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俺だけのスキル【ガチャ】が世界を救う  作者: 渡琉兎


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第122話:封印

 しばらくして音が止むと、竜胆が見つけた違和感のある壁が自壊する。

 その先にあったものを見て、竜胆と国親は顔を見合わせた。


「ここが二重扉の入口だってことか」

「ヤバい気配がビンビンにしやがるぜ」


 壁が自壊した直後から、先ほどまで感じられなかった強者の気配が感じられる。

 むしろ、二重扉の入口を見つけた二人に対して意図的に放たれているかのような気配でもある。


「こっちに来いって言っているみたいだ」

「だろうな。だが……恭介はどうした?」


 国親の疑問の声には、竜胆も同じの思いを抱いていた。

 最初の空間では恭介だけではなく、彩音や影星、他のプレイヤーの気配や痕跡も見つけられなかった。

 ここが二重扉の入口であるなら、最初空間にいなかった以上は、この先に気配があるべきだと二人は考えたのだ。


「……嫌な予感しかしねぇな」

「だけど、恭介たちは強い。何かイレギュラーが起きたとしても、生き抜く術も持っているはずだ」


 渋面になる国親とは違い、竜胆は今もなお、恭介たちが生きていることを信じている。

 国親から見れば、竜胆と恭介の関係はまだまだ短いものだろう。

 それでも、竜胆から見た恭介に、彩音や影星はピンチであっても生き抜く術を持ち、諦めない心を持っている者たちだと信じているのだ。


「まあ、ここが二重扉の入口だとも限らねぇしな。他のところで生きてんだろう」

「それなら俺たちは、この先にいるだろうモンスターを狩り尽くすだけだ」

「狩り尽くすか。いいこと言うじゃねぇか」


 気持ちを引き締め直したのか、国親は先ほどの渋面からは一変した獰猛な笑みを浮かべている。


「だが……その前に一ついいか?」


 すると、国親から突然声を掛けられた。


「なんだ、どうした?」

「この先にいる野郎は強いはずだ。なら、俺たちも確認しておくべきだと思ってな」

「確認って、何をだ?」

「スキルだよ、スキル。隠しておきたいこともあるだろうが、戦力はお互いに把握しておくべきだろう」


 国親の問いを受けて、竜胆は間違っていないと納得する。

 しかし一方で、自分のスキルが発動していないことに気がついた。


(……あれ? どうしてスキル【ガチャ】が発動していないんだ? ここまでの間にも結構なモンスターを倒してきたはずだぞ?)


 直後、心臓が早鐘を打ち始めた。

 今まで感じたことのない異様な不安が、竜胆の心を鷲掴みにしている。


「……どうしたんだ? いきなり顔色が悪くなった――」

「す、ステータス!」


 国親の言葉を遮るようにして、竜胆はステータスウインドウを開くと、そのままスキル一覧へ目を向けた。すると――


「…………嘘だろ? いつから、封じられていたんだ?」


 スキル一覧に表示されている中で、他のスキル名が白色で表示されているのに対して、スキル【ガチャ】だけが赤色で表示されており、その後ろには【封印】と記されていた。


(どういうことだ? 星5の扉攻略の時は問題なくガチャも発動していた。なら、ここに入ってから封印されたってことか? 封印されたのは俺だけか? 国親も何かが封印されているのか? だけど、ヴォルテニクスを使って魔法みたいなものを使っていた。それなら、やっぱり俺だけが――)

「おい、新人!」

「はっ!」


 思考の海に深く沈もうとしていた竜胆を、国親が大声で引き上げてくれた。


「……す、すまない、国親」

「構わねぇよ。だが、どうした? 何か言い難いことがあるなら、そこだけを秘密にしてくれれば――」

「いや、共有するよ。というか、共有した方がいい」

「……ならいいが、本当に大丈夫なのか?」


 訝しみながら国親が訊ねると、竜胆は大きく頷いた。


「だが、先に国親。ステータスからスキルを見て、何か変わったことがないか見てくれないか?」

「スキルだぁ? まあ、構わねぇが……」


 スキルの封印が自分だけなのか、それとも国親もなのか、まずはそれを確認したかった。


「……あぁん? なんだ、こりゃ……はあ!? スキルの封印だと!!」

「国親もだったか」

「俺もってことは、新人もかよ!」


 驚きの声をあげた国親に対して、竜胆は言葉を続けていく。


「あぁ。最初にモンスターがあまりに多く襲ってきたから、すっかり忘れていたよ」

「だが、ちょっと待て。俺のスキルは途中まで普通に使えていたぞ?」

「ヴォルテニクスを使った魔法みたいなやつか?」


 竜胆の問い掛けに国親は首を横に振る。


「いいや、違う。あれはヴォルテニクス専用のスキルだ。俺自身のスキルは別にある」

「そうだったのか?」

「あぁ。俺のスキルは縮小、物体の大きさを小さくすることができるスキルだ。ヴォルテニクスも縮小して持ち歩いているから、突然現れたように見えただろう?」


 そう説明した国親は、ヴォルテニクスを持ち歩きやすいサイズに縮小しようと試みた。


「……ダメだ、やっぱり使えねぇ」

「そうなると、ヴォルテニクスを元の大きさに戻す前に封印されなくてよかったよ。そうじゃなかったら、武器なしで挑むことになっていたからな」


 そう口にした竜胆は、最悪の展開が脳裏をよぎってしまう。


「……待て、国親。俺たちのスキルが封印されるってことは、他のプレイヤーにも同じことが起きているってことだよな?」

「そうだろうよ。……なるほど、だから攻略できずに今に至った――」

「違う! 恭介たちも今、俺たちと同じ状況で戦闘を強いられているってことだ!」


 竜胆の焦りの声に、国親もハッとさせられてしまう。


「恭介はまだいい、あいつはスキル頼りの戦いをしていないからな。だが、恭介みたいな奴の方が少数派だ。ほとんどがスキル頼りに違いねぇ」

「急ごう! 俺も国親も、スキルが封印されたとしても戦える! 俺たちがやらなきゃダメなんだ!」

「当然だ――って、おい! 待てよ、新人!」


 焦りから駆け出した竜胆を見て、国親は慌てて追い掛けていった。

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