第170話:それぞれの報告①
それから竜胆は、鏡花たちからの報告を聞くことになる。
それは竜胆が意識を失ってからのことであり、彼が知り得ないことでもあった。
「つぎはぎのドラゴンは倒されたけど、港は崩壊か……」
「まあ、あれだけの規模のモンスターが現れたら、港でなくても壊れてしまうよね」
恭介が冷静にそう口にするも、竜胆は悔しそうに拳を握り締める。
「俺たちは神でもなんでもねぇ、プレイヤーだ。できることとできないことの線引きはしっかりしねぇと、自分が潰れるぞ」
そこへ国親がそう口にした。
口調は乱暴だが、その内容には竜胆を心配する気持ちが十分に乗っている。
「……ありがとう、国親」
「はっ! 別に礼を言われることじゃねぇ、当たり前のことだからな」
竜胆がお礼を伝えると、国親は嫌そうな顔を浮かべて窓の方へ視線を向けた。
「本当に大丈夫なんですよね、竜胆さん?」
「あなたは自分で背負いすぎる節がある。そこへ改めなければならないわよ?」
「彩音も影星も、ありがとう」
次に声を掛けてきた彩音と影星は、竜胆の言葉を素直に受け取った。
「復興はもう進めている。竜胆プレイヤーはこちらのことは気にすることなく、まずは体の状態をしっかりと確認してもらうんだな」
「ですが、支部長。俺はもう十分に動けるんです。不思議なんですが、目を覚ましてからすぐに快調なんですよね」
そう口にした竜胆は軽く腕を回して見せたが、拳児は首を横に振る。
「ダメだ、まずは休め、竜胆プレイヤー」
「ですが……」
「強いのはこの場にいる全員が知っているが、俺たちは強いプレイヤーに全てを背負わせるつもりはない。プレイヤーの数も少なくはないのだから、万全に動けるプレイヤーが動けばいい」
影星に言われたことを改めて拳児が口にし、竜胆は小さく息を吐きながら頷く。
それでもできることは本当にないのかと思い、口を開く。
「……なあ、恭介。マジックバッグに入っているポーションはまだ残っているのか?」
「残っているけど……いいのかい?」
竜胆が何を言わんとしているのかを理解し、恭介はすぐに確認を取った。
「構わない。今の俺にできることは、それくらいだからな」
「分かったよ。支部長、竜胆君がポーションを提供してくれるようです」
恭介はそう口にしながら、マジックバッグからポーションを取り出して拳児に見せた。
「そういえば、竜胆プレイヤーは大量のドロップアイテムを持っているんだったな」
「下級ポーションも中級ポーションも、一〇〇本近くあるんですよ」
「ひゃ!? ……提供では申し訳なさすぎる。きちんと協会で買い取ってから、プレイヤーたちに提供しよう」
「え、別にいいですよ?」
竜胆は本気で無償提供しようと思っていたのだが、それはダメだと拳児は強く首を横に振った。
「一プレイヤーからそれだけの数のものを提供してもらえば、協会の威厳にかかわるんだ。まあ、こちらの理由だな」
「なるほど」
「それに、竜胆プレイヤーが協会所属と思われると、いろいろと面倒ごとに巻き込まれかねないからな。それだけは絶対に阻止しなければならない」
協会のためでもあり、竜胆のためでもあると拳児は語る。
「支払いはプレイヤー口座に入れておくから、退院してから確認してくれ」
「本当にいいんですか?」
「もちろんだ。良い値段で買い取ってやるから、期待しておいてくれよ」
ニヤリと笑いながら拳児が伝えると、恭介と共に病室をあとにした。
「……国親、その左腕は、治らないのか?」
恭介と拳児を見送った竜胆は、国親に視線を向けてそう問い掛けた。
「あぁん? てめぇも恭介と同じで俺様の心配してんのか?」
「いや、それはそうだろう。腕を失ったんだぞ? もしもエリクサーが手に入ったら、俺はお前に――」
「これを見ろ」
竜胆の言葉を遮るように国親が口を開くと、その場で雷神重鎧を発動させた。
「俺にはこの左腕がある。だから気にすんな、いいな!」
「……分かったよ、国親」
お礼は言わない。
言ったところで、国親は照れて視線を逸らしてしまうからだ。
だから竜胆は、心の中で国親に感謝の気持ちを抱くことにした。
「私からも報告がある、天地竜胆」
するとここで、影星が割って入るようにして口を開いた。
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