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俺だけのスキル【ガチャ】が世界を救う  作者: 渡琉兎


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第156話:怒りと怒り

 竜胆たちがもう少しで港に到着するとなった、その時だ。


 ――バチバチバチバチッ!


 港の方から強烈な雷光が放たれ、雷撃が周囲へ飛び散った。


「な、何が起きたんだ!」

「まさか、炎に加えて雷を使うの!?」


 竜胆と彩音が危険を察知した声を上げたが、恭介は違った。


「……ち、違う。今の雷は、まさか!」


 そう叫んだ恭介は、合わせていた速度を加速させ、一人で港へ突っ込んでいく。


「待て! 恭介!」


 竜胆が声を掛けるも恭介は止まらず、仕方なく全員で加速する。

 港に入ってからすぐに立ち止まっている恭介を見つけたが、彼の視線の先に広がっていた光景を見て、竜胆は愕然としてしまう。


「…………くに、ちか?」

『グルルルルゥゥ』


 竜胆は思わず声を漏らす。

 そこには巨大なドラゴンが口を真っ赤に染めて鎮座しており、魔獣の目の前には左腕を失った国親が倒れていた。


『……くくくく、なかなかに美味だったぞ』

「喋った!? 魔獣が!!」

「Sランク相当の魔獣だ! 気をつけなさい!」


 突如として喋り出したドラゴンに彩音が驚きの声を上げると、影星が警戒するよう叫ぶ。

 しかし、恭介の耳には届いておらず、すでに抜いていた剣を強く握りしめる。


「…………うおおおおおおおおっ!!」

「ダメだ、恭介!」


 怒りのままに駆け出した恭介は、すでにスキル【戦意高揚】を発動させており、竜胆の制止が耳に届いていない。


『貴様もなかなか美味そうだな!』

「死ねええええっ!」

「…………ろ」

「――!?」


 恭介が剣を振り抜こうとした直後、死んでいると思っていた国親の声が耳に届く。

 とても微かで、竜胆の制止の声よりもか細いものだったが、それでも恭介はしっかりと聞き取っていた。

 瞬時の判断で恭介は迫ってきていたドラゴンの口に剣を縦にして突っ込む。

 噛みつこうと口を閉ざしたドラゴンは、剣に邪魔をされて本当にわずかだが、完全に閉じるまでのタイムラグを作り出す。

 その時間で体勢を変え、ドラゴンを蹴りつけ国親の方へ軌道を変えると、彼を抱えて一気に距離を取った。


「……は……やるじゃ、ねぇか」

「大丈夫か、国親!」


 恭介にしては珍しく声を荒らげているが、国親は構うことなく言葉を続ける。


「……あいつは、ヤベェ。…………全員で、戦え……じゃなきゃ、Sランクの到着を……ま……て…………」

「おい、国親! くっ、ポーションを!」


 気を失った国親にポーションを使おうとマジックバッグに手を入れた恭介だったが、そこへドラゴンが口を開く。

 口内には炎の真っ赤な光が揺らめいており、ブレスが吐き出されるのは明白だ。


「アイスショット!」


 そこへ鏡花のアイスショットが撃ち出され、ドラゴンの口内へ飛び込んだ。


『グルアッ!?』


 ブレスが中断されたドラゴンは黒煙を吐き出すも、ならばと巨体で踏みつぶそうと前に出てきた。


「影縫い!」

『ぐぬっ!?』


 そこへ影星の影縫いが発動され、ドラゴンの動きが止まった。


『この程度で、止められると思うなよ、人間どもがああああっ!』

「くっ! 外れるわ!」


 それでもドラゴンを動きを止められたのは一瞬で、すぐに影縫いから解放されてしまう。


「十分よ!」

「行かせない!」


 そこへ彩音と竜胆が飛び掛かり、ドラゴンをその場に足止めする。


「目を開けろ、国親!」

「…………ったく。一人で足止めしてたってのに、たたき起こすのかよ」


 恭介が取り出したのは、中級ポーションだ。これが今持ち合わせている中での最高のポーションだった。

 故に、傷は塞がったとはいえ、左腕は今も失われたままになっている。

 しかし、上級ポーションであっても失われた部位を再生させることはできない。

 そんな国親の体を見て、恭介は歯噛みせざるを得なかった。


「……すまない、国親。僕たちの到着が遅れたから!」

「何を言ってんだか。どうせ他のプレイヤーを助けてたんだろ? 俺もそうする。いや、そうしたからこうなったんだ、気にすんな」


 そう口にした国親は、大きく息を吐きながら、右手を恭介の肩に置き、一気に立ち上がった。


「……まさか、戦うつもりなのか!?」

「あぁん? 当然だろう。俺にとっては第二ラウンドだ!」


 そう口にした国親は獰猛な笑みを浮かべると、スキル【雷神重鎧】を発動させる。

 すると、雷の鎧が国親の左腕を形作り、そこに生身の腕があるように動かした。


「こいつがあれば、俺はまだやれるぜ?」

「……まったく、君って奴は」


 国親がそう告げると、恭介は呆れたように呟き立ち上がると、並び立つ。


「全員で戦えって言うのは、こういうことだったのかい?」

「当然だ。俺を舐めんじゃねえぞ?」


 国親が立ち上がり、ヴォルテニクスを構えている。

 その姿が竜胆たちを鼓舞し、全員でドラゴンを倒そうという思いを一つにした。


「こいつを倒す! みんな、やるぞ!」

『ふははははっ! 面白い! 人間を根絶やしにする前に、貴様らを食らってやろうぞ!』


 こうして、竜胆たちとドラゴンの一戦が幕を開けた。

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