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俺だけのスキル【ガチャ】が世界を救う  作者: 渡琉兎


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第16話:モンスター狩り

「はあっ!」

『ガルアッ!?』


 東の森に入った竜胆は、早々にモンスターからの襲撃を受けていた。

 だが、出てきたモンスターはゴブリンやワイルドウルフといったランク査定で戦ったモンスターが多く、苦も無く倒すことができた。


【五回のガチャでアイテム【下級ポーション】を二個獲得しました】

「……はぁ。下級ポーションかぁ」


 手に入った下級ポーションを手に、竜胆はため息をつく。

 下級ポーションの市場価格は五〇〇円前後とされており、在庫も豊富に出回っている。

 売ったところで子供のお小遣い程度にしかならず、荷物がかさばってしまうと頭を掻いた。


「これ、どうしようかなぁ。さすがに捨てていくわけにはいかないし」


 結局、竜胆は鞄に下級ポーションを詰め込み移動することにした。

 森の奥へ進むと木々の隙間が密となり、木々の隙間から差し込んでいた日の光も遮られて薄暗くなっていく。

 すると、森の中には似つかわしくない音が響いてきた。


 ――ガシャン、ガシャン。


「……なるほど、ランク査定に出てきたモンスターは、ここに出てくるモンスターってことかもしれないな」


 現れたのはゴーストナイト、さらに複数のゴブリンとワイルドウルフが行動を共にしていた。


「これは、気を引き締めないとヤバそうだな」


 冷静に戦況を把握、ゴーストナイトが二匹、ゴブリンが四匹、ワイルドウルフが六匹。

 視線を忙しなく左右へ動かしてモンスターの動きを把握する。


『ガルアアアアッ!』


 最初に飛び込んできたのはワイルドウルフだ。

 機動力の高いワイルドウルフが動いたということは、次いでゴブリンも動き出すだろうと判断した竜胆は、一撃必殺を意識して疾風剣を振り抜く。

 袈裟斬りから切り上げを放ち二匹を仕留め、右から飛び込んできたワイルドウルフには上段斬りを放ち真正面から真っ二つにする。

 背後へ回り込んでいたワイルドウルフの二匹が鋭い爪を振り抜いてくるが、竜胆はしゃがみ込み一匹を回避、もう一匹には刺突を放ち眉間を貫く。

 素早く振り返りながら横薙ぎを放つと、再び飛び込んできていたワイルドウルフの頭を切り飛ばした。


『ガルアッ!』

「ぐっ!?」


 しかし、最後の一匹が竜胆の左足に噛みつき、機動力を削がれてしまう。


「くそっ!」

『ギャンッ!?』


 疾風剣を突き刺してワイルドウルフを仕留めたが、次いでゴブリンが棍棒や錆びたナイフを振り上げて竜胆を囲んできた。

 モンスターの知能は低いと言われているが、獲物を狩るという一点においては効率的に動くことがある。

 それは獲物が弱っているのを認識した時であり、機動力を削がれた竜胆を見て今がまさにその時だとゴブリンは判断した。


「下級ポーション、持ってきてよかったよ」


 冷や汗を流しながらも竜胆は下級ポーションを噛みつかれた左足にジャバジャバとぶっかける。

 すると、傷はみるみるふさがっていき、痛みも和らいでいく。


『ゲギャッ!?』

「……よし、全然動けるな」


 獲物が弱っていると判断したゴブリンだったが、竜胆が下級ポーションを使ったことでそうではなくなった。

 こうなると、ゴブリンの知能では効率的な動きを取ることは難しくなる。

 故に、ゴブリンは奇声をあげながら竜胆へ突っ込んできた。


「この程度なら余裕だな!」


 一匹、二匹と順番に、そして確実に倒していく竜胆だったが、三匹目を倒したところで視界の端で動くものに気がついた。


「ゴーストナイトか!」

『フシュウウウウッ!』


 最後のゴブリンを正面に捉えたところで、ゴーストナイトが右から鋭く剣を振り抜いてきた。

 竜胆は体を捻りゴーストナイトの剣を回避、素早く首を刎ねようと疾風剣を横薙ごうとするが、そこへゴブリンが飛び込んできたので中止、大きく飛び退く。

 間一髪回避することに成功したが、もう一匹のゴーストナイトが背後へ回り込んでおり、風切り音を響かせながら横薙ぎが竜胆へ襲い掛かった。


「ぐおっ!?」


 剣と体の間に疾風剣を滑り込ませることに成功し腕を切られることは防いだが、ゴーストナイトの膂力に押されて弾き飛ばされてしまう。


(こいつ、スタンピードの時にやり合った奴よりも強いぞ!)


 今の竜胆はプレイヤーになっており、下級剣術のスキルを獲得している。

 他にもモンスターがいるとはいえ、それでも押されているということに驚きを隠せない。


「……ふぅ。まずはゴブリンを倒す必要がありそうだな」


 ワイルドウルフと他のゴブリンが先行して前に出てきてくれたことを、今となってはありがたく思ってしまう。

 もしも連携して攻撃されていれば、竜胆ではひとたまりもなかったからだ。


「ん? あいつ、何をやっている――!?」


 冷静に戦況を打開しようと思考を巡らせていた竜胆だが、ここで予想外の展開が訪れる。

 ゴブリンが前に出ようとしたところで、強い方のゴーストナイトがゴブリンを竜胆へ蹴り飛ばしたのだ。


「くそっ!」

『ギャバッ!?』


 慌てて疾風剣を振り下ろしてゴブリンを仕留めたものの、視界が一瞬だがゴブリンに覆われてしまった。

 その隙を突き、別のゴーストナイトが間合いを詰めており、すでに剣を振り上げていた。


「ゴブリンを囮にしたのか!」

『フシュウウウウッ!』


 渾身の力で振り下ろされた剣に向けて疾風剣をぶつける竜胆。

 耳をつんざくほどの金属音が森に響き渡ると、竜胆とゴーストナイトは鍔迫り合いを繰り広げる。


(くそっ! 強い方のゴーストナイトはどこに行った! 早くこいつを片づけて一対一で勝負しないと――!?)


 直後、鍔迫り合いをしていたゴーストナイトの体から剣が飛び出した。

 意表を突かれた竜胆は回避が間に合わず、左わき腹を貫かれてしまう。


「がああっ!?」


 苦痛に顔を歪めながら、竜胆は限界まで飛び退いて鞄から二本目の下級ポーションを取り出して傷口にかけていく。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……こいつ、同じゴーストナイトを貫いて、俺を攻撃しやがった!」


 貫かれた方のゴーストナイトはガタガタと鎧を振るわせた後、絶命しバラバラになってしまう。

 そして、その背後から目があるだろう部分を赤く光らせた強い方のゴーストナイトが剣先を竜胆へ向けた。

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