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俺だけのスキル【ガチャ】が世界を救う  作者: 渡琉兎


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第45話:邂逅④

 ――ズバッ!


「……は?」


 伸びたウッドゴーレムの腕が半ばから斬り飛ばされた。

 何が起きたのか分からず、石田は驚きの声をあげることしかできない。


「り、竜胆君!」

「待たせたな、恭介!」


 ウッドゴーレムの拳が恭介へ振り下ろされる間際、彼を発見した竜胆が疾風剣を一閃して腕を斬り飛ばしたのだ。


「な、なななな、なんでお前がここにいるんだ! がが、岳斗さんは、どうしたんだ!!」

「あいつなら足止めしてやったよ」


 石田の問い掛けへぶっきらぼうに答えると、竜胆はすぐに恭介へ駆け寄った。


「どうしてポーションを使わなかったんですか? 下級や中級でも、多少は痛みを緩和できただろ?」

「これは竜胆君のだからね、勝手にはできないさ」


 そう答えた恭介に、竜胆は苦笑を返した。


「まったく、面倒な性格しているよな、恭介は」

「はは、前のパーティメンバーにも、似たようなことを言われた気がするよ」

「自覚があるなら、さっさとポーションを取り出して使うんだ。俺が許可しているなら問題ないだろう?」


 竜胆が笑いながらそう口にすると、恭介は微笑みを返して頷いた。


「そうさせてもらうよ、ありがとう」

「それはこっちのセリフだ」


 恭介がマジックバッグからポーションを取り出すと、その光景を見ていた石田が叫んだ。


「ふざけるな! ぼ、僕の苦労を、無駄にするんじゃない! いけ、ウッドゴーレム! あいつもろとも叩き潰せ!!」


 腕を斬られたとはいえ、元は植物だ。

 切断面から茎が伸びると、落ちていた腕と融合して再び完全な姿を取り戻したウッドゴーレムは、ターゲットを竜胆に変えて突っ込んでいく。


「石田君の相手は私がやろう。だから竜胆君は――」

「いや、待ってくれ、恭介」


 ポーションを飲んで古傷の痛みも多少は緩和された恭介が立ち上がったが、竜胆はそんな彼を制止した。


「どうしたんだい?」

「ウッドゴーレムに俺のスキルが発動するのか、試してみたいんだ」


 現状、モンスターには発動して、協会が持つ疑似モンスターには発動しなかったことまでは確認できている。

 しかし、プレイヤーが作り出したゴーレムに通用するのか否か、それを竜胆は知りたかった。


「倒せるのかい?」

「愚問だな」

「……そうだね、確かにそうだ」


 恭介は僅かな時間ではあるものの、竜胆の強さを間近で見ている。

 相対したウッドゴーレムの実力と竜胆の実力を比較して、竜胆に軍配が上がると予想した。


「それじゃあ私は周囲を警戒するとしよう。……気になることもあるしね」

「気になること?」

「よそ見をするなああああっ!」


 恭介の言葉に疑問を抱いた竜胆だったが、ウッドゴーレムが腕を伸ばしてきたことで思考を切り替える。

 先に仕留めるべきはウッドゴーレムだ。


「はあっ!」


 半径一〇メートル以内に恭介がいることでスキル【共鳴】が発動、竜胆の身体能力が僅かに上昇していた。

 繰り出されたウッドゴーレムの腕が細切れとなり、竜胆は間合いを一気に詰めていく。


「腕だけじゃなく、体も細切れにしたら終わってくれるか?」

「くそっ! ふざけやがって!」


 細切れになった腕が鋭利な植物の棘となり、背後から一直線に竜胆の背中へと襲い掛かる。


「甘い!」


 間近の棘を斬り飛ばしながら、態勢を低くして残りの棘を回避する。

 棘は進行方向にあった木々を貫きながら、最後は巨大な岩に突き刺さり止まった。


「当たれば体に穴が開いてたな」

「余裕ぶりやがって! それなら、躱せないくらい大量の棘で穴だらけにしてやる!」


 石田の宣言通り、正面に立つウッドゴーレムの体から大量の棘が生成されると、竜胆めがけて撃ち出されていく。

 素早い動きで棘を回避していくと、竜胆は小さく舌打ちをした。


「ちっ! 面倒だな!」

「ひひっ! どうだ、僕の木魔法は!」


 竜胆の舌打ちを聞いた石田は自分が優位な立場にあると勘違いしていた。


「お前の木魔法は、どうってことないな」

「なっ! くそっ、くそっ! どいつもこいつも僕をバカにしやがって!」


 挑発されたとも勘違いした石田がさらに苛烈な攻撃を仕掛けていく。魔力の消費が膨大となり、徐々にではあるが彼の顔色が青白くなっていた。

 とはいえ、竜胆が気にしていたのはそんなことではなかった。


(無駄な魔力消費のせいで、ウッドゴーレムが小さくなっていやがる! これじゃあ倒す前に、勝手に消えてしまうじゃないか!)


 勝手に消えられてしまえば検証のしようがないと、竜胆は別のところで焦りを覚えていた。


「無駄に攻撃をしてんじゃないぞおおおおっ!」

「無駄、無駄、うるさいんだよおおおおっ!」


 ここで魔力枯渇になるのを覚悟した石田が蔦を伸ばして竜胆の動きを封じに掛かる。

 しかし、木魔法の使い手に取って相手の動きを封じるのは初歩中の初歩であり、竜胆が警戒していないわけがなかった。


「ここに来て初歩の動きとか、想定していないわけがないだろうが!」


 地面を強く蹴りつけて前方へ大きく跳躍し、伸びてきた蔦を回避する。

 そのままの勢いで疾風剣を構えると、ウッドゴーレムの体がすれ違いざまの一閃で上下に分かたれた。


「……まあ、予想通りか。ガチャは発動しないよな」


 疑似モンスターで発動しなかったのだから、プレイヤーが作り出したモンスターでもないゴーレムで発動するわけがないと、一つの検証を終えて剣を鞘に戻した。


「……ふざ……ける、な……」


 そして石田は魔力枯渇となり、白目をむいてその場に倒れてしまった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 使えば助かる物を使わずに死なれた方が よほど嫌だろうとは良い歳した大人なのに 解らないもんかなぁ、、、
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