいわけではなく、単純に竜胆の実力とランクが見合っていないから提案しただけだ。

 そのことを彩音の表情から竜胆も感じており、彼女の言葉を聞いてこれ以上の言及は避けた。


「彩音さんには、竜胆君の情報を秘匿しつつ、彼に協力してほしいと僕は思っているんだ」

「それはどうしてですか、矢田先輩?」


 ちょうど良いタイミングで恭介が話題を変えると、彩音もそちらへ意識が向く。


「Aランクの彩音さんから見ても、竜胆君のスキルは規格外だと分かるだろう?」

「それはまあ……はい」

「扉は今もなお、絶えず現れ続けている。竜胆君を守り、育てることが、僕たちの未来を照らす光になると思っている。それは堂村支部長も同じじゃないかな」


 自分はそんな大層な人間ではないと竜胆は言いたかったが、彩音が真剣な面持ちで考え始めたこともあり、言葉を飲み込んだ。


「……確かに、その通りかもしれませんね」

「マジかよ」

「あれ? 竜胆君はそう思わないのかい?」


 みんなの未来を照らす光などと言われて、自信満々にそうだと言える人間の方が少ないだろうと竜胆は思った。


「普通は思わないだろう」

「そうかな? それだけの力があったら、自分がみんなを助けてやるんだー! みたいな感情、湧いてこない?」

「湧かないって。俺は鏡花さえ助けられればそれでいいんだからな」


 冷たい人間だと思われたとしても、竜胆の願いはモンスターに両親が殺され、鏡花が傷ついた時から変わらない。

 恭介に尋ねられた、エリクサーを手に入れたあとのことなど、今すぐには考えられない。何せまだ目的を達成できていないのだから。


「でもまあ、僕も彩音さんも竜胆君の規格外な力に期待を寄せている。おそらく、堂村支部長もね」

「私は協力を惜しみません! 竜胆さんのスキルについても絶対に誰にも言いません! 支部長にもです!」


 いつもと変わらない表情の恭介と、姿勢を正して真剣な面持ちを浮かべる彩音。

 二人からの言葉を受けて、竜胆は小さく息を吐いた。


「……ありがとう、二人とも。それなら俺は、エリクサーを手に入れたあとはみんなのため……ってわけじゃないけど、俺の手の届く範囲のみんなを助けられるよう、頑張ってみるさ」


 竜胆の答えに恭介と彩音は顔を見合わせ、グッと拳を握った。


「というわけで……竜胆さん!」


 そこまで話を終えると、今度は彩音が竜胆に強い口調で声を掛けた。


「ど、どうしたんだ?」

「……わ、私と正式にパーティを組んでくれませんか!」

「あぁ、いいぞ」

「悩まれるのは承知しています! ですがどうか……竜胆さんの……助け、に?」


 彩音はすぐには受けてもらえないと思っていた。もしかしたら断られるかもしれないとも思っていた。

 しかし竜胆はあっさりとパーティを組むことを了承してしまった。


「……い、いいんですか?」

「そのつもりで俺のスキルについて伝えたんだからな」

「……あ、ああ、ありがとうございます! 精一杯頑張らさせていただきます!」

「いや、それ、Aランク彩音のセリフじゃないと思うんだがなぁ」


 やや呆れたように呟きながらも、竜胆は頼りになる仲間ができたことで自然と笑みを浮かべていたのだった。

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