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俺だけのスキル【ガチャ】が世界を救う  作者: 渡琉兎


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第31話:規格外の新人

「……な……なな……なんじゃこりゃああああぁぁああぁぁっ!?」


 竜胆が洞窟に入ってから三時間後、救援のために洞窟に入ってきた恭介が驚きの声をあげた。

 それもそうだろう、洞窟最奥だけでなく、その手前の部屋にも大量のドロップ品が転がっており、さらに竜胆はEランクプレイヤーであるにも関わらず、たった一人でCランク相当のモンスターであるクイーンアントを倒してしまったのだから。


「お疲れ様です、矢田さん」

「……あ、あぁ、お疲れ様……って、なんで君はそんな普通なんだい!?」


 疲れが見え隠れしているものの、竜胆の声音は扉の外で会話をしていたその時と変わらず、恭介は突っ込まずにはいられなかった。


「……ほ、本当に竜胆君が一人でクイーンアントを倒したのかい?」

「他に誰かがいるように見えますか?」

「……はは、本当に君はすごいな。規格外というのは君のようなことを言うんだろうね」


 若干表情が引きつっているように見えるが、竜胆は気にすることなく恭介へお願いを口にする。


「すみません、矢田さん。ここもそうなんですが、一つ前の部屋にもドロップ品が大量に転がっていまして……」

「あぁ、見て来たよ。というか、見ざるを得なかった言った方がいいかな」

「あはは……そ、それで、さすがに量が量なので、きちんとした報酬をお支払いします。なので、協会まで運ぶのを手伝って――」

「報酬はいらない、最初に言っただろう?」


 再びお願いをしようとした竜胆だが、さすがに量が量である。報酬も支払わずに協力してもらうのは気が引けるところなのだが、恭介は頑として報酬を断った。


「で、でも……これだけの量ですよ? さすがに不確定な何かあった時に力を貸す程度じゃ釣り合わない気がするんですが……」

「……まあ、竜胆君の気持ちも分からなくはないか。そうだなぁ、報酬というよりかは、ソルジャーアントからドロップしたレアアイテムを分けてくれないか?」

「もちろん! ……というか、それだけでいいんですか? クイーンアントの素材でもいいですよ!」


 ソルジャーアントは群れた時にはDランク相当の実力とされているが、一匹だけで見た実力はEランク相当、つまり最弱の部類に入るモンスターだ。

 レアアイテムとはいえ、そんなEランク相当のモンスターからドロップするアイテムなんてたかが知れている。

 他にも何か渡せるものがないか、竜胆は本気で考えていた。


「さすがにクイーンアントの素材は受け取れないよ。それに、ソルジャーアントの素材は量が取れるから価値は低いんだけど、新人冒険者が手に入れることのできる装備を作る素材としては打ってつけなんだ」

「そうなんですか?」

「あぁ。私の知り合いの鍛冶スキル持ちに譲ってあげたいんだよ」


 そう口にした恭介は満面の笑みを浮かべていたが、それでは結局のところ彼にお礼ができていないのではないかと思えてならない。


「……矢田さん」

「なんだい?」

「本当に、本当に、ほんっっっっとうに! 何か手助けできることがあったら声を掛けて下さいね! 連絡先を交換しましょう、連絡先を!」

「そうだね、分かった。でもその前に、ドロップ品をマジックバッグに入れていこうか」

「あっ! ……そ、そうですね、そうしましょう」


 戦闘以外のことは扉を出てから、というのがプレイヤーたちの基本とされている。

 現状、周囲に二人の脅威となる存在がいなかったこともあり会話を続けていたが、それは情報の交換だったからだ。

 連絡先の交換は扉の中でやることではないと、恭介は先輩プレイヤーとして暗に助言をしてくれていた。


「よし、それじゃあ急ごう。たぶんだけど、ドロップ品を回収し終わる頃には一〇時間経過しそうだからね」

「えぇっ!? も、もうそんな時間なんですか!!」

「あれ、気づいていなかったのかい? 時間配分、確認はとても大事なことだから、次からは気をつけることだね」

「は、はい!」


 恭介から注意を受けた竜胆は、大慌てでドロップ品を掻き集めてはマジックバッグに入れていく。

 最奥の部屋だけではなく、一つ手前の部屋にも転がっているのだから、当然時間が掛かってしまう。

 最終的には一〇時間を僅かに超えてしまったが、恭介も現場にいたということでお咎めなしとなった。


「明日も来るのかい?」

「はい! 明日も、明後日も来ます!」

「そ、そうなんだね。となると……三日後の金曜日は気をつけてくれ。私が休みだから、今日みたいにドロップ品が大量に出たら大変だ」

「そうなんですか? ……それじゃあ、金曜日はちょっと考えたいと思います」


 竜胆がそう口にすると、恭介は満足そうに頷いた。


「そろそろ戻ろうか。もしかすると、他の警備兵たちが心配して探しに来るかもしれないからね」

「す、すみませんでした」

「気にしないでくれ、私もいいものが見れたと思っているからね。外に出たらそのまま協会へ向かうってことでいいかな?」

「はい。何から何までありがとうございます」

「気にしないでくれ。これも仕事だからね」


 こうして竜胆は恭介と一緒に扉を出ると、その足で協会へ向かい大量のアイテムを換金することになった。

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