第161話:切り札
「……はっ! 内臓から、痺れろや!」
体を食いちぎられたはずの国親だったが、その表情は獰猛な笑みを浮かべていた。
「重鎧、解放!」
『ガルルルル……ガルア?』
食いちぎられたと思っていた国親の肉体は、雷神重鎧によって作り出された鎧の部分だった。
国親は巧みに雷神重鎧を作り出し、自らの肉体からわずかにずらして食いつかせ、雷のエネルギーをドラゴンの体内で解放させた。
『ギョバガベガガガグゴゲボグガギャ――ッ!?』
ヴォルテニクスが貫いての雷撃とはまた違い、内臓を直で雷撃が襲っている。
途中から声が出なくなり、口から黒煙を吐き出した。
「大丈夫なのか、国親?」
目の前で国親の笑みを見た恭介だが、それでも心配せずにはいられない。
そんな恭介の問い掛けに、国親は右手で軽く背中を叩いて応える。
「やるぞ、恭介!」
「……分かった!」
「ポーションはちゃんと飲んでおけよ!」
そこへ竜胆が声を掛けると、二人の横を颯爽と駆け抜けていく。
「……ちっ、よく見ていやがるな」
「ど、どういうことだい?」
「てめぇは冷静そうで、そうじゃねぇな。本当にスキルを進化させたのか? いいからポーションを寄こせ」
「……わ、分かった」
小さく息を吐きながら国親がそう口にすると、恭介は困惑しながらポーションを手渡した。
それを全て飲み干した国親は、大きく息を吐いてから、再び雷神重鎧を発動させた。
「……よし、いける」
「本当に大丈夫なのか、国親?」
「はっ! 大丈夫じゃなくても、今はやらなきゃならねえだろうが!」
大丈夫ではないと告げているのと同じだが、国親は無理やり獰猛な笑みを浮かべて言い放ち、駆け出した。
「あっ! 待ってくれ、国親!」
やらなければこちらがやられることは、恭介も理解している。
普段の恭介であれば理解しているからこそ、すぐに行動へ移すこともできただろう。
「……僕は予想以上に、国親のことを大事な友と思っていたんだな」
相手が国親だからなのか、恭介の判断は著しく鈍っていたと、自分でも理解した。
故に、恭介は国親を犠牲にしてはならないという意識のもとで行動することを心に決め、駆け出した。
「なんだ、てめぇ?」
「死なせないよ、国親」
「はっ! そう簡単に死ぬかよ!」
「分かっているよ。だけど、これは僕の自己満足さ」
そうして恭介と国親は、別れて行動するのではなく、並び立ってドラゴンへ攻撃を仕掛けていった。
(さて、恭介と国親は大丈夫そうだな。そして俺は……上級魔法剣術を発動できるほどの魔力がもうない)
苦しんでいるドラゴンの反撃に鋭さはなく、思考しながらでも戦うことができている。
しかし、モンスターの本能で動き始めたドラゴンを前に、油断は禁物だ。
今の自分に何ができて、何ができないのか、取捨選択をしながら、決定的な一撃をどうするのかを、竜胆は考えていく。
(反射はもう使ってしまったし、上級魔法剣術も使えない。打開策を見出すのに必要なのは……だが、どれを使う?)
竜胆が考えていたのは、スキル【融合】を使っての新たなスキルの獲得だ。
しかし、どれとどれを組み合わせれば、この場を打開できるスキルを獲得できるのか、それが分からない。
(上級魔法剣術、鉄壁反射、悪食、死地共鳴。考えろ、考えるんだ!)
このまま時間だけが経過すると、ドラゴンに負わせた傷もいずれは回復してしまうかもしれない。
時間に余裕はなかった。
「……スキル【融合】発動! 選ぶのは――【上級魔法剣術】と【悪食】!」
スキル名だけを見れば、全く関連性のないスキルに思えるが、竜胆はスキル効果に目を向け、わずかな可能性に懸けてスキル【融合】を発動させた。
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