第149話:久しぶりのガチャ
星4の二重扉を攻略した時は、スキル【ガチャ】の能力が封印されていた。
だからか、竜胆はスキル【ガチャ】の発動がとても久しぶりに感じられた。
【初めてイレギュラーボスモンスターを討伐しました。レア装備、もしくはスキルを獲得します】
(同族食い、やっぱりイレギュラーボスだったか。まあ、星3の扉のボスにしては、異様な強さだったからな)
納得したように竜胆がウインドウを見つめていると、ガチャの結果が表示される。
【同族食いのスキル【悪食】を獲得しました】
「……あ、悪食だって?」
同族食いがモンスターを食らっている姿を見たあとに、スキル【悪食】を獲得したからか、竜胆はあまり嬉しいと感じることができなかった。
「でもまあ、効果によっては使えるかもしれないし、確認してみるか」
そう呟きながら、竜胆はステータスウインドウを開く。
「……食事によって摂取する毒を完全に分解でき、毒が強ければ強いほど、ステータスを永久的に上げることができるだって!?」
最初こそ微妙なスキルだと思っていた悪食だが、最後の一文を見て驚きの声を上げた。
「お兄ちゃん!」
「どわあっ!? ……なんだ、鏡花か」
ステータスの確認にばかり意識が向いていて、鏡花が駆け寄ってきていることに気づかなかった。
背中に抱き着かれ、思わず声を上げてしまった竜胆だったが、すぐに柔和な表情に変わり、鏡花の頭を優しく撫でた。
「心配、したんだから!」
「ごめんな。だけど、こうして勝っただろう?」
「勝つならもっと余裕を持って勝ってよね!」
「いや、そんな無茶な」
毎回余裕を持って勝つのは無理だと思い、竜胆は苦笑いしながら思わず呟く。
「でも、今回は僕も冷や冷やしちゃったよ」
「本当ですよ! もっと早く切り札を出してもよかったじゃないですか!」
そこへ恭介と彩音も同じ意見だと言いながらやってきた。
「いや、さすがに上級剣術と魔法剣がなくなることを考えたら、リスクが高いと思ってな。いらないスキルを獲得した時に融合を試そうと思っていたんだ」
完全に予想外のタイミングで融合を使用してしまったが、結果オーライだったのはラッキーだったと言えるだろう。
「それにしても、ものすごい剣術だったね。上級剣術がさらに育ったんじゃないかい?」
「いや、上級魔法剣術ってのに変わったんだ」
「じょ、上級魔法剣術ですか? 聞いたことがないですけど?」
スキル【上級魔法剣術】の名前を聞いた彩音が首を傾げる。
「まあ、普通はスキルを融合するなんてこと、できないしな」
「そうだね。もしかすると竜胆君は、支部長が期待している通り、モンスターに対して、人間最大の戦力になるかもしれないね」
「そうですね! 竜胆さんが成熟したら、それこそ最強のプレイヤーが誕生すると思います!」
「お前たち、マジで言い過ぎだからな?」
スキル【ガチャ】が規格外であることは竜胆も十分に理解している。
しかし、上には上がいるということも、竜胆は分かっていた。
「Sランクプレイヤーはそれこそ、俺以上の規格外な人が多いんだろ? 確か支部長もSランクだったよな?」
プレイヤーになって少し経ち、ランクの再審査では拳児と手合わせをしたことがある竜胆は、あの時のことを思い出しながら苦笑いする。
手加減をされていたにもかかわらず、拳児の一撃は骨まで響き、冷や汗を吹き出させたことがある。
反射の一撃ですら受け止められてしまい、万事休すとなったところで再審査は終了したのだ。
「あの人、マジで化け物だからな? 俺と一緒にしたらダメだって」
竜胆がそう口にすると、何故か恭介と彩音からはジト目を向けられてしまう。
「……それを竜胆君が言うかな?」
「……本当ですよねー。竜胆さんも十分規格外ですけどねー」
ダブルでも貴重だと言われているスキルを、竜胆は現状で五つ持っている。
その時点で規格外であり、将来性というところで見れば、誰もが最強に至れると考えることだろう。
「さすがだね、お兄ちゃん!」
そして、唯一の肉親である鏡花にまでそう言われてしまえば、否定することはできなかった。
「……ま、まあ、Sランクとはいかないまでも、ある程度は強くなれているよな、うん」
「「ある程度~?」」
「と、とにかく! 扉の攻略は終わったんだから、さっさと地上に戻ろうぜ!」
これ以上は何を言っても恭介と彩音にいちゃもんを付けられると思った竜胆は、早足で扉の核があるだろう奥の部屋へと向かう。
その姿を見た恭介、彩音、そして鏡花は、顔を見合わせたあと、クスクスと笑うのだった。
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