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第48話:エルディアスコング①

『ブルホオオオオォォオオォォッ!!』


 紫と白の体毛が逆立っている。これはエルディアスコングが興奮状態にあるという証拠で、威嚇の声を常に吐いている。

 温厚な性格といわれているエルディアスコングがどうしてここまでの興奮状態になっているのか、それが竜胆には分からない。

 しかし、彼の思考は正念場だと感じているだけでなく、エルディアスコングを倒せば特典ガチャを引けるのではないか、という思いも同居していた。


「竜胆君! 私たちを置いて逃げるんだ!」


 そんな竜胆の想いとは異なり、恭介は自分が囮になることを覚悟してそう叫んだ。


「竜胆君が強いことはよく知っているが、エルディアスコングはまだ早すぎる! 君だけでも逃げて外に報告を――」

「報告は協会職員の恭介がやってくれ。俺は、こいつを叩く!」


 グッと地面を踏みしめ、一気に加速する。

 疾風剣を強く握ると、出会い頭の一撃をお見舞いした。


「……こいつ、硬いな!」

『ブルファッ!』

「うおっ!?」


 渾身の一撃は腕を振り上げたエルディアスコングに遮られ、そのままの勢いで大きく弾き飛ばされてしまう。

 空中で体勢を立て直し着地した竜胆だったが、一度の邂逅を得て腕にわずかながら痺れが残るほどの膂力に冷や汗が止まらない。


「……こいつは、今までで一番の強敵だな」


 クイーンアントも相当な強さだったが、あれはソルジャーアントの群れも含めた脅威であり、単体の実力は竜胆の脅威にはなり得なかった。

 しかし、エルディアスコングは違う。単体での脅威度はクイーンアントの比ではなく、相対しているだけでも気圧されそうな雰囲気を放っていた。


『ウホオオオオォォ……』


 それはエルディアスコングも同じだったのか、先ほどまでの興奮状態はどこへやら、体毛は逆立ったままではあるが理性なく攻撃を仕掛けてくるではなく、竜胆の動きを観察するかのように彼を凝視している。


(さて、こいつは間違いなく岳斗より強そうだ。だが、こいつを倒さないと生きては戻れそうもないし、強くもなれない。何か突破口を見つけないとな)


 エルディアスコングがすぐに襲ってこないのを見た竜胆も冷静に観察を続ける。


(見た限り外傷はなさそうだ。ということは、傷を負わされるほどの脅威がエルディアスコングに迫ったわけではないってことか? なら、こいつをここまで興奮状態に追い込んだ何かを見つけることができれば、倒すなり追い払うなりできるってことか)


 最高の結果は倒すことだが、それが無理なら全員で生きて戻るのが次に良い結果なはずだと竜胆は考える。

 とはいえ、最後の最後まで倒すという最高の結果を追い求めることも諦めたくはない。

 常に憧れ続けたプレイヤーになれたのだから、今回も簡単には諦めたくなかったのだ。


(考えろ、思考を止めるな。エルディアスコングを倒す方法を必ず見つけ出せ!)

『……ウホォォ……グルフオオアアアアァァッ!!』


 多少理性があったとしても、結局はモンスターだ。

 なかなか攻撃を仕掛ける素振りすら見せない竜胆に業を煮やしたのか、エルディアスコングは雄叫びをあげながら竜胆に突っ込んできた。


「ちっ! もう少し考えさせてくれよ!」


 舌打ちをしながらエルディアスコングの剛腕を回避した竜胆は、二足歩行を主とする生き物の急所となり得る箇所を徹底的に攻撃していく。

 胸、首、頭、柔らかいとされる眼球や口内への攻撃も試してみたが、どれも固い体毛や筋肉に遮られたり、攻撃を嫌ってか必死に防御姿勢を取られてしまう。


(体毛や筋肉がある箇所は仕方ないとして、眼球や口内への攻撃は通用しそうだ。だが、当然だけどそこへの攻撃には気を遣っているみたいだな)


 どれだけフェイントを織り交ぜようとも、眼球や口内への攻撃だけは刃が届かない。

 下級土魔法が使えれば意表を突けるだろうが、すでに岳斗を相手に使っており、魔力枯渇になれば間違いなく一瞬で殺されてしまう。


(ここで勝てる確証のない賭けには出られないか!)


 下級土魔法の使用は諦め、再び思考を加速させる。

 ここで視界の端に恭介が映り込んだ。彼は背負っていた石田を地面に横たわらせており、その手には剣だけではなく、ポイズンスネイクを倒した時に出てきた一本のレア装備が握られていた。


「……これだ!」

『ブルホオオオオォォオオォォッ!』


 両拳を重ね合わせた振り下ろしが竜胆へ迫るが、彼は大きく飛び退いて回避すると、そのまま恭介のところまで後退する。

 振り下ろされた両拳が地面に突き刺さると、大きなクレーターを作るだけでなく、エルディアスコングの足元まで粉砕していた。


「恭介! エルディアスコングを倒すのに協力してくれ!」

「そのつもりだよ。古傷もだいぶ良くなってきた、今なら戦える!」


 恭介の言葉を受けて竜胆が頷くと、再び口を開いた。


「まずはマジックバッグからそれをもっと出しておいてくれ」

「これかい? だが、エルディアスコングの体毛を貫いてダメージを与えることは難しいと思うけど?」

「大丈夫だ、俺に考えがある」

「……分かった、おそらく三本あったはずだからね」


 そう口にした恭介は、手に持っているものとは別に同じものを二本、マジックバッグから取り出した。


「作戦はこうだ――」


 そして、竜胆が恭介に作戦を伝えると、彼は覚悟を決めた表情で力強く頷いた。


「分かった、やろう!」

「頼んだぜ、恭介!」

『ブルホオオオオォォオオォォッ!!』


 体勢を立て直したエルディアスコングの雄叫びをきっかけに、再びの戦闘が始まった。

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