第146話:鏡花の成長
鏡花が最初の扉の攻略を達成させてからというもの、竜胆たちは積極的に星2と星3の扉の攻略を行っていった。
基本的には鏡花だけで攻略を行っていたのだが時折、竜胆たちが手助けをする場面もあった。
そのほとんどが罠に掛かるのを防ぐ場面だったこともあり、鏡花の課題が明確になっていた。
「うぅぅ、また罠に掛かりそうだったよぅ」
「罠の回避は俺も苦手だし、これはもう経験だろうな」
「そんなこと言っても! お兄ちゃんだって罠に気づいて助けてくれたじゃん!」
竜胆の場合は、恭介から気配察知を教えてもらった分、危険に対しても鼻が利くようになっていた。
だからだろうか、扉の中で危ないと思える場所がなんとなく分かってしまう。
ただし、そこが絶対に罠だと確信を持てるには至っていないので、そこを持って竜胆は経験が必要だと口にしていた。
「俺もまだまだなんだよ」
「ぶー!」
「まあまあ、二人とも。鏡花ちゃんのことは私が守ってあげるから、安心してちょうだい!」
「それはフォローになっていないんじゃないかな、彩音さん」
元気いっぱいに守ると口にした彩音を見て、恭介が苦笑しながら声を掛けた。
「でも、竜胆君の言うことは本当だよ、鏡花ちゃん」
「そうなんですか?」
「言っておくが、俺も恭介に気配察知を教えてもらってから、なんとなく分かるようになったくらいだからな。この感覚をもっと研ぎ澄ませたいし、そうするにはやっぱり経験が必要ってことだよ」
「そうですよ! だから鏡花ちゃん、たくさんの扉を経験するためにも、私から離れちゃダメですよ!」
「「……何を言っているんだ?」」
一人だけ関係のない話をしていた彩音に、竜胆と恭介が冷めて視線を向けながら言い放つ。
そんな三人を見ていた鏡花は、最初こそポカンとしていたものの、徐々に笑みを浮かべていく。
「そうだよ、鏡花ちゃん。攻略中に反省するのはもってのほか! 今は気持ちに余裕を持って、楽しく攻略していきましょう!」
「彩音さん……はい! 分かりました!」
どうやら彩音なりに、落ち込んでいた鏡花を励まそうとしていたのだと分かり、竜胆と恭介は顔を見合わせて苦笑した。
「さて、それじゃあ気を取り直して、星3の扉の攻略を終わらせるぞ!」
「うん!」
そうして竜胆が声を掛けると、鏡花は元気よく返事をしてから前を向く。
これなら安心だろうと竜胆も内心で安堵し、彩音に視線を向ける。
彩音も竜胆の視線に気づくと、快活な笑みを浮かべて親指をビシッと立てた。
そこからの攻略は順調に進み、罠があっても気持ちが落ち込むこともなく、鏡花の集中力も切れずに最奥まで進むことができた。
今回の扉も問題なく攻略できると思った、その時だった。
――グチャ。クチャクチャ。グチャ。
最奥のフロアから、何かを咀嚼する音が聞こえてきた。
直後、竜胆は無言で鏡花の前に立ち、彼女の両脇を恭介と彩音が固めていく。
「え? あの、どうしたの?」
「警戒するんだ、鏡花」
「あれはイレギュラーなモンスターだよ」
「まさか、同族食いが出てくるなんてね」
「同族、食い?」
彩音が口にした名前を、鏡花は知らなかった。
『……ゲヒャ?』
同族食いが竜胆たちに気づき、食らっていた獲物から顔を上げた。
「ひいっ!?」
同族食いの口元は真っ赤に染まり、ポタポタと食らった獲物の血が滴っている。
その姿に鏡花は思わず悲鳴を漏らし、その声を聞いた同族食いがニチャァと笑みを浮かべた。
『ゲヒャヒャヒャヒャ!』
「来るぞ!」
「鏡花ちゃんは僕と彩音さんから離れないで!」
「えっ! お、お兄ちゃんは!?」
「大丈夫だよ、鏡花ちゃん! 竜胆さんが強いこと、知っているでしょ?」
飛び掛かってきた同族食いに対して、竜胆はデュランダルを抜き放つと、真正面から突っ込んでいく。
鋭く振り抜かれたデュランダルが同族食いを捉えた――しかし、素早い動きで鋭い爪をぶつけ、大きく後方へ押し返しただけだった。
『ゲゲゲゲッ! ギギャギャ!』
「なんだ、邪魔されて怒ったか? だが、それはこっちも同じなんだよ!」
竜胆がそう声をあげた直後、デュランダルの剣身が炎を纏った。
『ギギッ!?』
「魔法剣。熟練度を上げないといけないからな。お前にはその糧になってもらうぞ!」
戦闘を全て鏡花に任せていたからか、竜胆は久しぶりの戦いに気持ちが高ぶっていた。
「いくぞ!」
『ゲギギギギイイイイッ!』
こうして、竜胆と同族食いがぶつかった。
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