第171話:それぞれの報告②
「どうしたんだ、影星?」
「裏の組織が、お前の存在を探り始めている」
影星から「裏の組織」と聞いた竜胆は、思わず首を傾げてしまう。
「裏の組織って、なんだ?」
「テレビのニュースとかで聞いたことがあるかもしれないが、プレイヤー協会に登録せず、裏で暗躍するプレイヤーがいることは知っているか?」
「そういう奴らがいることは知っているけど……って、まさかそういう奴らが?」
竜胆がそう口にすると、影星は無言で頷いた。
「だけど、どうしてそんな奴らが俺のことを探ってきているんだ?」
「ただドラゴンを倒しただけであれば、問題はなかっただろう。しかし、お前から放たれた金色の光は、話が別だ」
モンスターを倒し、プレイヤーの傷を癒した金色の光。
あの光が手に入れば何でもできると考えた組織が、光の持ち主を探し始めたのだと、影星は語る。
「なるほど。俺というよりかは、金色の光の持ち主を探し始めたのか」
「お前のあの光は、それだけ規格外であり、奇跡的な力であり、驚異的な力でもあるということね」
「そんな、お兄ちゃん……」
影星がそう締めくくると、鏡花が心配そうな声を漏らして竜胆を見た。
「安心しろ、鏡花。俺はそんな奴らに負けるほど、弱くはないさ」
「甘いな、天地竜胆。そういう奴らは絡め手だって気にせず使ってくる。お前の危険だけではなく、お前が光の持ち主だと調べが付けば、天地鏡花を狙ってくることだってあるのよ」
「私を、狙う?」
ゴクリと唾を飲み込んだ鏡花だったが、ここで彼女は自分が竜胆の足を引っ張ってはいけないと、改めて思うようになっていた。
それはつぎはぎのドラゴンとの戦いで、自分が竜胆の足を引っ張ってしまったという思いからくるものだ。
「その時は俺が、そいつらをぶっ飛ばせばいい――」
「ううん。違うよ、お兄ちゃん」
竜胆が鏡花を守るスタンスを取ろうとすると、そこへ鏡花自身が割って入った。
「……どうしたんだ、鏡花?」
「守られてばかりじゃダメなの。私だってプレイヤーだもの、降りかかる火の粉は、自分で振り払わなきゃ!」
「ふっ、その通りだ。天地鏡花」
鏡花の意思を確認したかったのか、彼女の言葉を聞いた影星は、満足そうに頷いた。
「お前が望むなら、私が鍛えてやろう。どうだ、天地鏡花?」
「お願いしたいです、影星さん!」
「あー! それなら私も参加したいですよ、影星さん! 鏡花ちゃん!」
「いいんですか、彩音さん!」
話が竜胆の思わぬところへ走り出し、彼はただ女性陣のやり取りを眺めていることしかできないでいる。
「……止めねぇのか、竜胆?」
そこへ国親が声を掛けると、竜胆は肩を軽く竦めながら答える。
「鏡花は意外と頑固なんだ。やると決めたことは、絶対にやる女の子なんだよ」
「そうか。まあ、あいつなら間違いなく強くなるんじゃねぇか?」
「国親のお墨付きなら、間違いなく強くなるだろうな」
「……お前、本当に大丈夫か? 最初はもっと、疑り深い奴じゃなかったか?」
国親のことを信頼しているような言い回しに、国親本人が訝し気な表情で竜胆を見た。
「お前はもう、背中を預けた仲間だからな。信頼するのは当然だろう?」
「……んとに、恥ずかしいことを恥ずかしげもなく言う奴だな、お前は」
「変なことは言ってないだろう?」
「はいはい、そうですね。……ったく、恭介や支部長が気に入るわけだ」
肩を竦めながらそう口にした国親は、竜胆に表情が見られないよう視線を逸らしながら、ニヤリと笑った。
(……みんな、前に進もうとしている。俺も負けてはいられないな)
目の前の光景を眺めながら、竜胆は自分ももっと強くならなければならないと、心の底で強く思うのだった。
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