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俺だけのスキル【ガチャ】が世界を救う  作者: 渡琉兎


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第49話:エルディアスコング②

「さあこい、ゴリラ野郎!」

『ブルホオオオオォォオオォォッ!!』


 竜胆が前に出ると、エルディアスコングは即座に反応する。

 地面を抉りながら蹴りつけて跳躍すると、太陽を背にしながら両手足を広げて舞い降りてきた。


「プロレスラーかよ!」


 攻撃の手が届かない場所からの急速落下に、竜胆は仕方なくそのまま駆け抜けて攻撃の範囲外へ逃れる。

 そして、踵を返すとそのまま攻撃へ転換、がら空きになった背中へ疾風剣を突き立てた。


 ――ガキンッ!


「くそっ! やっぱり刃が届かない!」

『ウホホォォッ!』

「こいつ、マジかよ!?」


 背中は安全だと思っていた竜胆だが、そこへ後ろ手にエルディアスコングの拳が迫ってきた。

 慌てて飛び上がって回避した竜胆だったが、空中では身動きが取れない。

 これらの動きを予想していたのか、エルディアスコングは巨体には見合わない速度で立ち上がると、空中で無防備になったままの竜胆めがけて飛び上がろうとした。


「やらせないよ!」

『ウホアッ!』


 そこへ恭介が飛び込んでいき、エルディアスコングの跳躍を阻止した。

 しかし、彼の攻撃もエルディアスコングの体毛に弾かれてしまう。


『ウホッ! ウホホアアッ!』

「足止めができただけでもありがたいね!」


 すぐに飛び退き射程外へ逃れた恭介を見て、エルディアスコングの中で誰が脅威となり得るのかが決定づけられた。


『……グルフオオアアアアァァッ!!』


 脅威となり得るのは竜胆だ。

 体毛に疾風剣が弾かれようとも、何度でも前に出てきては倒す方法を模索している。

 竜胆さえいなければ、あとはただのザコであると、エルディアスコングは考えたのだ。


(よし、第一目的達成!)


 エルディアスコングの表情から思考を読み解き、竜胆は内心でそう思っていた。

 だが、エルディアスコングを倒すにはまだ足りない。

 むしろ、ここからが本番といっても過言ではないだろう。


(こいつを眼球、もしくは口内に放り込む!)


 そう思いながら、竜胆は恭介から受け取ったレア装備である【毒牙の短剣】を隠してある腰の部分に触れた。


(内側から毒で蝕ませれば、動きも緩慢になっていくはずだ。そうなれば倒すにしても逃げるにしても、やりようは出てくるはず!)


 チャンスは三回。

 複数本で攻撃できればもちろんいいのだが、最低でも一回は成功させなければならない。

 少ないチャンスを活かすことができるのかどうか、それは恭介も同じだった。


(私の役目は眼球、もしくは口内に毒牙の短剣を放り込むこと。それは竜胆君も同じだけど、私の方によりチャンスがあるんだから成功させなければね)


 三本あった毒牙の短剣は、一本が竜胆が、そして二本を恭介が持っている。

 これは竜胆からの作戦であり、気を引く役目を竜胆が引き受け、恭介は一回は絶対に成功させるよう言われていた。


(難しい役目だけど、危険度は竜胆君の方がはるかに高い)


 今もなおエルディアスコングと正面からやり合っている竜胆を見て、恭介は全集中力を注ぎ込んでタイミングを見計らっていた。


「はああああっ!」


 竜胆の鋭い斬撃がエルディアスコングの首めがけて放たれる。

 しかし、エルディアスコングは防御姿勢を見せることなく体毛で受けきると、竜胆を抱きしめるように両腕を内側を寄せていく。

 姿勢を低くして回避し大きく飛び退くが、逃がさないと言わんばかりにエルディアスコングが前に出てきた。


「こいつ、決めるつもりか!」

『ウホッ! グルフオオオオッ!』


 最初に邂逅した時とは異なり、エルディアスコングは必至の形相で竜胆を殺しにかかっている。

 それがどうにも腑に落ちず、竜胆は回避に集中しながら思考を巡らせた。


(エルディアスコングは何を焦っているんだ? 最初の慎重さはどこにいった? 何か焦る理由があるのか?)


 思い当たることといえば、縄張りの外に出る必要があるほどの脅威を感じた何かなのだが、それらしい気配を竜胆は感じられていない。


(モンスターにしか分からない何かを感じているってことなのか?)


 分からないことばかりだが、竜胆にとってエルディアスコングが焦り、冷静さを欠いてくれるのはありがたいことだった。


「このチャンス、絶対に活かしきってみせる!」

『ブルホオオオオォォオオォォッ!!』


 大きく開かれた右手を振り上げ、そのまま竜胆めがけて叩きつける。

 手のひらや指先には体毛が少なく、竜胆は指と指の間に入って攻撃を回避するだけでなく、疾風剣を渾身の力で切り上げた。


 ――ザンッ!


『ブルフオアアアアッ!』


 小指の関節へ疾風剣を滑り込ませると、エルディアスコングの力も利用した一撃は、小指の先を斬り飛ばすほど強烈な攻撃へ昇華された。


「ずっと拳で攻撃してきてたから分からなかったじゃないか!」


 さっさと片付けたい、拳がダメなら手を広げて少しでも広範囲に攻撃をと考えたのかもしれないが、それがエルディアスコングにとっては最悪の結果へと繋がっていた。

 初めて感じた痛みにエルディアスコングはその場で暴れ始め、めちゃくちゃに両腕を振り回してくることもあり、竜胆は追撃を諦めて一度距離を取る。

 しかし、そこへ予想外のものが飛んできた。


 ――ザクッ!


「えっ?」

「まずは、一本!」

『ギャルボボババババアアアアァァアアァァッ!?』


 めちゃくちゃな動きをするエルディアスコングの小指の傷口めがけて、恭介が毒牙の短剣を投擲したのだ。

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